アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

講演「2014先住民族に関する国連特別総会と国際人権基準の浸透―ヘイトスピーチから森林認証制度まで」

2015-01-24 14:53:50 | 日記
昨日の1月23日にインカルシペ アイヌ民族文化祭 アイヌ民族シンポジウムに親子で参加して来ました。
メイン講演は上村英明さん(恵泉女子学園大学教授・市民外交センター代表)による「2014先住民族に関する国連特別総会と国際人権基準の浸透―ヘイトスピーチから森林認証制度まで」でした。
北海道新聞も取材し、今日の紙面に載りました。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/587914.html

上村さんは2014年にあった重要な事を分かりやすく3つのポイントにわけて説明。
ひとつは「世界先住民族会議」の報告、二つ目は「ヘイトスピーチ」に関すること、最後は「森林認証制度」に関すること。

ひとつめの世界先住民族会議(WCIP)は、2014年9月22~23日に行われた。
この背景は1993年に国際先住民年があり、1995年から2004年に(第1次)世界の先住民の国際10年、翌2005年~2014年に第2次世界の先住民の国際10年のプログラムが国連で行われ、最終年の2014年に今までのまとめの会議がニューヨークの国連で開催され、文章が出た。まとめると以下の通り。
①国連先住民族権利宣言(2007)を中心とする権利保障の強化と国連機関などによる実施と監視。
②先住民族の国際社会における新たな地位の検討の開始(先住民族が「準国家」としての地位を認める検討が始まった)

ふたつめのヘイトスピーチに対しては、国連人権条約機関による日本政府定期報告書の審査があり、人種差別撤廃委員会(人種差別撤廃条約:8月20~21日)より、ヘイトスピーチを行った個人および団体を捜査し、適切な場合には起訴する事、また、ヘイトスピーチをした公人および政治家に対する適切な制裁を追求することが勧告されていると紹介。
このことを、この度の金子発言(2014年8月)に当てはめると、これは単なる「言葉の暴力」ではなく、捜査や起訴の対象となる「犯罪」であり、金子が政治家であるゆえに「制裁」の対象になる。誰が対応しなければならないかと言うと、アイヌ民族ではなく、官房長官であり国家機関(中央政府・地方政府)にある、とのこと。国際的にも日本政府もアイヌを先住民族と認めているのだから、一連のヘイトスピーチは政府が対処しなければならない。
日本政府はこの勧告がこたえたようで、自民党は「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」を設置(8月28日初会合)。内容はあやしいものゆえ市民がきちんと監視しないといけないが、動き始めた事はたしか。そして国だけではなく個々の市町村が取り組まねばならない。

なお、アイヌ民族に関する人種差別撤廃委員会の勧告は以下の通り。
a アイヌ政策推進会議および他の協議機関におけるアイヌ代表者の人数を増やす事を検討すること、
b 雇用、教育そして生活水準に関して、アイヌ民族とそれ以外の者の間で依然として存在する格差を減らすために講じられて措置の実施を迅速化し、向上させること、
c 土地と資源に関するアイヌ民族の権利を保護するための適切な措置を採択し、文化と言語に対する権利の実現に向けた措置の実施を促進すること。
d 政府のプログラムや政策を調整するために、アイヌ民族の状況に関する実態調査を定期的に実施すること。
e 前回の委員会の総括所見のパラグラフ20においてすでに勧告されたように、独立国における原住民及び種族民に関するILO169号条約(1989年)を批准することを検討すること。

以上のことで分かることは、なんらアイヌ民族への施策は十分ではないということ。もっと迅速にやるべきだ、と。


今年こどもたちに配った手作りアドベントカレンダー
(市販のお菓子だけではなく、ハリーポッタの百味ビーンズの鼻くそ味やゲロ味なども入れた)


もう一つの話題は、森林認証制度(FSC)の認証基準の改定(2012年)の紹介。
この制度とは適正に管理された森林から算出した木材およびそれを利用した製品に、これを認証し、認証マークを付与する国際的な基準制度。その原則の項目に以下の、「先住民族の権利」が加わったとのこと。少し長いですが引用します。

原則3:先住民族の権利
組織は、先住民族の所有に関する法的・慣習的権利、土地の使用と管理、森林施業により影響を受ける彼らの土地および資源について特定し、尊重しなければならない。
3.2 先住民族が自身の権利、資源、土地、領土を保護するために必要な範囲内で、組織は先住民族が森林管理に優先して持つ法律上及び慣習的な権利を認識、支持しなければならない。先住民族による管理活動の第三者への委任の際には事前に十分な情報を与えられた上での自由意志に基づく合意が必要である。(3.3は略)
3.4 組織は先住民族の権利に関する国連宣言(2007)及び原住民及び種族民条約(ILO第169号条約)(1989)の規定に従い、先住民族の権利・慣習・文化を認め、尊重する。
3.5 組織は先住民族の協力の下、先住民族にとって文化的、生態的、経済的、宗教的、精神的に特別な意味を持ち、先住民族が法律上または慣習的な権利を持つが書を特定しなければならない。これらの場所は、組織とその経営層により認識され、先住民族と協議に基づき保護されることが合意されなければならない。
3.6 組織は先住民族が伝統的な知識を守り、使用する権利を支持し、伝統的な知識や知的財産を使用する際には先住民族に補償しなければならない。また、使用する際には事前の十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく合意を通じて、組織と先住民族の間で基準3.3のような拘束力のある契約を締結しなければならない。また、これは知的財産権の保護制度と調和していなければならない。

以上の新認証基準により、FSCによる市民外交センターへの聞き取り調査が行われ、
「※アイヌ民族の承認がない森林および木材製品には、FSC認証を認められない」という結論が出されたとのこと。
今まで、アイヌ民族が木材をとると違法となっていたが、今はアイヌ民族の承認なしに北海道から伐採される木材、生産される木材製品は国際基準に照らして「違法」となる! 10月30日より、日本製紙と王子製紙が北海道アイヌ協会との話し合いを始めたとのこと。
それがたとえ、企業の土地内にある木材であっても「違法」となるのだから、国有地なども対象になるのではとのこと。
改めて、国際基準の浸透を考える必要があり、このような混乱がおこるのも日本政府がきちんと対応していないからであり、日本政府は国際的にきちんと姿勢を見せなくてはならない、と。

講演後のパネルディスカッションの内容は省略させて頂きます。


今朝の浜益の黄金山 朝焼けで輝いていました。
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