アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

先住民族のアイデンティティと構成員決定の権利

2014-09-04 06:26:02 | 日記
『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告』(以下、『報告書』)をあらためて読み直しつつ、考えています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/dai10/siryou1.pdf

『報告書』は、先住民族の定義とアイヌ民族が日本の先住民族であることを以下の下りで述べています。
先住民族の定義については国際的に様々な議論があり、定義そのものも先住民族自身が定めるべきであるという議論もあるが、国としての政策展開との関係において必要な限りで定義を試みると、先住民族とは、一地域に、歴史的に国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族である、ということができよう。
「1 今に至る歴史的経緯」で見たように、アイヌの人々は、独自の文化を持ち、他からの支配・制約などを受けない自律的な集団として我が国の統治が及ぶ前から日本列島北部周辺、とりわけ北海道に居住していた。その後、我が国が近代国家を形成する過程で、アイヌの人々は、その意に関わらず支配を受け、国による土地政策や同化政策などの結果、自然とのつながりが分断されて生活の糧を得る場を狭められ貧窮していくとともに、独自の文化の伝承が困難となり、その伝統と文化に深刻な打撃を受けた。しかし、アイヌの人々は、今日においても、アイヌとしてのアイデンティティや独自の文化を失うことなく、これを復興させる意思を持ち続け、北海道を中心とする地域に居住している。これらのことから、アイヌの人々は日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であると考えることができる。 (3 今後のアイヌ政策のあり方 (1) 今後のアイヌ政策の基本的考え方 1 先住民族という認識に基づく政策展開 ア 先住民族であることの確認 b アイヌの人々が先住民族であるということ)


この『報告書』は、『先住民族の権利に関する国際連合宣言(以下『国連宣言』)』を以下のように評価します。
2007年9月13日に国際連合総会において、「先住民族の権利に関する国際連合宣言(以下「国連宣言」という)」が、我が国も賛成して採択された。同宣言は、政治・経済・文化 その他広範な分野にわたって、先住民族及びその個人の権利及び自由について規定しており、先住民族と国家あるいは国民の多数を占める民族とのパートナーシップの重要性を強調している。この宣言の採択までには、20有余年にわたる議論の積み重ねがあったが、最終的に圧倒的多数で採択された意義は大きい。また、採択後に、反対国の中でも同宣言を支持する動きが見られるようになっていることにも注目すべきであろう。なお、この宣言の採択に当たっては、アイヌの人々も様々な働きかけを行っている。 (2 アイヌの人々の現状とアイヌの人々をめぐる最近の動き (2) アイヌの人々をめぐる最近の動き1 先住民族の権利に関する国際連合宣言について )


では、『国連宣言』で、先住民族のアイデンティティと帰属意識はどう述べられているかというと、以下の通り。
第 33 条 【アイデンティティと構成員決定の権利】

1. 先住民族は、自らの慣習および伝統に従って、そのアイデンティティ(帰属 意識)もしくは構成員を決定する集団としての権利を有する。このことは、先 住民族である個人が、自らの住む国家の市民権を取得する権利を害しない。
2. 先住民族は、自身の手続きに従って、その組織の構造を決定しかつその構成 員を選出する権利を有する。【市民外交センター仮訳 改訂 2008年9月21日】


アイヌ民族は、民族組織の構造および民族集団の構成員を誰にするかを自らの方法で決める権利を持っているのです。
もちろん、民族の構成員には構成員としての義務と責任も伴うかたちで。(市民外交センターブックレット3参照)


夏休みにこどもたちと釣ったフグとウグイ キャッチ&リリース

前に書いたことと重複しますが、国連経済社会理事会は1971年、人権小委員会が先住民に対する差別の実態を調査しそれを是正する処置の提案を認めます(決議1589)。それを受けて人権小委員会はホセ・マルチネス・コーボゥを特別報告者として任命しました。コーボゥは1981年から研究をはじめ、1983年に調査結果をまとめます(以下、「コーボゥ報告書」 1986年に国連文書として発行されている)。
その第5巻379では、先住民族とは
「先住民族」が「自己の生活領域において発達した侵略前及び植民地化前の社会と歴史的連続性を有し,自己の領域又はその一部において現在優勢であるところの社会の中の他の部分と自己を異なるとみなす者」と定義されています(参照:「二風谷ダム裁判の記録」P.433 萱野茂他編集 三省堂)


また、先住民族の世界的な定義の一つとされているILO第169号条約の第1条第1項も紹介します。

第1条
1 この条約は、次のものに適用する。
 (a)独立国における種族民であって、その社会的、文化的及び経済的な条件が、

   その国民社会の他の部門と異なり、かつその地位が全部又は一部それ自身の

   慣習もしくは伝統、又は特別の法律もしくは規則によって規律されている者。
 (b)独立国における民族であって、服従もしくは植民地化又は現在の国境が画定

   されたときに、その国又は国の属する地域に居住していた住民の子孫であるために

   先住民族とみなされ、かつ、法律上の地位のいかんを問わず、自己の社会的、

   経済的、文化的及び政治的制度の一部又は全部を保持している者。

今回も引用ばかりですが、これも情報センターの役割のひとつと考えてUPさせて頂きました。
過去Blogも参照ください。
コーボゥ報告書 2007-03-01 16:15:16
http://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/0a8c9859622b996a982a5baa4a3f7a7e

ILO第169号条約 先住民族の権利 2008-01-26 16:20:21
http://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/4b349de2208c9b2f8afa84d02e9f0b6c


ひと夏でたくさんの体験をして成長したこどもたち
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