アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

カナダ・レポート『マシュー・スティヴンズに聞きました』

2015-02-19 14:24:12 | 日記
わたしたちアイヌ民族情報センターは、年に2回(6月・12月)に、機関紙『ノヤ』(アイヌ語でよもぎ)を編集発行し、道内の超教派のキリスト教会(12月号は全国1700近くの日本キリスト教団の教会含)や、支援をして下さっている個人へ送らせて頂いています。紙面上の都合もあり、諸活動の詳細は当Blogのほうが詳しいことが多いですが、カナダの先住民族や台湾原住民族の情報など、『ノヤ』にのみ掲載しているものもありますから、今後、時々、それらの紹介をさせて頂こうと思います。

今回は、最新号第47号(2014年12月発行)に、カナダに帰国中のスタッフのロバート・ウイットマーさん(カナダ合同教会宣教師)が寄せて下さったレポートを紹介します。


熱く語るマシューさん(2011年)

カナダに来て、2ヶ月が経ち、先住民族で、元ロンドン教区スタッフであり、2011年に北海道を訪ねたマシュー・スティヴンズさんに再会し、とても嬉しい時間を持ちました。彼にカナダの先住民族の現状と課題について聞きました。その話を少し編集しながらみなさんに紹介します。彼の熱い息と思いが力強く伝わってきました。

Q:先住民族の過去と現在はどう違いますか
A:私が子どもだった時に、母のように寄宿学校に行かされないように家族で先住民族の土地を離れる決意をし、トロントに移りました。その時から見たら状況がずいぶん改善しましたが、支配的文化(the dominant culture)とあまりにも差がありすぎて、生活レベルはまだまだ低く、居留地で教育を受ける一人ひとりの子どもにあてられるお金は公立学校より約30%少ないです。

Q:他にどのような差がありますか
A:居留地に住んでいる子どもの4人に一人は貧困家庭で、高等学校を卒業するよりも刑務所に入る確率の方が高いです。非先住民族の青年に比べて自殺率は5倍です。居留地に住んでいる先住民族の結核で死ぬ確率は全国平均の31倍です。カナダは世界の中で、水の資源が豊かな国でありながら、居留地の多くの水が汚染されていて、そのまま使えない状態です。まだまだありますが...。

Q:カナダ政府と先住民の議会によって設置された「真実と和解委員会」の働きについては
A:とても重要な働きで、これによって過去の間違いと現在の課題についての意識が高められていると思います。私も積極的にその働きに参加し、支援しています。しかし、一般の人がこれで差別の問題が解決されたと思ったらそれは大きな錯覚です。今のカナダ政府は次々と表にでない形で先住民族に対する支援金をカットしています。問題は山積みです。

Q:アイヌ民族の遺骨裁判のパンフレットを読んだ印象はどうですか
A:カナダに「学者の破損」に対して先住民族の権利を守る法律がありますが、盗まれた物を取り戻すのに時間とお金がかかります。大学や博物館にあることを証明するのに令状をとらなければならないこともありますし、副葬品などを取り戻す場合それを保管する設備と条件を整えた博物館か資料館を居留地に建てないと帰してもらえないことがあります。お金のない居留地にとってそれは負いきれない負担です。アイヌ民族のみなさんを応援します。

Q:未来への希望は 
A:最近「相応しい関係」(right relations)を作るための集会がありました。南西オンタリオの広範囲から100名の人々が集まり、勉強会をしました。教会、また公や民間の組織の人々の関心がとても高かったです。これからもこのような勉強会を続けましょうという声で終わりました。支配的文化のこのような意識の変化を見ることが何よりもの励まし、希望だと思います。
以上。



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