国保赤字、税金穴埋め容認 来春移管控え厚労省転換 保険料上昇を懸念
2017年10月19日 (木)配信共同通信社
一般会計による国保の赤字穴埋めは、住民から広く集めた税金を国保加入者だけのために使う形だ。厚労省は好ましくないとして「計画的に解消すべきだ」としてきたが、保険料の変化を試算すると急激な上昇を招くケースがあったことから、加入者の反発を懸念した。ただ、運営主体を広げて保険料の格差を是正し、負担と受益の関係を明確にするという制度改革の理念が失われかねず、批判も出そうだ。
高齢や低所得の加入者が多い国保は構造的な赤字が続いており、2015年度の赤字は全国で総額約2800億円。保険料で賄おうとすると加入者の負担が重くなるため、一般会計から「法定外繰り入れ」と呼ばれる手法で約6割の市区町村が赤字分を補填(ほてん)している。
保険料は現在、市区町村が決めているが、来年4月からは都道府県が管内の市区町村の医療費や所得水準などを基にそれぞれの保険料の目安を提示。市区町村はそれを参考に保険料を決める方式に変わり、一部で大幅な上昇が予想されている。
国は保険料の伸びを抑えるため来年度に計約1700億円を投じて自治体を支援するが、激変緩和のため、当面は法定外繰り入れを認めることにした。厚労省は「繰り入れを計画的に減らす姿勢に変わりはない。ただ保険料の急激な上昇は望ましくないので自治体に緩和策を講じるように要請している」としている。
一方、健康づくり活動などを通じて医療費を抑えた市区町村では、保険料が下がる場合もある。しかし、厚労省は減少幅に限度を設け、保険料が上がる自治体の財源に回すことも検討。医療費抑制に努力している自治体からは不満が出る可能性もある。
※国民健康保険
75歳未満の自営業者や非正規労働者、無職の人ら約3200万人が加入する公的医療保険で、市区町村が運営。会社員が入る協会けんぽや健康保険組合より高齢者が多く、医療費がかかる。一方で低所得者が多いため保険料収入が少なく、2015年度の赤字総額は約2800億円に上る。18年度からの都道府県への運営移管は15年成立の関連法で決まった。規模を大きくすることでリスクが分散され、財政が安定するメリットがある。都道府県が主導的な役割を果たすことで市区町村間の保険料格差をなくしていく目的もある。保険料の徴収や書類の交付など住民に身近な業務は、引き続き市区町村が担う。
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