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飯田典之さん:医道まい進、31年の生涯 中1でがん、闘病しながら夢到達

2023年09月26日 20時10分49秒 | ガン

飯田典之さん:医道まい進、31年の生涯 中1でがん、闘病しながら夢到達

 2023年9月26日 (火)配信毎日新聞社
 
 小児がんと闘う中で医師の道を志し、その夢をかなえた男性が今月、31年の生涯を閉じた。東京都文京区のがん・感染症センター都立駒込病院での研修を今春に終え、民間の診療所に勤めていた神戸市出身の飯田典之さん。再発と手術が続く過酷な運命を背負いながらも、自らの闘病経験を生かして患者に向き合った。

 ◇偲ぶ会で同期「太陽みたいな人だった」

 家族によると、飯田さんは幼少期から勉強が得意で、ラグビーやスキーなどスポーツも万能だった。体に異変が生じたのは中学1年の秋。39度台の熱が1週間ほど下がらず、大学病院の検査で腹部に2キロの巨大な腫瘍が見つかった。手術を受け、入院しながら約1年にわたる厳しい抗がん剤治療に耐えた。

 命も危ぶまれると告知された時、母美佳さん(61)は「訳が分からずショックだった」という。本人に不安が伝わらないよう努めて前を向いたが、同じ頃に妹紘子さん(29)はストレス性胃腸炎で入院。中学入学の時期が重なった紘子さんは、「一人でいろんなことをため込んでいた」と振り返る。家族もまた、必死に闘っていた。

 高校で飯田さんは兵庫県内有数の進学校に入学。体力が落ち、体育の授業や学校行事についていくのに苦労した。母親はくたくたになった息子の脚をマッサージしながら励ました。

 闘病生活の支えは、趣味のギターだった。ギタリストの押尾コータローさんの大ファンで、その技法にあこがれ、爪が擦り減るほど押尾さんの楽曲を練習した。

 2008年7月、高校1年だった飯田さんは毎日新聞社主催の小児がん征圧キャンペーン「生きる」のチャリティーコンサートを鑑賞した。押尾さんも出演しており、ステージの最後に両手の親指を突き上げて「頑張れよ」とサインを送ってくれた。

 コンサート時の取材に、飯田さんは小児科医になるという夢を明かした。家族には「(自分の)顔を見た患者さんがうれしくて、免疫力が上がるような医者になりたい」と話したという。

 鳥取大医学部に現役で合格。3年時に再び腹部に腫瘍が見つかり、小腸の一部を切除した。その後は再発と手術の連続だった。卒業後、駒込病院で医師の基礎を身に付ける初期研修(2年間)や、泌尿器科専門医になるため必要な研修(4年間)を受けた。

 飯田さんは同院で勤務しながら数回にわたり手術を受けたが、術後は1~2週間で復帰して医療現場に立ち続けた。腎泌尿器外科の古賀文隆部長は「社交的な愛されキャラで、職場のみんなに慕われた。チームの一員として有機的に機能してくれていた」と語る。

 古賀さんは、患者から「飯田先生も最近手術を受けたのに、もうあんなに元気になって」と言われたことがある。「自分の経験を医療にうまく生かしている。患者さんは安心するし、心強いですよ」。患者にも慕われながら医師として成長していった。

 治療にかかる費用面などを考慮し、飯田さんは研修後の勤め先に埼玉県内の民間クリニックを選んだ。しかし、腫瘍が肺に転移したことから、8月に駒込病院へ入院。生きることを最後まで諦めなかったが、病魔を押し返すことはできなかった。

 9月4日に自ら希望し、入院先から都内の自宅に戻った。5日夕、付き添っていた美佳さんが「あと1カ月は持つよね。頑張って」と声をかけると、飯田さんはソファに体をぐったりと預けたまま腕を伸ばし、Vサインに薬指を加えた3本指を立てた。息を引き取ったのは、ちょうど3日後の朝だった。

 25日夜、文京区内で家族主催の「偲(しの)ぶ会」が営まれ、医療関係者らが献花して遺影に手を合わせた。会場でBGMに流したのは、あこがれの押尾さんの楽曲だった。研修医時代に同期だった医師、菅澤駿一さん(33)は「大変だったと思うけれど、常に明るく、ネガティブなことは一切言わない。太陽みたいな人だった」と別れを惜しんだ。

 「生きることにこんなに苦労するなんて」。大学生の頃に飯田さんがこぼした言葉を、美佳さんは忘れない。「いつも前向きに、太く短い人生を全力で駆け抜けていった。私たちの誇りです。最後まで、よく頑張ったね」【千脇康平】

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悪性脳腫瘍の肥大抑制 金大、関係タンパク質特定 世界初、治療法の突破口に

2023年08月09日 12時53分57秒 | ガン

悪性脳腫瘍の肥大抑制 金大、関係タンパク質特定 世界初、治療法の突破口に

 2023年8月8日 (火)配信北國新聞
 
 ●難治の膠芽腫(こうがしゅ)、動物実験で効果確認

 脳(のう)の悪性腫瘍(しゅよう)の一種「膠芽腫(こうがしゅ)」について、金大研究チームが腫瘍の肥大に関わる脳内のタンパク質を世界で初めて特定した。このタンパク質の働きを抑制する細胞を移植した動物実験では、腫瘍の肥大が緩和される効果を確認。膠芽腫は2年以内に半数の患者が死亡し、従来の外科手術や抗がん剤などによる完治が難しいとされており、研究成果が新たな治療法の確立につながると期待される。

 金大ナノ生命科学研究所のリチャード・ウォング教授(香港出身)、金大附属病院脳神経外科の中田光俊教授ら同大単独の研究チームが解明した。成果は米国の科学誌「セル・リポーツ」に掲載される。

 腫瘍の肥大に関わっていることが分かったのは、細胞核を覆う膜の「核膜孔」を構成する「NUP107」と呼ばれるタンパク質。チームは、膠芽腫になると、このタンパク質が大量発生することを突き止めた。

 ウォング教授によると、NUP107が増加すると「MDM2」と呼ばれる別のタンパク質も過剰に生成され、結果的に、がんを抑制するタンパク質「P53」の機能を低下させていることが分かった。

 研究チームはこの仕組みに着目し、動物実験でNUP107の発生を意図的に抑えた膠芽腫細胞をマウスに移植した。すると、腫瘍の大きくなる動きを阻害することが確認されたという。

 長年、膠芽腫の治療法を研究している中田教授は「今回のような基礎研究が新しい治療法開発の起点になる」とし、ウォング教授は「核膜孔を構成するタンパク質の数は多い。他のがんとの関連も含めてさらに研究を進めたい」と話した。

 京都大の荒川芳輝教授(脳神経外科学)は、今回の金大チームの研究成果を「根治が難しい膠芽腫の治療法開発において突破口になり得る」と高く評価。「この発見がきっかけとなり、世界の膠芽腫研究に新たな方向性が得られる」と期待を寄せた。

 ★膠芽腫(こうがしゅ) 脳腫瘍の一つで大脳にできやすいとされる。全国では年間2千数百人の患者が新たに発症しており、金大附属病院でも毎年20人程度が新たに入院している。外科手術や化学療法、放射線療法で治療するが、再発するケースが多く、5年生存率は15%とされる。

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当社団理事長の吉野孝之が日本のがんゲノム医療

2023年07月17日 11時53分25秒 | ガン

当社団理事長の吉野孝之が日本のがんゲノム医療の新たな研究成果を世界に発信。 がんゲノム医療中核拠点病院の現状分析に基づくエキスパートパネルの課題解決への提言。

一般社団法人22世紀先端医療情報機構 理事長​
国立がん研究センター東病院 副院長・医薬品開発推進部門長・消化管内科医長
​吉野 孝之

当社団理事長の吉野孝之(国立がん研究センター東病院 副院長)は、全国のがんゲノム医療中核拠点病院のエキスパートパネル代表からなる研究チームを組織し、50例の模擬症例とその模範解答を作成して、全国のがんゲノム医療中核拠点病院のがんゲノムプロファイリング検査結果を検討するエキスパートパネルと比較した結果を発表いたしました。

この結果は、世界に先駆けて、今後多くの患者さんにより適切な治療が届けられることに通じ、米国科学誌「JAMA Network Open」2022年12月5日付でも掲載され、大きな期待を寄せられています。

詳しくは、こちらをご覧ください(クリックすると外部サイトにリンクします)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0308/index.html

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外見ケアで心に元気を 富大病院がん患者支援へ専門チーム

2023年02月14日 22時17分50秒 | ガン

外見ケアで心に元気を 富大病院がん患者支援へ専門チーム

 2023年2月14日 (火)配信中日新聞
 

 ■脱毛、肌の変色...セミナーで経験者助言

 富山大病院(富山市)は、がん治療で外見が変化した患者の苦痛を和らげるため、専門の医師や看護師ら多職種でつくる「アピアランス(外見)ケアチーム」を今月発足させた。メイクやウィッグなどの助けを借りることで、見た目がどれだけ変わるかを知ってもらおうと、アピアランスケアをテーマにした初のセミナーを十二日、同市舟橋北町の県教育文化会館で開いた。 (平井剛)

 日本では二人に一人ががんにかかるとされ、医療技術の進歩などで治療を受けながら働く人は珍しくなくなった。ただ、治療に伴う脱毛や肌の変色、爪の変形などの外見の変化は、患者に大きな苦痛をもたらし、社会復帰の妨げにもなる。そこで近年は、こうした変化に対するケアの重要性が高まっている。

 セミナーでは、乳がんを克服し、がん患者向けにメイク指導を行っている美容ジャーナリストの山崎多賀子さんが講演した。抗がん剤治療で脱毛を経験した山崎さんは、外見の変化が周りの人に与える影響は大きいと指摘し、「がんを隠さなければならないのと同時に、脱毛も隠さなければならないのは大きな負担だった」と振り返った。

 心細い自分を守ってくれたのはウィッグ、帽子、メイク。「がんになってもきれいでいよう、とは言わないが、外見を装う手段を知っておくことは損でない。(外出などの)必要な時は化粧でどんどん変わっていい」と述べた。

 元気に見えるためのアドバイスとして、「肌は夜よりも朝に保湿をする」「唇が荒れていると疲れて見えるので、リップやグロスを塗る」「たまには好きな色のネイルを塗る。指先に目がいくたびに気持ちが上向きになる」と述べた。

 講演後、松井恒志チーム長らアピアランスケアチームの医師や看護師らが参加者からの質問に答えた。松井チーム長は、院内のがん相談支援センターが窓口となって相談に応じることを説明し、「(外見の変化に不安を抱く)男性患者も気軽に声を掛けてほしい」と呼びかけた。

 セミナーには会場とオンラインの併用で約百二十人が参加した。

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がん検診でポイント300円分 みずほ銀、島根・川本町と連携へ

2023年02月10日 15時25分09秒 | ガン

がん検診でポイント300円分 みずほ銀、島根・川本町と連携へ

 2023年2月2日 (木)配信読売新聞
 

 みずほ銀行は、がん検診の受診率向上に取り組む自治体の支援に乗り出す。自社のスマートフォン決済「Jコインペイ」を活用したポイント付与や決済データの分析を想定しており、第1弾として島根県川本町、山陰合同銀行と近く協定書を交わす。4月以降の開始を目指す。

 「Jコインペイ」を使う町民ががん検診を受けると、町内の小売店など約60か所で使える300円分のポイントをもらえるようにし、受診を促す。町は関連予算として約70万円を手当てする方針。みずほはポイントを使った購買データを分析し、健康管理や地域振興にもつなげたい考えだ。

 川本町は、がんの種類によって受診率が15%に低迷している。約3000人の町民の多くを占めるシニア世代に、アプリ利用を呼びかける。みずほ銀は47都道府県に営業拠点があり、デジタル技術を生かして地域振興を後押しする。

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「最期に泣きながらだが言えた」緩和ケアに尽くした福岡の医師が残した日記

2023年01月20日 10時36分02秒 | ガン

「最期に泣きながらだが言えた」緩和ケアに尽くした福岡の医師が残した日記

2023年1月18日 (水)配信西日本新聞
 

 福岡県筑豊地区で緩和ケアの普及に尽くし、末期がん患者や家族に寄り添ってきた医師が昨年10月、52歳で亡くなった。済生会飯塚嘉穂病院(同県飯塚市)の荒木貢士(こうし)さん。前立腺がんだった。1500人もの患者をみとり、貫いた信念は「最期は感謝の言葉を贈ること」。「頑張って」と励まそうとする患者の家族に「本人は苦しい。十分頑張ってきた」と説いた荒木さん。「人は死んでも、心の中で生き続ける」とも語っていた。自身も、妻や子から「ありがとう」と声をかけられながら旅立った。

 荒木さんは福岡市出身。神戸大を卒業後、外科医として九州大病院などで勤務。2011年7月に飯塚嘉穂病院に着任した。筑豊地区で初の緩和ケア病棟が開設されたばかりだった。

 荒木さんの姉で同病院看護部長の頼子さん(57)から「筑豊でも緩和ケアを広めたい。いい医師はいないか」と相談を受け「それならば自分が行く」と引き受けた。「弟は『手術をしても治らない患者を最期まで診てくれる医師が少ない』と、緩和ケアの道に進む決意をし、大阪や福岡の病院で学んだ」と頼子さん。

 看護課長の尾崎昌子さん(57)も「ケアに詳しいスタッフが少ない中、私たちを導く光のような存在だった」と振り返る。

 同県直方市の野口千代香さん(72)は訃報に接し、夫俊一さんをみとった6年前を思い出した。長女(47)が荒木さんに呼び出され「伝えたいことを言ってあげてください。言葉にしないと伝わらないこともあります」と告げられた。

 「大好き」「ありがとう」。励ましたい気持ちをこらえ、ありったけの感謝を家族で伝えた。俊一さんも「ありがとう...」と口にして逝った。千代香さんは「夫が良い最期を迎えられたことが、その後を生きる家族の救いになっている」と話す。

◆亡くなる1週間前までの日記

 荒木貢士さんは亡くなる1週間前まで、痛みと闘いながらスマートフォンに日記をつづった。妻あゆみさん(50)と貢大(こうた)さん(22)、崇大(そうた)さん(20)、瑛大(えいた)さん(16)、七美さん(13)の4人の子。両親と姉。家族と過ごす時間が「一番の幸せ」と書き残した。

■2021年12月3日

 前立腺がん、リンパ節と骨に転移と診断された。緩和ケアの仕事を始めた時から自分の死は覚悟していた。車の中で妻に病状を伝えた。「ゴメン」と告げると、「謝らないで」と泣かれた。

■22年1月6日

 車の中で泣いた。患者から「なぜこんな病気になったのか。何も悪いことはしていないのに」と言われた気持ちが痛いほど分かる。

■3月8日

 次男が九大医学部に合格した。涙が出るほどうれしかった。医師になった姿は見届けることができないだろうが、優しい子なのできっと皆に好かれる医師になるだろう。

■5月8日

 子どもたちに病気のことを伝えた。次男に「余命」を聞かれたが、ごまかした。

■7月28日

 脚の感覚も段々鈍くなり、まひは確実に進んでいる。正直、早く終わりが来てほしい。

■8月9日

 最期に苦しまないように、家族にも苦しむ姿を見せたくないため、(薬による)鎮静を始めたい。家族にきちんとお別れをしたい。妻は「(ミュージカル俳優を目指す)三男の発表会までは頑張って」と言う。しかし呼吸困難の恐怖には耐えられない。

■10日

 両親ときょうだいにもお別れと感謝の言葉を伝えた。とてもつらかったが、どうしても最期に自分の口で言いたかった。泣きながらだが、頑張って言えた。

■13日

 家族で過ごす時間が一番の幸せ。そんな本当に単純なことが、全ての本質だとあらためて勉強させられる。

■25日

 (発表会で)三男も泣きながら歌っていた。もう涙が止まらない。カーテンコールで三男が一輪のバラを私の席まで持ってきて「ありがとう」と言ってくれた時は、周りを気にする余裕もなく号泣した。天国からでも応援しよう。この日まで生きていないかもしれないと思っていたが、妻に感謝している。

■27日

 よく眠れた。今は全てのことに安心感があり、精神的にも落ち着いている。あとは皆の負担にならない期間に、安楽に最期を迎えたい。

■9月15日

 お父さんは不自由なく育ててくれた。お母さんもいつも味方でいてくれた。恩返しができなかったことが残念だ―。

 春には、音楽好きの七美さんとライブに出かけた荒木さん。貢大さんの誕生日翌日の9月26日から鎮静に入り、10月1日、福岡市の自宅で亡くなった。同僚の医師は死亡診断書に書き添えた。「穏やかな誰にでもやさしいすてきな医師でした」

 (長松院ゆりか)

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新規の循環型iNKT細胞を発見、抗腫瘍・抗ウイルス免疫に重要

2022年10月30日 22時00分26秒 | ガン
新規の循環型iNKT細胞を発見、抗腫瘍・抗ウイルス免疫に重要
京大、研究成果は、「Science Immunology」にオンライン掲載
QLifePro 医療ニュース2022年10月28日 (金)配信 癌

IL-15産生細胞、iNKT細胞の不均一性や機能をどのように制御?
 京都大学は10月24日、抗腫瘍免疫と抗ウイルス免疫において重要な役割を担う新規の循環型インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞を発見したと発表した。この研究は、同大医生物学研究所の崔广為助教と生田宏一同教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Immunology」にオンライン掲載されている。
 iNKT細胞は、免疫応答の初期に糖脂質抗原を認識し、サイトカインや細胞傷害分子を迅速かつ大量に産生することで、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割を果たしている。iNKT細胞は組織常在性リンパ球として知られ、がんや感染症、慢性炎症、自己免疫疾患といったさまざまな疾患に関係している。そのため、iNKT細胞は免疫細胞治療における有用な細胞の一つとして注目されている。
 一方、インターロイキン15(IL-15)は、iNKT細胞の分化、維持、および応答に重要なサイトカインだ。研究グループはこれまでに、さまざまな組織におけるIL-15産生細胞を同定したが、各IL-15産生細胞がどのようにiNKT細胞の不均一性や機能を制御しているかは不明だった。
胸腺上皮細胞産生IL-15、前駆細胞から循環型iNKT細胞への分化に必須
 今回の研究ではまず、NK細胞受容体CD244(2B4)とケモカイン受容体CXCR6を用い、マウス胸腺内iNKT細胞が新たにCD244+CXCR6+iNKT細胞(循環型iNKT細胞、C2 iNKT細胞)、CD244−CXCR6+iNKT細胞(組織常在型iNKT細胞、C1 iNKT細胞)およびCD244−CXCR6−iNKT 細胞(前駆細胞、C0 iNKT細胞)に分画できることを発見。胸腺上皮細胞特異的なIL-15欠損マウスにおいて循環型iNKT細胞がほぼ消失していたことから、胸腺上皮細胞が産生するIL-15が前駆細胞から循環型iNKT細胞への分化に必須であることが明らかになった。
循環型iNKT細胞はサイトカインや細胞傷害分子を強く発現、NK細胞に近い特徴
 網羅的遺伝子発現解析などにより、これまで知られていた組織常在型iNKT細胞はT細胞に近い性質を持っていたのに対し、循環型iNKT細胞はインターフェロンγなどのサイトカインやグランザイムなどの細胞傷害分子を強く発現し、NK細胞に近い特徴を示した。また、胸腺において、循環型iNKT細胞が加齢や腸内細菌の影響により変動することや、免疫寛容に関係する転写因子AIREの発現調節に関わっていることがわかった。
血流で全身移動し腫瘍とウイルス感染を制御の循環型iNKT細胞、ヒトでも存在を確認
 末梢組織において、並体結合(パラビオーシス、parabiosis)実験により、循環型iNKT細胞は従来知られていた組織常在性のiNKT細胞と異なり、血流によって全身を移動する新たなiNKT細胞であることを見出した。機能面では、メラノーマ細胞の肺転移やインフルエンザウイルスの気道感染などの実験により、循環型iNKT細胞が抗腫瘍免疫と抗ウイルス感染免疫において重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、ヒト末梢血中においてもマウスと同様な細胞傷害活性の高いCD244+CXCR6+iNKT細胞が存在することを発見。今後は、ヒトにおける循環型iNKT細胞の詳細な機能解析が期待される。
 以上の結果から、胸腺のIL-15に強く依存する新規の循環型iNKT細胞の存在を発見し、抗腫瘍免疫と抗ウイルス免疫に重要であることを明らかにしたとしている。
がんや感染症、iNKT細胞標的の免疫細胞療法確立に期待
 今回の研究では、新規の循環型iNKT細胞の分化経路、細胞動態、免疫機能などを明らかにしたことで、iNKT細胞の不均一性に新しい視点をもたらした。循環型と組織常在型の2種類の集団が協働することで、iNKT細胞がより効率的な免疫応答を引き起こす可能性があり、今後、より詳細な機能解析が進むことが期待される。さらに、がんや感染症治療において、iNKT細胞を標的とする効果が高い免疫細胞療法の確立につながることが期待される、と研究グループは述べている。

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米、がん克服「国家目標」 超党派で打ち勝つと大統領

2022年09月13日 21時41分36秒 | ガン

米、がん克服「国家目標」 超党派で打ち勝つと大統領

その他 2022年9月13日 (火)配信共同通信社
 

 【ワシントン共同】バイデン米大統領は12日、東部ボストンで演説し、がん克服を「国家的目標」と位置付けた。「がんに関しては民主党も共和党もない。一緒に打ち勝つことができる」と述べ、国民の融和を訴えた。政権は2月、がんによる死亡率を今後25年で半減させる目標を掲げた。

 バイデン氏はオバマ政権で副大統領だった2015年に長男を脳のがんで亡くしている。米国は16年に大規模な研究事業を始め、がん克服へ日本や韓国とも連携している。

 バイデン氏は「がんを死に至る病から共生できる疾患に変える」と強調。研究加速へ設置した医療高等研究計画局(ARPA―H)の初代局長にルネ・ウェガージン氏を充てる考えを示した。国防総省で生物学の研究を率いた経験を評価した。

 体への負担が軽い採血でできる効果的な検診方法を開発するため、国立がん研究所が大規模な臨床試験を始めたことも紹介した。中高年2万4千人の参加でスタートし、22万5千人規模に発展させる考えだ。

 若い研究者の育成に向け、最大5年間の研究費支給を来年から始める。これまでは論文誌に料金を払わないと見られないこともあった公費での研究成果を、無料で誰でも閲覧できるようにする方針も強調した。年20万本以上の論文が一般公開となる見通し。

 ボストンにあるケネディ大統領図書館で演説したバイデン氏は、60年前の同じ日に「私たちは月へ行く」と宣言したケネディ氏が「国民が団結できる国家的目的を示した」と指摘。月面着陸を実現させたのと同様に、がん克服も国民が一丸となれば可能だと訴えた。

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アニサキスでがん治療? 表面に機能性の膜、阪大

2022年09月06日 23時07分47秒 | ガン

アニサキスでがん治療? 表面に機能性の膜、阪大

 2022年9月6日 (火)配信共同通信社
 

 サバなどに寄生し、激しい食中毒を引き起こす線虫「アニサキス」を、がん細胞を殺す機能を持たせたゲル状の薄膜で覆うことに大阪大の境慎司(さかい・しんじ)教授(化学工学)らのチームが5日までに成功した。アニサキスにはがんに引き寄せられて動く性質があるといい、境教授は「将来、がんの治療に応用できるかもしれない」と期待を寄せる。

 チームによると、アニサキスは体長数センチ。西洋わさび由来の酵素をアニサキスに塗りつけた後、特殊な水溶液に浸して化学反応を起こすことで厚さ約0・01ミリの薄膜で表面を覆った。薄膜は柔らかく、アニサキスの動きを邪魔しないという。

 水溶液に混ぜる化合物の種類を変えることで薄膜に狙った機能を持たせられる。がん細胞にダメージを与える過酸化水素を体内で発生させるように調整したアニサキスを、がん細胞を含む培養液に入れると、がん細胞が24時間で死滅した。

 不要になったアニサキスをどうやって体内から除去するかが今後の課題の一つという。

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世界初、正常な破骨細胞と全く異なる「悪玉破骨細胞」を発見

2022年08月15日 01時06分53秒 | ガン

世界初、正常な破骨細胞と全く異なる「悪玉破骨細胞」を発見

阪大、正常な破骨細胞と、病的な破骨細胞の発生過程について研究

QLifePro 医療ニュース2019年11月21日 (木)配信 整形外科疾患
 

 

 大阪大学は11月19日、破骨細胞に、正常な破骨細胞とは性質も起源も異なる「悪玉破骨細胞」が存在することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の長谷川哲雄特任研究員、石井優教授(免疫細胞生物学)らの研究グループによるもの。英国科学誌「Nature Immunology」に掲載されている。

 破骨細胞は、生理的な状態では骨の内側のみに存在し、骨芽細胞と協調して骨構造を緻密に維持している。一方、関節リウマチなどの病的な状態では関節組織に発生し、骨を外側から壊すことで関節構造を破壊する。

 これまで、破骨細胞とその前駆細胞の研究は、骨髄や脾臓や血液の細胞を用いて数多く行われてきたが、実際に病的な骨破壊が起こる関節組織を用いた解析は、病変部位が非常に小さいため、詳細に行われていなかった。そのため、正常な破骨細胞の発生過程と、病的な破骨細胞の発生過程が同じなのかについては、明らかにされていなかった。

 研究グループは今回、関節炎において病的な骨破壊が起こる部位の組織(関節組織と骨の境界領域)を単離する独自のプロトコールを開発。これにより、関節炎を発症した関節組織には、正常な骨の中には存在しない病的な「破骨前駆細胞」が存在することが明らかになり、「arthritis-associated osteoclastogenic macrophage(AtoM)」と命名した。

 AtoMは、関節に常在している細胞からではなく、骨髄由来の細胞が血流を介して関節に流入した後にMCSFに反応して発生し、うち約10%の細胞が、関節局所で病的な破骨細胞へと分化していくことが、シングルセル解析により判明。また、正常な破骨細胞へ分化するために必要なRANKL(ランクル)に加え、炎症性サイトカインであるTNFを同時に投与すると、関節に流入した骨髄由来の細胞がAtoMへ分化する能力がさらに高まることも明らかになった。さらに、網羅的な遺伝子発現を調べることで、AtoMがFoxM1と呼ばれる転写因子により部分的に制御されていることが示され、FoxM1の阻害薬がマウスにおいても、関節リウマチ患者の関節液から採取した細胞においても、破骨細胞への分化を阻害することが明らかとなった。

 今回の研究成果により、関節リウマチ患者の病的な悪玉破骨細胞を標的とした新たな治療薬開発が期待される。

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坂本龍一さん、ステージ4 「新潮」で連載、がん語る

2022年06月15日 20時57分45秒 | ガン

坂本龍一さん、ステージ4 「新潮」で連載、がん語る

 2022年6月7日 (火)配信共同通信社
 

 がん治療を公表していた音楽家の坂本龍一(さかもと・りゅういち)さん(70)が、7日発売の文芸誌「新潮」7月号で、自身が「ステージ4」であり、両肺に転移したがん摘出手術を昨年10、12月に受けたことなどを明かした。新連載「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」で、近年の活動や闘病生活を振り返った。

 第1回の題名は「ガンと生きる」。ステージ4は、がんが最も進行した段階を指す。坂本さんは2014年に中咽頭がん、昨年1月に直腸がんの治療を公表。新潮社によると、連載では編集者の鈴木正文(すずき・まさふみ)さんを聞き手として、主に09年以降の音楽活動や死生観を数回にわたって語るという。

 坂本さんは「せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています」などとコメントしている

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山陰にAYA世代患者会 出雲・桑原さん設立 30日交流会 がん闘病 一人じゃない

2022年05月05日 23時00分47秒 | ガン

山陰にAYA世代患者会 出雲・桑原さん設立 30日交流会 がん闘病 一人じゃない

 2022年4月26日 (火)配信山陰中央新報
 

 山陰両県の「AYA世代」(15~39歳)のがん患者同士が交流する患者会が4月、新たにできた。治療が進学や就職、結婚など人生の節目と重なるAYA世代は悩みが特有で、孤立しがち。交流会などを通してネットワークを広げ、互いに支え合う。

 立ち上げたのは、島根県出雲市の会社員、桑原慎太郎さん(27)。2017年11月に脳腫瘍と診断され、手術や化学療法などのために約5カ月入院した。入院中、周囲は年の離れた患者ばかりで孤独を感じ、将来への不安も募った。

 だが、山陰両県には同世代で共有できる場がなく、桑原さんは19年に島根大医学部付属病院(出雲市塩冶町)のがん患者・家族サポートセンターとの共催で交流会を始めた。

 新型コロナウイルスの感染が広がってからはオンラインで開き、これまでに10~15人が参加。少しずつ輪が広がるのを実感する一方で「これまでは支援を受けている感じがあった。当事者だけでやってみたい」と思い立ったという。

 団体名は「AYAむすび 山陰若年性がん患者会」。桑原さんが代表を務め、肺がん治療中の島根県内の30代女性と活動する。対象は、39歳ぐらいまでにがんになった山陰両県在住の人。今月のオンライン交流会を皮切りに、コロナの感染状況を見て対面での交流会や勉強会を検討する。

 県によると、過去5年の期間内にがんと診断され、17年12月時点で生存しているAYA世代の患者は763人。まずは患者会の存在を知ってもらうため、交流サイト(SNS)で発信する。

 オンライン交流会は30日午後8時から、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で開く。参加応募は29日締め切り。桑原さんは「自分たちは一人じゃない。こういう会があることだけでも知って、心が楽になってもらえるとうれしい」と呼びかける。

 問い合わせは患者会、メールayamusubi8@gmail.com

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男性トイレにも汚物入れ がん患者必要、設置広がる

2022年05月03日 22時15分00秒 | ガン

男性トイレにも汚物入れ がん患者必要、設置広がる

2022年5月2日 (月)配信共同通信社
 

 男性トイレの個室にサニタリーボックス(汚物入れ)を設置する動きが一部自治体や商業施設に広がっている。尿漏れパッドの捨て場に困る前立腺がんやぼうこうがんの患者らの悩みに応える形だ。国立がん研究センターの統計によると、2018年に前立腺がん患者、ぼうこうがんと診断された男性はそれぞれ9万2千人と1万7千人以上。当事者からは、歓迎の声が上がる。

 広がったのは昨年6月、日本骨髄バンク評議員大谷貴子(おおたに・たかこ)さん(60)=埼玉県加須市=が、捨て場所に困っている人がいると聞き、対策を呼びかけたのがきっかけ。大谷さんは「周りにも『実は自分も』という男性が意外にいた」と話す。

 さいたま市議会で、大谷さんの訴えを知った市議が問題を指摘。市が調査したところ、市の施設333施設のうち男性トイレに汚物入れを置いていたのは8施設だった。これらの施設は、使用済みパッドの放置やトイレの詰まりがあったことなどを、設置の理由として挙げた。その後、さいたま市は区役所の男性トイレに汚物入れを設置。今後、体育館や文化施設にも順次拡大する方針だ。

 動きは他の自治体にも広がり、埼玉県加須市、愛知県日進市、三重県伊勢市も3月から4月にかけて市庁舎での対応を完了した。前立腺がんを経験し、日常生活にパッドが欠かせない加須市の男性(63)は「ありがたい。他の施設にも増えてくれれば助かる」と喜ぶ。

 さらに、自治体の動きを受け、取り入れる民間企業も。自動車販売店「トヨタモビリティ東京」では、ショールームで接客を担当する女性スタッフが発案。一部区域の14店舗で順次設置中だ。無料のパッドを置いた店舗では、利用する人もいたという。女性スタッフは「これまで知らずにお客さまに不便をかけていたかもしれない。社会的に広がっていけばいいと思う」と話している。

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鳥取大病院が「光免疫療法」 山陰両県で初、上顎がん患者に最新治療

2022年04月22日 21時43分38秒 | ガン

鳥取大病院が「光免疫療法」 山陰両県で初、上顎がん患者に最新治療

 2022年4月21日 (木)配信山陰中央新報
 

 口や首、鼻、のどに発症する頭頸部(とうけいぶ)がんの治療について、鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市西町)が19日、光に反応する薬剤を投与して結合させたがん細胞に、レーザー光線を照射して死滅させる「光免疫療法(アルミノックス治療)」と呼ばれる最新の治療法を適用し、山陰両県で初めて実施したと発表した。

 治療は頭頸部がんの約90%を占める扁平上皮がん細胞を標的に、光に反応する色素を入れた抗体薬を点滴静注し、投与から20~28時間後に悪性腫瘍にレーザー光を照射。薬の化学反応を誘発させて細胞膜を破壊する。

 抗体薬はがん細胞の表面に多く現れる特定のタンパク質に結合するため、光の当たらない細胞への影響がない。再発などで手術が難しく、放射線治療や薬物療法で効果が得られない患者の新たな選択肢になるという。2021年から日本頭頸部外科学会が認める医療機関で実施可能となった。

 鳥取大病院は年間150例の頭頸部がん治療実績があり、山陰両県で唯一、光免疫療法で保険適用の認定施設。上顎(じょうがく)がんが再発した50代の男性患者に対して2~4月に2回実施し、腫瘍の縮小が確認された。効果を見極め、4週間以上空けて最大4回まで治療が可能で、3回目の実施を検討している。

 会見した頭頸部外科・耳鼻咽喉科の藤原和典教授は「頭頸部がんは、話す、食べるという日常生活機能に影響をもたらす。症例を重ね、普及に努めたい」と話した。

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がん検診の受診控え続く、コロナ禍前より1割減…見逃し600件の可能性

2022年04月05日 21時36分33秒 | ガン

がん検診の受診控え続く、コロナ禍前より1割減…見逃し600件の可能性

2022年4月5日 (火)配信読売新聞
 

 日本対がん協会は4日、2021年にがん検診を受けた人は、前年より2割増えたものの、新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前の19年と比べると1割減の低水準にとどまったとする調査結果を発表した。コロナ禍による受診控えの影響とみている。

 調査は今年2~3月、全国の42支部を対象に実施し、33支部から回答を得た。自治体が実施する胃、肺、大腸、乳房、子宮頸部のがん検診を受けた人数などを尋ねた。昨年の受診者の合計は、延べ約538万人。20年の同435万人から23・5%増えた。一方、19年の同599万人と比較すると10・3%減と、コロナ禍前の水準に戻っていない。

 19年と比較した受診者の減少数と、がんの発見率から推定すると、約600件のがんが、検診を受けなかったことで見つけられなかった可能性があるという。

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