フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

1月23日(日) 曇り

2022-01-24 19:22:17 | Weblog

9時、起床。

朝食はとらず、ホットミルクを飲みながら、昨日のブログを書く。

チャイ、書斎でボルダリングはやめなさい。

ブログを書き上げてから、朝食兼昼食を食べに出る。1時から句会(オンライン)があるので、それまでに戻ってこなくてはならない。池上へ。

シラサギが飛んでいる。優雅である。

二羽いる。つがいだろうか。

ビルの上に数羽いる。家族だろうか。

いや、たくさんいる! シラサギの一族。

一瞬、ヒッチコックの『鳥』が頭に浮かんでヒヤリとしたが、おそらくこれからカラスの一族と一戦交えるのだろう。縄張り争いに決着をつけるために。

「今日こそ白黒をはっきりさせようではないか!」とリーダーらしきシラサギが叫んだ。「アホか。そんなん一目瞭然やわ。戦うまでもあらへん」とそばにいた女房らしきシラサギが茶々を入れた。彼女は関西から関東の地に嫁いで来たのだった。リーダーは女房に頭が上がらない。かくして血で血を洗う争いは回避された。(『姫路城の13羽』より)

本門寺の階段は上らず、門前の道を左に曲がる。

「花くるま」に到着。家を出てから30分。ちなみに池上線を使っても家を出てから30分かかる。同じなら歩いた方が健康によいだろう。

店内には先客が一組(夫婦と子ども)、テイクアウトの客が一組。カウンターの席に座る。

鱈子と昆布(葉唐辛子)のおにぎりとお稲荷さん、そしてすいとん。

先客の家族は父親と女の子が塩むすびを注文していた。渋いな。私はまだ塩むすびは注文したことがない。子どもの頃、塩むすびと味噌むすびは家でよく食べていた。海苔は贅沢品だったのだ。運動会とか遠足のときのおにぎりのためのものであった。

このお店は親子(高齢の母親と中年の娘)でやっていて、二人はときどき小さな声で口喧嘩をしている。そういう意味でも「家庭的な」店である。

養源寺の菜の花はもう咲いている。

これから梅が徐々に咲いてきて(梅は個体差が大きい)、3月下旬に呑川沿いの桜が咲き始める。

1時から句会が始まる。今回で47回目である。隔月開催なので、かれこれ8年も続いていることになる。本日のオンライン参加者は画面左上から、渺さん、私(たかじ)、月白さん、さやかさん、あやこさん、恵美子さん、直美さん、犬茶房さんの8名。ほかに投句と期日前選句は明子さん、投句のみが蚕豆さんと真由子さん。

本日の作品は30句。

前半の15句。

(その読み)

後半の15句。

(その読み)

主宰の直美さんがひとつひとつ読み上げ、季語の確認などをする。その間に、各自、5句を選ぶ。天(5点)を1句、地(3点)を2句、人(1点)を2句である。

私は以下の5句を選んだ。

天 息白く雲梯の子の揺るるかな

 場所は小学校の校庭か。雲梯(うんてい)は全身を振り子のように使って、ターザンのように空中をスイスイと渡る遊具である。タイミングをうまくつかめないと同じ場所でゆらゆらと留まってしまう。頑張れ。見ているのはその子の親だろうか、通りすがりの人物だろうか。30句の中では地味な印象の句だが、動きがあり、色があり、冷えた空気と鉄棒の感触も伝わってくる、しっかり推敲された佳い句だと思う。

地 オリオンを貫く鉄骨の無情

 冬の星座といえばオリオン座である。作者のいる場所からはビルの鉄骨が英雄オリオンの胴体を貫いているように見える。まるで処刑されたかのように。途中から五七五のリズムが崩れるが、それがかえって無情な感じを漂わせている。30句の中では鉄骨のように突出した印象の句で、たぶん今回はこれが多くの票を集めるだろうと予想して、あえて地味な佳作を天にして、こちらを地にした。

地 エレベーター一心に春超えて来る

 春を迎えるわくわく感が伝わってくる・・・といいたいのだが、文法的に不明なところがある。「超えて」の主語は何なのかということである。「エレベーター」だとすると、エレベーター(に乗って)春を超えてやってきてしまったら、ドアが開くと、そこは夏なのではなかろうか。他方、「春」を目的語ではなく主語だと考えれば、春は「何を」超えてやってくるのだろうか。「エレベーター」を追い抜かして春が上がってくるということだろうか。このとき「エレベーター」は何のメタファーなのでろう。四季という名の円環構造の中を動く「ゆるやかな季節の移ろい」のことだろうか。考え出すとわからなくなるのだが、不思議な魅力に一票。

人 雪催い警備員立つ真一文字

 季語「雪催い」(ゆきもよい)は雪模様の空のこと。まだ雪は降っていないが、これから降りそうである。そういう空の下、警備員が身じろぎもせず立っている風景。真一文字は横の線をイメージするので、直立不動の縦の線のイメージとはズレているが、口を真一文字に結んでいるととれなくもない。美しい季語に一票。

人 旅にあれど我がペルソナは着膨れて

 ペルソナはラテン語で仮面のことで、人格(パーソン)の語源である、というのは社会学の教科書に必ず書いてある。人間とは社会という舞台の上で仮面を付けて、他者(彼らも仮面を付けている)と芝居をしているのである。これ、役割理論の基本である。それは一人旅の途上でも同じことで、決して素顔の自分(はたしてそんなものがあるのか)になることはない。季語は「着膨れ」。シューベルトの悲壮でロマンチックな「冬の旅」が流れている。

全員が選句を終え、集計の結果が出た。今回の特選句はさやかさんの作品だった。

14点 つぶつぶ入りのポタージュ色の古マフラー さやか

あやこさんが天を付けた。他に月白さん、恵美子さん、直美さんが地を付けた。「つぶつぶ入りのポタージュ色」という表現が選者たちにはツボだったようである(ちなみに今回の兼題は「パ行の音を入れること」であった)。この「つぶつぶ」は何のことなのかというと、毛玉ではないか(恵美子)、かのこ編みではないか(直美)と語られるのを男性陣(渺さんと私)はポカンとして聴いていた。

初特選、おめでとうございます、さやかさん。

以下、入選作をみていく。

11点 オリオンを貫く鉄骨の無情 真由子

恵美子さんが天を付けた。予想した通り、最多の5人が選んだが、人が多かったので特選にはならなかった。私の感想はすでに述べたが、もし私が天を付けていても、+2点なのでやはり特選には及ばない。

10点 珈琲とパンを焼く香の四日かな たかじ

私の句。軽い新年の挨拶句のつもりだったが(お正月あるある)、4人の方に選んでいただいたのは意外だった。とくにさやかさんからは天をいただいたが、彼女は7月の句会でも私の句「籐椅子や空気の流れかすかなり」にも天を付けてくださった(そのおかげで特選になった)。どうやら「穏やかな生活」についての憧れがあるようだ。よほどお忙しいのだろう。でも、忙中閑あり、こうして句会に参加する気持ちの余裕があるなら大丈夫である。

9点 エレベーター一心に春超えて来る 明子

あやこさん、直美さん、私がそろって地を付けた。感想はすでに述べた。細かく吟味するとわからなくなるが、手のひらで魂を受け止めるべき句である。

9点 あなぐまの引き出しの奥のチョココロネ さやか

さやかさんの句。今日は絶好調である。直美さんが天をつけた。私も「チョココロネ」の可愛さに負けて思わず選びそうになったが、「可愛さに惑わされてはいけない」と自分に言い聞かせ、思いとどまった。ふぅ、危ないところだった。冷静に考えてみると、「チョコボール」ならまだしも(どんぐりを連想させる)、「チョココロネ」では腐敗してしまっているだろう。

8点 パフェの上みたいな騒ぎ春来る 明子

月白さんが天をつけた。ファンタジックで祝祭的な「から騒ぎ」である。明子さんらしい句であるが、同時に、さやかさんの感覚に通じるところがある。実際、さやかさんはこの句に地を付けているし、明子さんも「チョココロネ」に地を付けている。もしかしてさやかさんは明子さんの影響を受けているのかもしれない。今後、句会では「可愛さの地雷」に気を付けねばなるまい。

6点 ではまたとポワロの襟の赤い羽根 蚕豆

犬茶房さんが天を付けた。ポワロとはもちろんアガサ・クリスティーの「名探偵ポワロ」のことである。彼が赤い羽根を背広の襟に付けたことがあるかどうかは知らないが、洒落た兼題句である。

5点 誰も居ぬ人の日カップ麺を食う 恵美子

渺さんが天を付けた。季語は「人の日」。正月七日のことで、「人日」(じんじつ)と読むことが多い。伝統に習うならば七草粥を食べるところだが、一人暮らし、あるいは家人は家にいないので、カップ麺で昼食を(私の感覚では夕食にカップ麺はない)済ませたといところだろう。ちなみになぜ七日を「人日」というのかというと、「古来中国では、正月一日を鶏の日、二日を犬の日、三日を猪(豚)の日、四日を羊の日、五日を牛の日、六日を馬の日とし、それぞれの日にはその動物を殺さないようにしていた。そして、七日を人の日とし、犯罪者に対する刑罰は行わないことにしていた」(ウィキペディアより)からである。

5点 雪の中パントマイムの二人かな 月白

明子さんが天を付けた。少し離れた場所にいるのだろう、2人の声は雪に吸収されて聞こえない。それをパントマイムのようだと詠んだ句。「雪の中」という説明的な言い方でなく、「雪で雪で」としたら久しぶりの都会の雪のわくわく感が出るだろうという直美さんの指摘に一同納得。ついでながら月白さんは「や」「かな」「けり」は極力使わない派ではなかったのかしら?であれば、「雪で雪でパントマイムの二人二人」としたらいかがだろう。たくさんのカップル(朝ドラ風にいえば「アベック」)が雪景色の街の中に見えて来る。

5点 息白く雲梯の子の揺るるかな 真由子

私が天を付けた。感想はすでに述べたが、他の人が誰も選ばなかったのは意外であった。

以下は句の紹介のみにとどめる(自作については注釈を付けておく)

4点 正月に来たる友らの家の愚痴 月白

4点 初日の出感情線と水平線 蚕豆

4点 ベランダに三年ぶりの大根干し 蚕豆

4点 元日や家族の椅子の一つ増え 月白

3点 シェアサイクル手袋ぬいでカッ飛ばせ さやか

3点 肉まんの穏やかでないある節度 明子

3点 二年ぶりそびえてどんど出番待つ 直美

2点 雪催い警備員立つ真一文字 恵美子

1点 冬日向ポワチエの死やルルの歌 たかじ

1月6日に俳優のシドニー・ポワチエが亡くなった。94歳だった。私が彼の主演作『いつも心に太陽を』(1967)を観たのは中学2年生のときだった。彼は高校教師の役で、生徒の一人は歌手のルル。映画の主題歌を歌っていた。先日の『山下達郎サンデー・ソングブック』で彼の追悼特集が組まれ、ルルの歌が流れた。私にとっては思い出深い映画だが、句会の参加者は誰もこの映画を観ていなかったようである。「ルルの歌」を風邪薬のコマーシャルソングだと思っている人もいた。やれやれ。

1点 旅にあれどわがペルソナは着膨れて 渺

1点 新春やパンダの昼寝ごと居間よ 犬茶房

1点 追憶の町ゆく冬の少女たち たかじ 

ノスタルジックでファンタジックな句だが、実体験を詠んだものである。ブログの読者ならご存じだろうが、1月13日に大阪からやってきた小学校の同級生である2人の女性と蒲田で会った。「テラス・ドルチェ」でランチをしてから、相生小学校の周辺を散歩した。2人は小学生の頃に戻ったようにキョロキョロしながら懐かしそうに歩いていた。

次回の句会は3月13日(日)。兼題は「たまご」。

句会を終えて(午後3時)、「パン日和あをや」に顔を出す。

日曜日は5時まで。

ご夫妻にご挨拶。

トウモロコシのポタージュスープ(ミニ)を注文。「つぶつぶ入りのポタージュ」である。

ホットドックを注文。朝、パンを食べていないので、パンが食べたかった。

本日の「パンとコーヒー」。

ベーグルに苺ジャムとクリームチーズがサンドしてある。

奥様からカードをいただく。omicrafts という天然素材のオーダー服のブランドの展示会の案内。やられているのはイワオ・ミサキさんという方で、高校生の頃から「パン日和あをや」にやってきていた方だそうである。

2月10日から14日までの5日間。会場は世田谷線の松陰神社前駅から徒歩7分の「ALL DAY GALLERY」。

omi craftsのホームページは→こちら とてもいい感じです。

閉店の5時に店を出る。

夕暮れの矢向駅前。

蒲田に戻ってくる。

有隣堂で堀本裕樹『俳句手帳』(東京書籍)を購入。

ふつう「俳句手帳」というと思いついた句をメモしておく手帳のことだが、これはそうではない。作品と写真と解説の文章から構成されるミニ歳時記である。

たとえば、春の部には山頭火の「この道しかない春の雪ふる」が載っている。

また同じ春の部には、小澤克己の「一歩とは永遠への意志や青き踏む」が載っている。今日の句会に参加した恵美子さんの息子さんの名前は「一歩」(いちほ)で、昨日から熱を出しているそうだ。どうぞお大事に。

帰宅して『山下達郎のサンデー・ソングブック』をタイムフリーで聴く。

チャイ、マリリンにからむのはやめなさい。

夕食はベーコンと玉子と小松菜の炒め、海老シューマイ、蕪の漬物、味噌汁、ごはん。

食事をしながら『鎌倉殿の13人』第3話をリアルタイムで観る。

風呂から出て、『桑田佳祐の優しい夜遊び』をタイムフリーで聴く。

パソコンの動きが急に悪く(重く)なってあせる。復旧作業は明日にしよう。

1時45分、就寝。

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