フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月8日(日) 雨のち曇り

2021-08-09 10:55:01 | Weblog

8時15分、起床。

台風の影響で朝から雨が降っている。青空と白い雲で始まる一日に慣れていたから、別の世界の風景に見える。

トースト(はちみつ&オリーブオイル)、サラダ(+チキンソテー)、牛乳、紅茶の朝食。

「金」と「感染」と無差別傷害事件(誰でもよかった)。不協和音が増幅する一面。

昨日のブログを書いてアップする。

突発性難聴でしばらくお休みしていた皆藤愛子さんが『窓カフェ』に戻って来た。『プレバト』の俳句コーナーにも復帰してほしい。

 右肩に枯野の冷気7号車 皆藤愛子

雨が降り続いているので昼食はインスタントラーメン。

ダメです。

夕方になって雨が上がったので、散歩に出る。

池上線沿いの道を歩く。

「ハナコーヒー」へ行って本を読もうと思う。

20分ほどで到着。

一度座ってみたかった一人客専用の(半個室的)カウンター席に座る。

先日、「隣町珈琲」で購入した小池昌代『黒雲の下で卵をあたためる』を鞄から取り出す。まずタイトルに惹かれた。そして片岡義男の「解説」を読みたかった。

しかし、この場所は照明不足で読書には不向きな席であることがわかった。期待していた卓上の電球はあまり明るくなかった。「暗い照明の下で本を読む」ことになった。

タマゴサンド(ハーフ)とアメリカンコーヒーを注文。

最初に「解説」を読んだ。

次に2つの「あとがき」(単行本用と文庫用)を読んだ。

そして表題作「黒雲の下で卵をあたためる」を読んだ。「目をあげると電車はいつのまにか、終点の新宿に着いていた。ギュンター・グラスの詩集を読んでいたのだ。一瞬わたしは目を疑った。まるで高速の電車に乗っていたようだった。日常の時間感覚が、詩の力によってかきみだされてしまったらしい。」という書き出しだった。

グラスの小説を原作とした映画『ブリキの太鼓』(1979)を観たのは大学院生の頃だったが、グラスは詩人でもあったのか。知らなかった。紹介されていた「黒い雲のバラード」(飯吉光夫訳)という詩がすごかった。

 左官屋が残していった
 砂場で
 めんどりが一羽、卵をあたためていた。

 左手の、いつも列車が
 やってくるほうから
 黒雲がもくもくとたちのぼった。

 そのときのめんどりの態度は非のうちどころがなかった。
 やはり左官屋が忘れていった
 石灰をひたすらせっせと食べていた。

 雲はみるみる膨れあがった。
 わだかまった黒々とした姿のまま
 ひろがってきた。

 めんどりと彼女のあたためている卵とのあいだの
 つながりは、
 真摯そのもの、繊細そのもの。

 黒雲は
 この非のうちどころのないめんどりの上にさしかかったとき、
 すべての黒雲がそうするように垂れこめた。

 そしてめんどりも、
 頭上に黒雲がせまってきてもすべてのめんどりがそうするように
 じっと動かずにいた。

 ぼくはこの様子を
 左官屋の物置のうしろから
 見まもっていた。

 稲妻の一閃たりと
 黒雲から走り出るでもなかった。
 めんどりに襲いかかるでもなかった。

 鷹の一羽たりと、
 雲から舞い出て、
 非のうちどころのないにわとりの羽根めがけて降下するでもなかった。

 左から右へと黒雲は
 汽車のように
 通過していった、小さくなった。

 そして誰も知る者はない、
 黒雲の下の、左官屋の砂場の
 めんどりのお腹の下の、

 あの四つの卵に、何が起こったか。

何事も起こっていないのに、この緊張感は何だろう。小池は文章の終わりでこう書いている。「この詩を読むと不安になるが、その不安はわたしのよく知る、わたしのものでもある不安だ。不穏の卵をこころのなかであたためている、わたしもまた、黒雲の下のめんどりだった。」

帰りは池上線に乗った。

蒲田に着いて駅ビルの本屋でギュンター・グラスの詩集を探した。期待してはいなかったが、やっぱりなかった。

駅ビル東館のパン屋「ポンパドール」で朝食用の食パンを買って帰る。

専門学校の道路脇のアトリエ(コロナで休業中だった学食があった場所)が明るい。

これは通行人に見せるためのもののようである。

夕食はシュウマイ、茄子とベーコンの揚げびたし、サラダ、玉子スープ、ごはん。

ごはんを半分ほど残しておいていただきものの海苔茶漬けで食べる。

「大きめの器でお召し上がりください」とあるが、そのままご飯茶碗で食べる。

確かに「海苔が溢れ出ます」ね。

扇風機の風でテーブルの下に落ちた海苔をチャイが食べた。

『山下達郎のサンデー・ソングブック』をタイムフリーで聴く。22日と29日は竹内まりやをゲストに呼んで恒例の納涼夫婦放談とのこと。

アマゾンで『ギュンター・グラス詩集』(ユリイカ叢書、1972)の中古本を注文する。

風呂から出て、今日の日記とブログ。

2時、就寝。

この記事についてブログを書く
« 8月7日(土) 曇り、一時雨 | トップ | 8月9日(月) 晴れ »