8時、起床。
チーズトースト、牛乳、珈琲の朝食。
昨日のブログを書く。
12時前に家を出る。今日は久しぶりに「いろは句会」が対面で行われる。
場所は早稲田の「カフェゴトー」。オンライン句会になる前はここが句会の定席だった(さらにその前は神楽坂の「スキッパ」だった)。
少し早く着いたので、句会の始まる前に軽く腹ごしらえをしておこう。
ファミマのイートインでおにぎりを2個(鮭と梅)。
今回は句会に先立って(あるいは句会の一部として)セレモニーがあった。まずは本日は渺さんのお誕生日(67歳・・・でしたっけ?)。主催の紀本さんから本のプレゼント。おめでとうございます。
池田澄子・坪内稔典ほか『あの句この句 現代俳句の世界』(創風社)。
続いて私の定年退職の祝いに花束をいただく(一昨日は71歳の誕生日でもあった)。ありがとうございます。
書道家である恵美子さんから書画をいただいた。「珈琲と薔薇の日々」。研究室に掛けていた「単純な生活の」の書も彼女の作であった。「単純な生活」は「単調な生活」のことではない。余計なものをそぎ落とした純度の高い生活ということである。定年後は、それに加えて、ゆとりと色彩のある生活を心がけたいと思う。
ケーキと飲み物を各自が注文する。見事なまでにばらばらの注文(笑)。
私はタルトタタンとアップルティー。
本日のリアル参加者は8名。
紀本さんとさやかさん(手にしているのはイラストレーターであるさやかさんのグッズ)。さやかさんは句会がオンラインになってからメンバーになった方なので、対面は今回が初めて。こういう場合(3次元デビュー)、「はじめまして」というのは変だし、何というのだろう、日本語の従来の語彙にはない新しい挨拶の言葉が必要だろう。
明子さんと渺さん。京都と神戸からお越しいただいた。遠路ありがとうございます。
恵美子さん、月白さん、犬茶房さん。恵美子さんはご自宅から歩いてやって来られた。月白さんは渺さんとご一緒に(ご夫婦なのである)神戸からお越しいただいた。犬茶房さんは、さやかさん同様、リアル句会は初参加。最近、博士号をとり、就職も決り(東洋大学)、順風満帆である(浮かれて転ばないようにご注意あれ)。
浜松在住のあゆみさんはテレビ電話(LINE)での参加。お久しぶりです。ほかに投句と事前選句で蚕豆さん、はなさん、港さんが参加されている。計12名。
というわけで、オンラインでは味わえなかった重層的な(発言がかぶっても気にしない)おしゃべりを満喫して(言の葉の重なり合いて春句会)、選句が始まるまでに1時間が経過した(笑)。直美さん曰く「もう今日はこれで解散してもいいんじゃないかしら」。そういうわけには参りません(笑)。
今回の投句は33句。各自、5句(天1句、地2句、人2句)を選ぶ。
定年退職した私が詠んでいるかのような句が散見されるが、私個人は定年退職を詠んだ句は作っていない。いわば、擬人化ならぬ「擬たかじ化」した一種の挨拶句である。
私が選んだのは以下の5句。
天 春風やカギひとつぶん軽くなる
付帯条件なしに読めば、彼氏彼女と別れて、相手の部屋の鍵を返して、喪失感や身軽になった気分を詠んだ句として読めるだろう。しかし、おそらくこの句は定年退職した私が研究室の鍵を大学に返したときのこと(ブログに書いた)をモチーフにした挨拶句であろう。さらにこの読み手は私の以前の句「この街を離れんとして春の風」も踏まえているのではないだろうか。そう解釈してありがたく天を付けさせていただいた。
(2025年3月25日の「フィールドノート」より)
(2024年5月11日の「フィールドノート」より)
地 長閑さやゆで卵の接地面増す
非凡な着眼点である。空気がゆるくなって、ゆで卵もゆるんで、まな板か、お皿か、あるいは手の平か、そことの接触面が自身の重さで広くなっているように感じられるというのである。
地 「チューリップの家をひだり」と通りけり
知人の家を初めて訪問しようとしている。知人からは「お庭にチューリップがたくさん咲いているお宅の角を左に」と聞いている。だとすれば、「通りけり」は直進のイメージなので、「曲がりけり」の方がよいだろう。その点は惜しいが、春の住宅街の情景が浮かんで来る絵本の挿絵のような句である。
人 行く春やひまじんなのにひまじゃない
これは私に対する挨拶句ではないと思うが、わが身に引き寄せて読んで共感できる句である。大学を退職し、暇になるはずだが、あれやこれやのイベントが続いて、全然暇じゃないのである。本当に暇になるのはGWあたりからであろう。
人 白シャツを三枚おろし新年度
新社会人を詠んだ句である。「三枚おろし」が魚のさばき方を連想させるので(笑)、「二枚おろして」にしてほしかったが、二枚だと「着て、洗って、着て」というのが追い付かないのかな。
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全員の選句が終わったところで、各自の選句を披露し、天5点、地3点、人1点で集計する。得点の高い順に感想を述べ合ってから、作者を明らかにする。
20点 「チューリップのいえをひだり」と通りけり あゆみ
今回の特選句はあゆみさんの句。さやかさんと蚕豆さんが天を付けた。久しぶりの参加で特選とは恐れ入る(そういうことは意外にあるのだが)。
17点 春風やカギひとつぶん軽くなる あゆみ
これもあゆみさんの句。私が天を付けた。他の方々は私のような読みはされていなかったが、一般的な句として読んでも、普遍的な味わいのある句だということである。「カギひとつぶん」は物理的にはたいしたことはないが、心理的にはずいぶんと軽くなっただろう。思った通り、あゆみさんは私のブログを読んでいて「研究室の鍵の返却」のことをご存知だった。そして「この街を離れんとして春の風」は彼女の好きな句であった。心のこもった挨拶句、ありがとうございました。
14点 退職の朝ポケットに春を入れ 月白
あゆみさんが天を付けた。定年退職は一般のサラリーマンの場合、特定の季節とは結び付いていないが(誕生日=退職の日なのだろう)、教員の場合は年度末、つまり春の出来事である。「退職の朝」と特定の一日があるわけではない。事務的には3月31日だが、その日、私は大学に出てはいない。妻が「口座に退職金が振り込まれていましたよ」と言ったので、退職を意識したに過ぎない。「退職の朝」というと、最後の教授会で退職の挨拶をした日(3月3日)か、卒業式の日(3月25日)でそれは同時に研究室の鍵を事務所に返却した日でもある。ポケットから鍵がなくなり、軽くなったポケットに春が入った・・・そこがカギなのだろう。
13点 空っぽの研究室に春満ちる あゆみ
明子さんと犬茶房さんが天を付けた。これもあゆみさん。そしてこれも私への挨拶句である。ありがとうございます。ただ、私の実感としては空っぽの研究室に春はまだ満ちていなかった。キャンパスの桜は卒業式の日=研究室の鍵を事務所に返却する日にはほとんで咲いていなかった。空っぽの研究室はあくまでも空っぽで、しいて言えば、31年間の思い出(記憶)が満ちていただろうか。でも、最後のひと時は、卒業していく最後のゼミ生たちの笑顔で満ちていた。
(2025年3月25日のブログより)
9点 長閑さやゆで卵の接地面増す 恵美子
月白さんが天を付けた。感想は私の選句理由とほぼ同じだが、月白さんにはこの句の作者が恵美子さんだろうと察しがついていたそうだ。以前にやはりゆで卵で句を詠んでいたからだという(私は覚えていなかった)。きっと月白さんもゆで卵がお好きなのだろう。
9点 隣卓の身の上話春の午後 たかじ
私の句。今回、私は退職がらみの句は詠まなかった。この句は先日の松本旅行のとき、いつもいくブックカフェ「栞日」の机の上にノートパソコンを置いてブログを書いている間、近くのテーブルの男女の会話が耳に入ってきたことを詠んだものである。カフェというのは不思議な場所で、他人に聞こえていることがわかっているのに、私的な会話を交わす空間である。他の客は聴いていないふりをしながら聴いている(自然に耳に入って来る)のである。
9点 ペンギンの列輝いて春隣 明子
港さんが天を付けた。みんなの感想を聴いていて不思議だったのは、この句を動物園の情景を詠んだものと素直に受け取らずに、ペンギンを管理社会を生きるサラリーマン(とくに新入社員)と比喩的に(社会風刺的に)解釈する人が少なからずいたことである。ちなみに作者は素直な方だった。
8点 ではまたとイーヨーは春の散骨 蚕豆
渺さんが天を付けた。イーヨーとは『くまのプーさん』に登場する森に住むロバの縫いぐるみ。そのイーヨーが「ではまた」と挨拶して(まさか挨拶句か?!)、森の中に帰っていく・・・と思いきや、「春の散骨」と来る。宮沢賢治の『春と修羅』と同じくらいインパクトのある組み合わせだ。その骨は何の(誰の)骨なんだろう。
8点 税務署の正しく咲ける古梅なり 犬茶房
恵美子さんが天を付けた。犬茶房さんも恵美子さんも確定申告をちゃんとしているのだろう。私もしているが、それは還付金という報酬が見込める場合で、「いましている作業は時給に換算するとけっこう高い」という動機づけがあるからで、追加納税がわかっていてなかなか真面目にできるものではない。そういう「正しい人たち」がいるおかげでこの国はなんとかやっていけてるのである。
8点 「研修中」名札にこぼるる桜かな 明子
私はてっきりこの句は新入社員が花見の場所とりをしているのを詠んだのかと思った。でも、そういう時代はもう昔のことなのかしら。
6点 おとしもの届けたひとに春の風 さやか
直美さんが天を付けた。私はよく落とし物、忘れ物をするが、ほとんどの場合、戻って来る。道に財布を落としたって警察から連絡があって戻ってくるのである。私自身、結婚式のご祝儀袋を拾って、たぶん目と鼻の先のホテルの結婚披露宴に向かう人が落としたのだろうとあたりをつけて、フロントに持って行って、落とし主が見つかったといこともある。やっぱり、こういう「正しい人たち」がいるおかげでこの国はなんとかやっていけているのである。
6点 あくびするカバの大口春は来ぬ 恵美子
花さんが天をつけた。恵美子さんは前回の句会でも大口を開ける池の鯉たちを詠んだ。大口が好きななのだろう。ゆで卵を大口を開けて食べるのはすごく好きなのかもしれない。もしかすると大口を叩くのも好きなのかもしれない(笑)。
以下、時間の関係で割愛します。
次回の句会は6月15日(日)13時~15時、場所は恵美子さんの書道教室(新宿)、ズーム併用、事前選句もありのハイブリッド。投句先は犬茶房さん。兼題は「文房具」。いろは句会も新時代を迎えようとしていますね。
蒲田に戻って来る。
近所の桜、これで見納めかな。
帰宅して、花束(これまでのものに加えて)と書画をテーブルの上に置く。
なお、恵美子さんから書画を2パターン(書体の違い)いただいた。
こちらが旧来の恵美子さんの書体。上の方がモダンですね。
夕食は麻婆茄子、サラダ、しらすおろし、玉子とワカメの味噌汁、ごはん。
食事をしながら『俺の話は長い~2025・春~』後編(録画)を観る。最後は王道の人情もの。
デザートにデコポン。けっこう甘い。
明子さんからいただいた阿闍梨餅を食べる。口当たりも甘さもやさしい。小川珈琲の珈琲粉もいただいた。いよいよ「珈琲と薔薇の日々」なり。
風呂から出て、今日の日記を付ける。
1時半、就寝。