(承前)
いつのころからだろう、高校生のときからだろうか、大学生のときからだろうか、毎年、9月のよく晴れた日に、鎌倉の由比ヶ浜に来る習慣がある。それは夏の終り、秋の初めの頃で、もう海水浴をしている人はなく、海の家も解体され、でも誰もいないわけではなくて、サーファーや、波打ち際で遊ぶ小さな子どものいる家族や、一人で、二人で、グループで海を眺めに来た人たちや、犬の散歩をさせている人たちで、砂浜はけっこう賑わっている、そういう日だ。夏を見送る日、と自分では呼んでいる。
由比ヶ浜は、滑川の河口の海に向かって右側を由比ヶ浜海岸、左側を材木座海岸と呼ぶ。鎌倉駅から若宮大路をまっすぐ下って来ると由比ヶ浜海岸の方へ誘導される流れになっている。
振り返ると数週間前まではあったはずの海の家は一軒も残っていない。
できたら海の家は解体中であってほしかったが(その方が夏の終わりという雰囲気がある)、資材を運び出したトラックの轍(わだち)だけが残っている。
海岸橋を渡って、材木座海岸の方へ。
こちらの方が人影が少ない。でも、父の働いていた千代田区役所の海の家(宿泊施設)がこちらの方にあったので、私には材木座海岸の方が親しみがある。
今年の夏を見送る。暑い、暑い夏だった。
右側(由比ヶ浜海岸の方)を見やると、彼我の人の数は歴然としている(手前の砂浜に座る二人だけが材木座海岸の人、あとは全部向こう)。
一方、左側はこんな感じ。
人が少ないのでかえって浜辺の人たちに目が行く。
この子、もちろん迷子ではない。彼の視線の先にはお母さんがいる。
座る2人。
走る2人。
歩く2人。
ワンちゃと散歩する人。
ウィンドサーフィンをする人たちがシジミチョウのように見える。
一人黙々とサーフィンの練習をする人。
下校する小学生たち。女の子たちが前を行き、
男の子たちが後に続く。
上空にはトンビ。うっかりおにぎりなんかを手に持っていると急降下してきて持って行かれる。
砂浜にはカラスがいて、食べ物をあさっている。
波の中に飛び込んでいくワンちゃん。
フリスビーを拾いに行っていたのだ。
犬の散歩を終えて帰る人と、いま浜辺に来た人、
雲一つない空をスマホのカメラで撮る。この人も夏を見送りに来たのかもしれにない。
喉が渇いた。材木座商店街にカフェはあったかな。
ここはお休み。
こちらは植物と雑貨のお店みたいだ。
ここは魚屋さん(断るまでもない)。
魚屋さんの向かいに、ありました、「ミルコーヒー&スタンド」。
八百屋さんと同じ建物。何度も前を通っているのに気づかなかったな。最近出来たカフェなのかしら。
メロンクリームソーダを注文。注文してから「無心庵」のクリームあんみつとアイスが被ってしまったことに気づく。
お店の方に「最近できたお店ですか?」と質問したら、「5年目になります」とのこと。そ、そうでしたか。サンドウィッチもいろいろあって美味しそうだった。海辺を歩いて小腹が減ったときにいいかもしれない。また来たいカフェです。
いつもなら商店街を歩きながら駅の方へ戻るのだが、今日は何だか名残惜しい、もう一度砂浜に出て、さっきと反対に歩いて帰ろう。
そろそろ5時半になろうとするところ。だいぶ陽も傾いた。
由比ヶ浜海岸の方はあいかわらず人が多い。
でも、そろそろみんな上がっていっている。
もう一度振り返る水平線。
さて、帰ろう。
海岸橋を渡って若宮大路へ。
鎌倉駅(東口)に戻ってくる。
お土産を買っていく。鎌倉のお土産は「豊島屋」の鳩サブレーと決まっている(「扉」というのは二階の喫茶室の名前)。
簡易包装のものは同じ値段で紙箱入りのものより一枚お得の9枚入り。
帰宅して私も妻もさっそく1枚食べる。やっぱり美味しい。妻が2枚目に手を出そうとしたので、夕食前だよと注意すると、手を引っ込めた。
夕食は炒飯、サラダ、ワカメスース。
冷蔵庫の冷や飯が一定量に達したのだと知る。
デザートは梨。
2時半、就寝。たくさん歩いて疲れたが、心地よい疲れだ。