フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月6日(月) 曇り

2024-05-07 11:16:01 | Weblog

7時半、起床。

バタートースト、目玉焼き、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

9時前に家を出て、新宿駅へ。10時発の特急あずさの発車までの時間を構内の「ベッグズカフェ」で。GWの最終日の今日から二泊三日の松本旅行である。本来は、新学期の始まる前の4月初めに予定していたのだが、急な用事が入って、今日になったのである。

車内のシートに座り、バッグからキンドル・スクライブを取り出し、ポール・オースター『ムーンパレス』を読み始める。再読だが、最初に読んだのがずいぶん昔なので、細部はまったく忘れていた。初めて読むような気分でこの名作を読めるというのはありがたい。旅は日常からの離脱だが、離脱は瞬時には起こらない。窓外の風景がしだいに変わっていくのを見ながらゆっくりと進むのだが、ここに小説が加わると、それが加速される。

12時半頃、松本着。

駅のコンコースから北アルプスの山々が見える。

定宿にしている(会員になっている)ホテルにとりあえず荷物を預けに行く。

もうチェックインできることがわかったので、部屋に入り。持参したノートPCをセッティングしてから、街歩きを開始。

中町通りへ。

松本に着いて最初に行くカフェは「chiiann」と決まっている。

今日営業していることは昨日の電話で確認済み。

写真では空いているように見えるが、それは人物(客)が写り込まないようにしているからで、6人ほど先客がいた。

カウンター席に座る。

いま信濃大町(松本から1時間ほど)にお住まいで、ときどき松本に出てこられている坂井素思さん(元放送大学教授)にカウンターの写真を添えて「やってまいりました」とLINEを送ると、すぐに「いらっしゃいませえ」と返事があり、最近撮ったカウンターの写真が添えられていた。彼とは明後日、ここで会う約束をしている。

パスタのセットを注文。

奥様が「染織作家 本郷孝文の仕事」展のチラシをいただく。「ギャリル灰月」の主催で高見書店のめったに開けない高見屋文庫(蔵)を使って開催されているそうだ。今日までである。

支払いをしようとしてバッグの中に財布がないことに気づく。ホテルの部屋に置いてきてしまったのだ。ツケにしていただく。「ホテルのお部屋にあるといいのですけど・・・」と奥様が心配顔で言われたので、そのときは帰りの電車代を貸していただけますかと聞くと、ご主人は「いいですよ」と言ってくださったが、奥様は「このあと「ガルガ」さんにも行かれるのですよね。そちらでもお借りになれますよね」と笑って送り出していただいた。

財布はホテルの部屋にあった。

ツけを支払いに「チーアン」に戻る途中、「高見堂文庫」に寄って「染織作家 本郷孝文の仕事」展を見物する。反物を見ながらスタッフの方に織り方の特徴を丁寧に説明していただいた。生糸からして天蚕という緑がかった繭のものを使っているのだそうだ。仕上がった着物の値段を聞いたら「400万円ほどです」とのこと。な、なるほどね(!)。一番安そうな(妻へのお土産になりそうな)スカーフの値段を聞いたら「20万円ほどです」とのこと。う~ん、一桁違う(笑)。

読書好きな妻にはこの栞がいいかな。(これでも3千円した)

「チーアン」で先程の支払いをしてから、高砂通りの「田園ベーカリー」へ顔を出す。奥様とご挨拶。

店内でクリームパンと紅茶をいただく。

しばらく奥様とおしゃべり(世間話)。奥様は田園調布のご出身で、それにちなんで「田園ベーカリー」という店名にしたのだが、そもそもご主人の姓が「園田」なのである。ひっくり返すと店名としてちょうどいいと。街中にあるのに「田園ベーカリー」なのはそういう由来なのである。

夕食用にベーコンエピパンとあんぱんを購入。

四柱神社に挨拶に行く。

今年もやって参りました。

路地を歩く。

ブックカフェ「想雲堂」に顔を出す。

今日営業していることは昨日電話して確認した。ただし、いつもより閉店時間は早い。いつもは午後11までだが(!)、今日は6時まで。

店内に先客はいなかった。心置きなく写真を撮れる。

カウンター席に座って、ホットレモネードを注文。風が強くて、ちょっとひんやりしていて、体が冷えたのだ。

マスターとおしゃべりしながら。「GW中はふだんの(地元の)お客様はあまりいらっしゃなくて、観光客の方中心ですね。外国からの観光客もよく見えられます。ブックカフェというのが珍しいのと、カフェバーなのでお酒が飲めるからでしょう。居酒屋さんは別として夜やっているお店が少ないということもあるのでしょう」

丸谷才一『星のあひびき』をパラパラと読む。評論的エッセーと書評集である。書名とこの装丁には見覚えがある。妻にラインをして、書庫にこの本がないかを見てもらった(同じ著者の本は同じ場所に並んでいる)。「ないみたい」とのこと。2010年の出版なので、もし購入していたら、ブログに記録してあるだろうとチェックしてみたが、ブログ内検索ではヒットしなかった。書店で手に取って、でも購入せずに棚に戻したということだろうか。丸谷の本は出れば買っていたのだが(ただし小説には関心がなかった)、しだいに民俗学的な概念を使った評論を書くようになってから面白みが感じられなくなって買わなくなってしまったのだ。でも、本書はパラパラと読んで、とても面白かったので購入することにした。

1時間ほど滞在して、店を出る。時刻は4時半。

もう一軒、寄りたいカフェがある。

夕方から雨の予報が出ているが、まだ大丈夫のようである。

途中で、市立美術館に寄っていく。入館は4時半までだが、中に入るつもりはなかった。屋外に展示されている草間彌生の作品を見られればよいのだ。

何度見ても、インパクトがある。

「水玉強迫」。「脅迫」ではなく「強迫」である。草間にとって水玉は強迫観念の象徴であり、その作品化は不安の克服にあったのだろう。

ここでは自販機やごみ箱までも水玉模様である。

水玉模様のベンチに座って、目の前の巨大な作品を観る。

いっそう不気味である。

そばにはチューリップが風に揺れている。

花びらの中をレンズで覗いてみる。こちらはそんなに不気味ではない。むしろ万華鏡のようで美しい。

本日最後のカフェは「ガルガ」。「想雲堂」同様、本日営業していることは、昨日、電話で確認済みである。

ここではまずチキンカレー(小)を注文するのが決まり事である。

ここはギャラリーカフェで、今月は「ガルガ動物園」の5回目である。何人かの作家さんが動物をモチーフにした作品を出している。

展示場は二階。

金井三和さんは好きな作家である。この猫時計には惹かれるものがあったが、時計として使うにはアバウトだろう。

金井さんの犬と猫のブローチ。この辺が手ごろかな。

一階のショップ(常設)にあった豆皿と湯飲みを購入。「陶房七草キュービー」という作家さんの作品である。

柔らかな色使いと手触りが素敵だ。

チーズムースケーキと珈琲。

美味しいスイーツを味わっていたら、女性客が入って来て、二階のギャラリーに上がった。店主さんが私に「いまお求めになった作品の作家さんです」と言ったから、驚いた。何たる偶然。きっと四柱神社様のご利益だろう。彼女が二階から降りて来たところで、店主さんが私を紹介して下さったので、ご挨拶をする。

6時ちょっと前に店を出る。

松本駅のみどりの窓口に行って帰りの特急の日時の変更をする。実は、帰るのは明後日なのに間違って明日の切符を購入していたのだ(!)。もし気づかなかったら、えらいことになっていたところだった。

ホテルの部屋に戻り、地元のニュースで明日の松本の天気をチェック。これから夜間に降る雨は昼までに止みそうである。

8時からオンラインでの研究指導。旅先で仕事。いわゆるワーケーションである。

オンラインの研究指導は雑談を含めて1時間ちょっと。さて、夕食だ。「田園ベーカリー」で買ったあんぱんとエピパンとアメニティのカップオンドリップ珈琲。旅先での夕食は部屋で簡易に済ます。これ、いつものことである。

風呂を浴びてから、今日撮った写真の整理。

1時、就寝。