フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

12月26日(金) 晴れ

2014-12-27 13:13:30 | Weblog

7時半、起床。

朝食はとらず、9時過ぎに家を出て、墓参りに行く。暮れの墓参りはたいてい私一人で行く。

下町の寺、泰寿院。私の父は浅草の生まれで、地元の寺であった。

 墓参りを済ませ、その足で大学へ。入谷から日比谷線に乗って、茅場町で東西線に乗り換え、早稲田まで30分ほどで着く。

語学留学で8月からドイツに行っている卒業生のKさん(論系ゼミ一期生)が年末年始、一時帰国していて、研究室に顔を出してくれた。お土産にチョコレート(スイス製)をいただく。

変ってないね。いや、心もち若く(幼く?)なったような・・・。日本人女性はたいていそうだが、Kさんも、むこうでは実年齢よりも10歳くらい下に見られるらしい。つまり高校生くらいに。周りから若く見られると、実際、若くなるのかもしれない。

昼食は彼女の希望で「すず金」で。ドイツにいるときから「すず金」の鰻が食べたかったとのこと。11時半の開店直後に行ったのだが、すでにほとんど満席で、空いている最後のテーブルに座ることができた。平日だからと甘く見ていたが、危ないところだった。 一陽来復のお札を求めて穴八幡に来た人たちが多いようである。

30分近く待って、ようやく鰻重(+肝吸い、肝焼き)が運ばれてきた。う、うまい。しかし、「うまい!」と口にすることは慎んだ。相席の老夫婦は私たちより後の注文で、じっと空腹に耐えていらっしゃるようだから。・・・と思っていたら、Kさんが天真爛漫に「美味しい!」と言った。高校生が・・・。「ゴクリ」と隣の老夫婦が唾を飲みこむ音が聞こえたような気がした。

食後のお茶は「SKIPA」でと決めていて、地下鉄で一駅隣の神楽坂へ。

神楽坂の駅を降りて歩き始めたとき、首筋が寒いのを感じた。あっ、「すず金」にマフラーを忘れて来た。店に電話をすると、「マフラーをお忘れですね」と言われた。後で取りにうかがいます。

「SKIPA」では、Kさんはホットチャイ、私はホット梅ジュースを注文。林檎のおまけが付いてきた。

宙太さん、のんちゃんとも5カ月ぶりの再会である。お店が混んでいなかったらドイツでの暮らしについておしゃべりしたいところであったが、「すず金」同様、こちらも満席状態。スリーショットを撮らしていただいて、「よいお年を」のご挨拶をして引き上げる。

「梅花亭」をのぞいて「よいお年を」のご挨拶。女将さんがヨーロッパ旅行に行かれたことがあり、その話題でしばし雑談。豆大福、うさぎ餅、みたらし団子を購入。

早稲田に戻り、「すず金」でマフラーを受け取る。「よいお年を」。

Kさんは夕方から渋谷の美容院で髪をカットする予定なのだが、それまでもう少し時間があるようなので、「カフェゴト―」に顔を出す。二人だが、窓際の大きなテーブルが空いていたので、そこに座わらせていただく。ゆったりしているだけでなく、明るいから、写真を撮るには最適な席なのだ。

チーズケーキと洋梨のタルトのハーフ&ハーフ。飲み物は私はブレンドコーヒー、Kさんはウィンナコーヒー。

さて、ハーフ&ハーフのケーキをKさんはどういうふうに食べるか。最近の私の関心事である。Kさんは手前のチーズケーキから食べ始めて、三口くらいチーズケーキを続けて口に運んだ。おや、男性に特徴的な食べ方(一方を先に食べ終えて、もう一つに移る)だと思っていたら、途中から洋梨のタルトを食べ始めた。両方同時進行で食べるパターンの変種といっていいだろう。最後の一口はチーズケーキだった。理由を尋ねたら、味のしっかりした方、味の濃い方を最後に食べるという。変種ではあったものの、「女性はハーフ&ハーフのケーキを同時進行で食べる(ことを好む)傾向がある」という私の仮説は支持された。

そしてこの傾向は、一方で、「異性とのつきあいでは同時進行(二股)をしない(嫌う)傾向がある」という仮説とワンセットなのだが、「そうですか?」とKさんに尋ねたら、「はい、そうです」と答えた。そう答えた後で、「もしそうじゃなくても、いいえとは言いにくいですよね」と言って笑った。そりゃ、そうだ(笑)。

ドイツでの生活で流れている時間は日本で商社勤めをしていたときに流れていた時間と全然違うとKさんは言う。「あの頃は、一年後の自分の姿はかなりはっきり見えていました。でも、いまは、一年後の自分は予測できません。日本に帰っているかもしれないし、ドイツでの生活を続けているかもしれません。不安な気持ちもありますが、わくわくする気持ちの方が大きいです」。一年後の自分の姿がはっきり見えるということは、その姿が楽しいもの、望ましいものであるならいいだろうが、そうでない場合は、とても閉塞感の強い生活になるだろう。Kさんの場合は、後者だった。予測される一年後の自分を受容することはできなかった。だから彼女は安定した収入を捨てて、まったく新しい生活に身を投じたのである。人生は一度しかないから。

たぶんKさんは、いま、人生の休み時間の中にいるのだろう。ドイツの冬はとても寒くて、曇天の日々だが、気分は大人の夏休みだ。

人間は基本的に怠惰な動物である。だから社会は、とくに「成長」を目標とする産業社会は、人間を倦まずたゆまず働かせようとする工夫をたくさん用意している。たとえば企業内での転勤や配置転換(ヨコの移動)や昇進試験制度(タテの移動)。平社員は主任をめざし、主任は課長をめざし、課長は部長をめざし・・・「課長島耕作」もいまや「会長島耕作」になっている。他方、職場を離れ、専業主婦となった女性たちにとっては、子どもの成長に付随するさまざななイベントにエネルギーを注ぐことになる。心配や希望は絶えることがない。そうした「頑張るシステム」から一番自由な場所にいるのは、仕事に就いておらず、結婚をしていない人であるが、そうした場所にいる人たちへの世間のまなざしは厳しく、そこに長くとどまることに後ろめたさを感じるようにできている。

休むことも大変な社会なのである。だからこそ、われわれは休むべきときには、断固として休まなくてはならないのだ。

最近、「カフェゴト―」は日曜日(本来定休日)も営業していることが多い。年中無休である。マスター、休まないとだめですよ、と言っておきます。よいお年を。

Kさん、次に会うのは来年の夏だろうか(ドイツでの生活を延長する場合でも、ビザの関係で、一度は戻ってくる必要がある)。そのときまで、さようなら。

「カフェゴト―」のドアの外で撮った写真のKさんは、ガッツポーズをしているように見えるけれど、バッグを手にさげているためにそう見えるだけで、とくに「頑張ります!」と言っているわけではありません(笑)。

5時頃、帰宅。すぐにジムにトレーニングに行く。鰻重分のカロリーを落とさなくてはならない。50分のクロストレーナーで670キロカロリーを消費。これでよし。われながらなんてストイックなんだろう。

夕食はメロの粕漬け焼き。

デザートは「梅花亭」で買ってきた豆大福とみたらし団子。(妻と分けて食べる)