徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

僕とりょうたの鎌研坂

2015-10-06 21:27:09 | 
 「山路を登りながらこう考えた。智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ
 とかくに人の世は住みにくい。


 漱石の「草枕」の中の有名な一節だが、この山路というのが鎌研坂(かまとぎざか)といわれている。熊本市西部の島崎・花園地区から金峰山に登る険しい山道である。ここは僕がまだ「草枕」のことなど何も知らなかった中学時代、親友のりょうたと毎週のように登った山道だ。今日では自動車道が並行しているが、当時は「けもの道」のような山道が一本あるだけ。お互いに母親が作ってくれた弁当をリュックに詰め、一路金峰山を目指した。何が楽しいかというと、二人とも大の映画好き。互いに知っている限りのまめ知識を披露し合うのである。当時は西部劇の全盛期。いきおい、話題は自分が見た西部劇のストーリーや好きな西部劇スターの話が中心。話に夢中で険しい鎌研坂もなんのその。あっという間に峠の茶屋へ着いたものだ。そのりょうたも2年前に他界した。中学時代に戻れるものなら、一番やりたいことといえば、りょうたと二人で鎌研坂を登ることだ。


沢に沿って昼なお暗い山路が続く


登り切ると熊本市街地が見える