読書な日々

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『ワルキューレ』

2018年03月04日 | 舞台芸術
ワグナー『ワルキューレ』(びわ湖ホール)

昨年に引き続き今年も、びわ湖ホールプロデュースオペラの『ニーベルングの指輪』を観に行った。今年は『ワルキューレ』だった。

あのフランシス・コッポラの『地獄の黙示録』で有名になったワルキューレの騎行のことしか知らなかったうえに、5時間という長丁場の上演に、最後まで耐えられるだろうかと少々ビビっていたのだが、そんな心配も吹き飛ばすような素晴らしいオペラだった。

最高神ヴォータン(いわばゼウス)がラインの黄金でできた指輪を取り戻すために、人間の女に産ませた双子ジークムントとジークリンデが、ついに出会い、結ばれて、ジークフリートを身ごもるというところまでの話だ。

これに、ヴォータンの妻であるフリッカ(ギリシャ神話でいえばヘラ)が嫉妬して、ヴォータンの企みをやめさせるために、妻の神として立場を尊重するのか、それを無視して神の地位を失墜させるのかと言われて、やむなく、ジークムントを裏切り、彼を支援するようにと指示していたワルキューレの長で、ヴォータンの長女でもあるブリュンヒルデにこれまでと矛盾した命令を出すが、彼女が従わなかったために、永遠の眠りという罰を与えるという話が絡みついている。

三幕構成になっており、第一幕は双子として生まれたジークムントとジークリンデが再会を果たし、結ばれる。第二幕はヴォータンが妻フリッカから双子のことを咎められ、計画を断念し、ワルキューレのブリュンヒルデにジークムントを殺すように命じるが、ジークムントこそ真の英雄だと知った彼女は彼に加担するも、ヴォータンが介入して、ジークムントは死んでしまう。ブリュンヒルデがジークリンデを連れて逃げるところまで。第三幕は、ブリュンヒルデが深い森にジークリンデを逃がすも、父の命に反した罰として、ヴォータンの手で永遠の眠りに落とされる。

無駄のない作り。もちろんオペラは感情表現を歌で行うので、そのために相当の時間が割かれている。物語の展開そのものは、30分もあればすんでしまうが、それぞれの行為に伴う感情をしっかり描き出すのに、それ以上の時間が必要になる。普通はそれが退屈なのだが、音楽がそれを忘れさせる。実質4時間もあるけれど、時間のたつのが速く感じられた。

音楽がまたすごい。重低音が中心のあの音楽は、生で聴くにかぎる。もちろん金のある人はあれだけのものが自宅で聞けるような環境を作れるのだろうが、ワグナーは音楽だけではなくて、視覚的なものも重要なので、舞台を見るが一番いいと思う。

それに演出も素晴らしかった。第一幕の吹雪のなかの家、新しいテクニックを用いて、観ている私たち自身が猛吹雪の中にいるかのような感じ。第三幕のワルキューレの戦乙女たちが空飛ぶ馬に乗って集まってくるのも違和感なく見れた。

それと私が観た土曜日の公演はジークムントとヴォータンとブリュンヒルデが外国人の歌手で声量もすごいし、演技もうまい。とくにブリュンヒルデの女性はすごく体格がよくて、やはり戦乙女というくらいならあれくらいでなくっちゃという感じ。もちろんジークリンデを歌ったのは日本人歌手だったが、この人もうまかったことは書いておく。

私の知り合いにもワグネリアンがいるが、ワグナーに惚れ込む理由が分かったような気がする。

来年の『ジークフリート」が楽しみになってきた。

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