読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『蒐める人』

2020年06月03日 | 作家ナ行
南陀楼綾繁『蒐める人』(皓星社、2018年)

南陀楼綾繁が、本とかいろんなものを集めて、目録を作っている人たちと対談した記録本で、世の中にはこんなことをして食っている人がいるんだなと思い知った。

私が初めて目にした目録ってなんだろうと過去を振り返ってみると、やはりフランス文学などの新刊本を売っている新宿の「フランス図書」の目録のようだ。

いつ頃からフランス図書で本を買い始めたのがよく覚えていないが、たぶん大学院生になってからのことだろう。こういうところは一度買い物をすると、勝手に目録を送ってくれる。でもその高いこと、とても手が出るようなものは滅多になかった。

思うに目録というのは、書式が一貫していないとだめだし、遺漏があっては役に立たない。私も博士論文を書いた時に、当然のことながら書誌を書いたのだけど、苦痛で苦痛でしかたがなかった。私はこういう根を詰めてやらねばならないような仕事は向いていないと思う。

この本で出てくる人たちはそういうことが好きで好きでしかたがないという感じの人達ばかりだ。とにかく蒐めることが好きで、それを目録にすることも好きなんだろう。

ものを集めたがる人ってけっこういる。私も知らず知らずのうちにものを集めているなんてことがある。まぁここに出てくる人たちに比べたら、お遊びにすぎないけど。

古本屋の人たちがメインなんだけど、古本屋は私も好きで、よく行っていた。大阪駅前第四ビルに数軒ある古本屋とか、阪急うめだのかっぱ横丁とか、なんばに数軒の古本屋とか。でも、掘り出し物に巡り合うのは定期的に通うことが大事だと思う。一見さんのように入っても、そういうものに巡り合うことはめったに無い。

私は、読むか読まないか分からないけど、面白そうだから、というような理由では、いくら安くても買わないからだ。本当に欲しいものだけ。

それに今はネットに「日本の古本屋」というサイトなどもあって、欲しい本を検索することができる。だんだんと古本屋から足が遠のくのは仕方がないことかな。

本読みにとって面白かったのは、最後の対談の都築響一という人が、よく出版社の編集者から「なんかおもしろいものないですかね」と聞かれるが、おもしろいものはそこいらへんにいくらでも転がっている。彼らがそれを知らない、遭遇することがないだけだ、と話しているが、まさにその通りだと思う。

大きな出版社の編集者なんて、売れすじにしがみついて、新しいことに挑戦しようなんてことがないんじゃないかなと思う。
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