読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『現代フランス社会を知るための62章』

2012年01月11日 | 評論
三浦・西山編著『現代フランス社会を知るための62章』(明石書店、2010年)

現代フランス社会を知るための62章 (エリア・スタディーズ84)
三浦 信孝編著,西山 教行編著
明石書店
たとえば、フランスに関心があるといっても、普通は表層的なものに終わることが多いものだ。あるいは、自分に興味のあることや関わりのある分野のことは玄人はだしに知っていても、それ以外のことはまるっきり知らないという専門バカ的な知識のどちらかだろう。しかし文化から社会や政治も含めて、広く知っておくことは決して意味のないことではないと思う。そんなに深くなくていいから、広く浅く知っておきたいというときに、便利かなと思って読んでみたのだが、果たしてどうだろうか?

まず執筆者がほとんどフランス語教師という偏りがあることが、なんか抽象的な話ばかりという印象を作り出す原因になっていると思う。要するに自分の専門でもないことをちょっと調べて書いた的な書き方になっていて、とにかく抽象的すぎる。そのいい例が、どの章も、過去(しかも200年も前の大革命時代)の話から始まって、やっと現代にいたるという論述の仕方にある。現代の諸相をスパッと切り取って、具体的に見せて欲しい。できれば日本との比較で、わかりやすく、というのが私のような普通の読者の期待だろうが、そうなっていない。図表などがほとんどないのもいただけない。失業率の推移のような、図で見れば一目瞭然のようなものは図表を使って欲しい。論述ばかりだとしんどい。

分かりやすい分かりにくいは、私自身の知識との関係もあるので、まったく客観的なものではなくて、独断によるものであることを断った上で言えば、「売春」「ピル」「パックス」「学校」「グランゼコール」「ユーロ」「国籍」「選挙制度」などが面白かった。私自身興味を持っているがあまり知識がないためによく理解できなかったのが、「新聞・放送・メディア」「年金」「社会保障」「銀行」「租税」「国防」である。たとえば、年金とか租税なんかはいくつかのケースを想定して、具体的に書いてくれたら、日本の状態と比較できて面白かっただろうと思うのだが、さっぱり分からなかった。まったくイメージをつかめなかった。国防も非常に興味があるのだが、残念。

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