劇団大阪公演『そして、あなたに逢えた』(近石綏子作)
1981年に初演された『楽園終着駅』とその姉妹作みたいな『そして、あなたに逢えた』は、まだ老人介護問題や認知症の問題がこんにちほど普遍的な社会問題となっていない時期に書かれ上演されたものらしい。私が劇団大阪の『楽園終着駅』を見たのは1990年頃だったが、その頃だってまだそんなに問題になっていなかったような気がする。
私は毎朝ジョギングをしているのでよく分かるのだが、ジョギングではなくてウォーキングをしている老人たちをあちこちで見かけるようになったのは、ここ10年くらいのことだろう。
そして、30年経った今、劇団大阪が40周年の記念として上記の二作品を連続上演した。私は上さんと『そして、あなたに逢えた』のほうだけを見た。認知症老人の介護施設の様子を作品化したもので、とくに大きな事件も山場もない。「あなたに逢えた」というタイトルは、すべての認知症老人たちに言えることなのだろうが、取り立ててあげれば、売れない元歌手の川島律子が赤ちゃんの時に別れた娘が会いにやって来たこと、元病院長の平岡のもとへ長男がやってきたことくらいだろうか。それだって、いわゆる山場と大団円というような作りになっているわけではない。そもそもそんなものも必要ないと思えるような迫真の演技で見せる作品である。
たぶん30年前は役者たちも無理に老人役を作り上げていたのだろうが、今や素のままで、痴呆老人を演じられるようになった。

私は毎朝ジョギングをしているのでよく分かるのだが、ジョギングではなくてウォーキングをしている老人たちをあちこちで見かけるようになったのは、ここ10年くらいのことだろう。
そして、30年経った今、劇団大阪が40周年の記念として上記の二作品を連続上演した。私は上さんと『そして、あなたに逢えた』のほうだけを見た。認知症老人の介護施設の様子を作品化したもので、とくに大きな事件も山場もない。「あなたに逢えた」というタイトルは、すべての認知症老人たちに言えることなのだろうが、取り立ててあげれば、売れない元歌手の川島律子が赤ちゃんの時に別れた娘が会いにやって来たこと、元病院長の平岡のもとへ長男がやってきたことくらいだろうか。それだって、いわゆる山場と大団円というような作りになっているわけではない。そもそもそんなものも必要ないと思えるような迫真の演技で見せる作品である。
たぶん30年前は役者たちも無理に老人役を作り上げていたのだろうが、今や素のままで、痴呆老人を演じられるようになった。