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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

婿入婚

2022年05月11日 | 日記

 

『新社会学辞典』からの用語です。

 

婿入婚/嫁入婚

 日本の伝統的な婚姻は,成立儀礼のあり方および当初の婚舎の所在を基準にして、婿入婚と嫁人婚の2類型に大別される。婿人婚とは、婚姻成立儀礼を妻方で行い、そのまま婚舎を一定期間妻方においたあと、引き移りの儀礼を行って婚舎を夫方に移す形態をいう。その間妻は実家にとどまり夫は訪婚の形をとるので、一時的妻訪い婚ともよばれる。訪婚期間は数力月から二十数年にも及ぶことがあるが、婚舎を夫方に移す時期は、夫の両親が子女の身のふり方を決めて隠居屋に退く条件が整ったとき(このことは引き移りと同時に妻が主婦の地位を占めることを意味する)など、一般に夫方の家の事情によって決まる。その他、岐阜県白川村などにみられた終生訪婚を続けるものや、年期婿のように婚舎を妻方におく一定期間は夫もそこに同居する形態、さらには婚舎を終生妻方におきつづけて同居をするものを仏婿入婚に含める考えもある。

一方、嫁入婚とは、婚姻成立儀礼を夫方で挙げ、婚舎も当初から夫方において、妻がいきなり夫方家族の成員に組み込まれるものをいう。

 この2類型は他の点でも著しく対照的で、婿入婚の場合、婚姻開始以前にヨバイによる自由女性交渉が公認され、配偶者決定には当事者同士の意思が重んしられる。このようなヨバイを婚姻成立後の訪婚を可能にするためには、村内婚にならざるをえない。これに対して嫁入婚は,家柄を重視し釣合いのとれた配偶者を広い範域から求めようとする傾向が強く、いきおい村外婚的性格のものとなる。配偶者選択は第三者を介して進められ、決定には親の意向が強く働き、仲人の役割が重要となる。嫁方が遠ければ訪婚は不可能なため,婚姻成立とともの妻は夫方に引き移ることにな、婚姻成立と引き移りを兼ねて嫁入りの儀礼は盛大なものとなる。しかし,妻の地位は当初は低い。

 この異なる体系をもつ二つの婚姻類型はわが国に長らく併存していたが、歴史的には婿人婚から嫁人婚へ変遷したとする説が強い。柳田国男は,嫁入婚採用の契機を鎌倉時代以降上層の武家が遠方の武門と婚姻締結を始めたことに求め、それがしだいに一般に広まり、村内婚にも影響を与えたと述べている。しかし,江守五先はこの説をなかば容認しつつ蝠周辺諸民族の婚姻儀礼との比較から古代における嫁人婚の存在を推測している。なお,有賀喜左衛門は親方取婚という第三の類型を設定し,大間知篤三は足入婚の概念を提示して,これを2類型の中間的なものと考えた。

二婚姻慣行,遠方婚,村内婚/村外婚,婚姻史 〔文献〕柳田国男『婚姻の話』1948(定本柳田国男集15);有 賀喜左衛門『日本婚姻史論』1948(有賀喜左衛門著作集6); 高群逸枝『招婿婚の研究』1953;大間知篤三『婚姻の民俗』 大間知篤三著作集2,1975;江守五夫『日本の婚姻』1986。

                     ◆田中宣一(以上)

 

親鸞聖人のころの結婚は「婿入婚」であったことは承知していたが、ヨバイが肯定される文化とセットであったことは興味深い。おそらく当時は、デートなどはないのだから、男女の結びつきはヨバイとならざるを得ない。

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