日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「ラウラ・イョーリオ、ロベルト・リッチ×ヤマザキマリ特別講演」に行ってきました(2018.4.12)@イタリアブックフェア2018

2018年04月22日 | イタリアの本・絵本・雑誌
「ラウラ・イョーリオ、ロベルト・リッチ×ヤマザキマリ特別講演」に行ってきました(2018.4.12)@イタリアブックフェア2018

満席の会場につめかけた人々の前で 開場まで繰り返し映し出されたのは 「il cuole dell'ombra(闇の心)」という漫画の作成過程のシーンでした 

この作品は 幼いころ抱いていた恐れや夢 希望の源を探る旅の物語で 独創性の高いイラストで描かれ イタリアとフランスで大きな評判を呼び 日本でも2017年第10回日本国際漫画賞優秀賞を受賞されました

この日は作者のラウラ・イョーリオ(Laura Iorio)氏とロベルト・リッチ(Roberto Ricci)氏を迎え 日本の漫画家・随筆家ヤマザキマリさんとともに同作品について語り 漫画評論家・翻訳家の小野耕世氏がモデレーターを務めてくださいました 通訳は小池美奈先生でした  イタリア文化会館館長に続き フランス大使館文化参事官のご挨拶があり この場所でフランス語を耳にするのは珍しいことです このあと名古屋 札幌 仙台 大阪 京都等にツアーでまわるそうです

   *      *      *

私は絵本の原画展にも毎年行っているのですが この映像を見て漫画の原画というよりは 絵本の原画のようだなぁと感じたのですが その秘密がこの講演会で解けました

イタリア人の漫画家のお二人が なぜイタリアではなくフランスで成功したか? 日本という「漫画家が食べて行ける国」で食いつないでいると自ら話すヤマザキマリ氏の質問に お二人は 漫画家を志した時からフランスのマーケットを考えていたと 

イタリア人は (本にせよ漫画にせよ) もともとあまり読まない なのでマーケットが小さい
フランスは 日本のような世界で最もビッグな漫画のマーケット程大きくはないが 主にコレクターによって 1ページに7日間もかかるようなカラーで高価な漫画の本が収集されており さらに原画を売る習慣があるとのこと

なのでマリ氏は 今デジタルで描いているので原画を売って儲けることはできないねと(笑) さらにこの6月の日本漫画家学会でのテーマが 「漫画とデジタル」だとのこと(小野氏)

出版は1年で1冊とは!! それで食べてゆけるなんてうらやましいです 日本は月刊誌から週刊誌になった時に漫画家たちがどれほどきつかったか... といっても今はフランスでも4~6か月で1冊と ペースがだんだんと速くなっているそうですが

フランスで出版される漫画本はカラーで 画集のように美しく 新人の持ち込みの時も ストーリーよりもまずは絵にオリジナリティがあり美しいかどうかが見られるそうです 原画も 我が子のように大切なものを売ってしまうのはつらいが生活の為に...とのこと

ちなみに90年代に週刊モーニングの編集長の肝入りで 海外の多くの漫画作品を連載していた時期があり かなりお金もかかったそうですが(その頃私も読んでましたよ~モーニング!!) あれは今や 海外の漫画を研究する人々にとっては大変貴重なものだとのこと 納得です 

← 作成シーンを皆で見る

そして Il cuole dell'ombraの作成シーンの映像を見ながら説明していただきました 表紙(copertina)になんと一か月もかけているのです!! しかもそれでもまだ不満が残ると...この徹底した仕事ぶりに舌を巻きました まるで絵画ですね 絵本の原画もそうですし... お2人でどこを担当するかを見せていただきましたが 2人の手が入っていることを感じさせないようにしているとのこと

ちなみにラウラ氏は惣領冬美 浦沢直樹 そして松本太陽等がお好きとのこと ロベルト氏はローマの漫画専門学校で教えているが 実はフランスの漫画を教えている つまり卒業後はイタリアではなくフランスで働くことを想定しているのですね 
イタリアでは 漫画で食べる必要のない人が趣味のようにして描くか 他の仕事をしながら描くしかないとのこと それでフランスに移住して描くのが現状なのだそうです

マリ先生は ラウラ氏の漫画を見た時 日本の漫画の影響を受けているなと見抜かれたとのこと ラウラ氏が少女時代 まず最初に出会ったのが日本のアニメ そして日本の漫画 そのあとでフランスやベルギーの漫画だったのですね

こうしてお話を伺ってから見るお二人の作品は また先ほどとは違って見えました...

質疑応答では お好きな漫画家 あるいは将来の目標等を尋ねられ マリ氏は天正使節団についていつか描きたいとのことで密かに楽しみです♡

日本 イタリア フランスそれぞれの漫画の エンターテインメントとしての在り方の違いに触れることのできた 私にとっても大変興味深い講演会でした 

il cuole dell'ombraは こちら

講演会は こちら


イタリアブックフェア2018は こちら

* 素晴らしい講演会を開催してくださいましたイタリア文化会館様に 心よりお礼申し上げます


芸術・人文ランキング

にほんブログ村 美術ブログへにほんブログ村

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする