心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

哲学B1 文章講義(第38回目)

2021-01-12 09:36:44 | 哲学

今日は「5  創発特性のトップダウン的働きとその実在性」について説明する。

 

この節は部分と全体のシステム的関係をトップダウンとボトムアップという二つの概念を駆使して説明している。

そして、これは創発の現象を精確に理解するために極めて重要な契機となる。

 

まずトップダウンとボトムアップという二つの概念を正確に理解しよう。

トップダウンとは一つのシステムにおける部分から全体への方向性であり、ボトムアップとは全体から部分への方向性である。

テキストでは例として東京23区と人間の脳の神経システムが出てくるが、23区でも脳神経システムでも全体⇄部分という相互影響によってシステムが成り立っている。

部分→全体という方向性の方が分かりやすいが、創発の現象を理解するためには全体→部分の方向性の方が重要である。

前者は還元ないし還元主義を表し、後者はホーリズムと創発主義を示唆する。

 

全体→部分というトップダウン的影響を考える際に重要なのは、その一つのシステムとそれを取り囲む他のシステムとの関係性である。

東京23区の場合には神奈川、埼玉、千葉、多摩地区という外部との相互浸透をその全体性の理解に取り入れないとならない。

人間の脳の場合には、それを含む身体全体からのフィードバック、周囲の環境、交流する人間ないし人間環境、生活歴といった外在的要素の浸透が脳システムの全体性の構成契機となる。

コロナの拡大ないし拡散やストーカーに悩まされる人の脳の全体的状態と記憶、思考、感情、予期不安などの個々の部分的心的要素の関係を考えれば、

このことはすぐに分かるであろう。

 

そもそも東京特別区の全体性とは何であろうか。

脳の全体性とは何であろうか。

これはそれを構成する部分の理解よりもはるかに捉え難いものである。

そこで、多くの人は部分や還元や分析の方を好み、ボトムアップ的思考に偏向し、創発とそれに関与するトップダウン的影響のシステム論的意味に目覚めることができないのだ。

学問、芸術、文学、経営、政治、スポーツ、芸能プロデュースといったあらゆる分野で独創性や繁栄や成功を実現した人はみな、無意識裡にトップダウン的現象に気配りができていたのだ。

 

         僕たちは三匹で一つだにゃ

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