心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

哲学A1 文章講義(第42回目)

2021-07-12 10:35:30 | 哲学

今日から第8章「哲学と心の科学」に入る。

 

この章の構成は次のようになっている。

 

はじめに

1 心とは何か

2 心についての哲学的考察と科学的研究

3 哲学と精神医学

4 哲学と意識科学

付論(a) 人生におけるマレイン酸フルボキサミンの有用性

付論(b) 笹井芳樹の最後の論文「創発生物学への誘い」について

 

この章は二つの付論があり、長いものとなってるが、内容豊富多で読みやすく面白いので、よく読むこと。

なお、本章における「マイレン酸」というは誤記であり、全部「マレイン酸」に訂正する。

そもそも視覚的には区別しにくいであろう。

 

今日は、とりあえず「はじめに」について説明する。

 

序では、この章が最初の構想では「科学と哲学」になる予定だったが、それではテーマが広すぎるので「哲学と心の科学」に絞ることにしたことにまず触れている。

心の科学とは、心理学、認知科学、精神医学、心身医学などであるが、脳科学も含まれる。

この点は無視されやすいので、注意すること。

脳科学も広い意味での心の科学である。

 

近代の心身二元論の定式化以降、科学、特に自然科学と医学は「心」に関わらないのが本道だと思われてきた。

実験と観察、統計と法則の確率、客観化視点を中核とする科学が主観的現象としての心を取り扱うことなどできない、と思われてきたのである。

この傾向は一九世紀後半まで優勢であり、前世紀の半ばまで西洋の学問界を支配した。

日本においても同様であり、心は科学が取り扱うものではない、と主張された。

しかし、「心理」ならまだよい。

それは心そのものではなくて、意識と行動、特に行動を観察し、分類する科学もどきだからである、というわけである。

で、心の本体、霊的なもの、精神、魂などは科学の外、特に宗教と文学の領域にある、とみなされた。

 

哲学においては意見が二分され、心の科学を推奨するグループとそれをあくまで形而上学的、ないし現象学的に扱うべきだと主張するグループが対立した。

私の立場は自然主義であり、心の科学を積極的に推進しようとするものである。

それを銘記して本章を読んでほしい。

 

なお、精神医学が深く論じられる。

この医学分野は大変な問題児であり、色々と批判が多い。

心身医学もそうである。

学生の中にも精神医学にうさん臭さを感じている人が多いと思う。

その誤解が意外な方向から啓蒙されることになる。

特に付論(a)である。

 

以上を銘記して、全体をまずざっと読み通してほしい。

 

         僕はもう読んで、理解したにゃ。

 


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