(1)石破首相は防衛、災害、農業、地方行政、政策に精通しているといわれるが、国策の経済理論、政策に対してはこれまでの発言から一家言あるとは思えない。安倍元首相は当時少数派のリフレ派の黒田東彦氏を日銀総裁に起用して従来のカネの2倍を市場に供給して長引くデフレ脱却を目指して大規模金融緩和策を実行し、円安株高を生んで大企業、富裕層優遇のアベノミクスを進めた。
(2)経済政策で大きな目的、目標を掲げて独立性の日銀を政府の子会社とまで言って、掟破りの日銀の大量の政府国債買い受けで自らの経済政策のアベノミクスを進めた。当初は株価低迷の中で一気に円安、株高効果を生んで企業収益を好転させたが、政府の増え続ける借金財政、物価高のひずみ、副作用を招くことになる。
(3)石破首相は総裁選から金融所得課税、法人税増税にふれてまだ企業には増税の余地、引き受けはあると述べてきた。経済理論の正論で企業の内部留保はアベノミクス効果で最高を更新し続けて数百兆円といわれて、石破首相の金融所得課税、法人税増税の余地があるとの判断につながっているといえる。
(4)一方で金融所得課税、法人税増税発言の石破首相の登場で市場では警戒感が強まって、東証では一気に日経平均株価が反応して1910円安となった。金融所得課税、法人税増税は経済格差社会の改善に向けて取り得る政府の経済、金融対策ではあり、経済学者のトマ・ピケティも格差社会解消のために大企業、富裕層への課税強化は21世紀の資本論で示しているところだ。
(5)しかし、岸田首相も当初金融所得課税を主張しながら市場が嫌気を示して物価急落を招いて、取りやめた経緯がある。ようやく日銀植田総裁体制で利上げ方針に転じた時だけに、経済の腰を折ることにもつながりかねずに、石破首相が金融所得課税、法人税増税の正論(just reasoning)、正面突破をどう調整するのか、石破首相の経済理論、政策がまだはっきり見えないだけに経済市場原理が試金石となりそうだ。