旅限無(りょげむ)

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オリンピックの裏側で 其の弐

2007-08-09 21:51:08 | 外交・情勢(アジア)
■北京市で盛大に気の早い前夜祭?が終わり、一夜が明けたら米国ワシントンDCでは、アムネスティが中心になって在米中国大使館前で、「人権問題はどうなってんだあ?」と、嫌がらせのシュプレヒコールが上がっていたそうですなあ。米国とも北京政府とも仲良くするなどと、出来もしない事を国是みたいに言い張っている日本政府はどうするのでしょう?

中国共産党・政府は、日中国交正常化35周年に合わせ、9月27日に日中友好7団体の会長らを北京に招待し、記念行事を開催する方針を固めた。複数の日中関係筋が7日までに明らかにした。胡錦濤国家主席や温家宝首相ら、中国首脳と会見する可能性もあるという。
 35周年記念行事では、中日友好協会が日中友好協会(会長・平山郁夫氏)や日本国際貿易促進協会(同・河野洋平衆院議長)、日中友好議員連盟(同・高村正彦元外相)、日中協会(同・野田毅元自治相)、日中経済協会(同・張富士夫トヨタ自動車会長)らに出席を要請している。 
8月8日 時事通信

■「国際社会」だの「国際世論」だのと、何処の誰が言っている意見なのかをまったく検証せずに、妙に世界中が一つか二つの考え方にまとまっていると思い込みたい人達は、自分の好みに合わない声には耳をふさいでいるものですが、五輪後の自画自賛イベントに喜んで参加しようとしているエイライ人がいるのは日本だけかも知れませんなあ。大会ボイコットまで膾炙(かいしゃ)しているというのに、きっと衆議院議長などは、誰も見ていない北京五輪大会「大成功」を祝すスピーチ原稿を、もう書き始めているかも知れませんぞ!米国にはマイク・ホンダという変な日系議員がいて、「南京事件」に関するトンデモ本を真に受けたふりをして、自国の悪行を棚に上げた奇妙な決議案を下院に提出して通してしまいましたが、その裏には選挙区に住み着いているチャイニーズ米国市民票を取り込みたいし、華僑グループが展開するロビー活動に投入される莫大な献金のオコボレを貰おうという貧乏たらしい動機も有るとか……。

■日本国籍を持たない人達にも選挙権を与えよう!と提案している日本の議員も居ますが、今回の参議院選挙でも、いっぱしのジャーナリスト気取りの勘違い元アナウンサーが、選挙権も無い身で「被選挙権」だけを振り回して当選してしまいました。投票した人達は個人的に義理が有るわけでもないでしょうに、単純な同情票を投じたのか、深読みすれば自民党を内部から瓦解させるために、タイゾー君を筆頭とする小泉チルドレンだけでは爆発力に不足を感じて、御本人の無知に付け込んで自爆テロの犯人に仕立て上げようという、アルカーイダ戦法を駆使した結果なのでしょうか?自民党にとって、毒にはなっても絶対に薬にはならない議員になるのは間違いところです。

■コミンテルンをスポンサーにしていた旧社会党とCIAから資金提供を受けていた自民党が「55年体制」という茶番劇を続けてた時代が終わったら、何と北朝鮮系の資金を貰っていた疑惑が掛けられて急に引退した大物議員が与野党に現われたりしえいるのですから、不用意に選挙権を扱うと、マイク・ホンダ議員みたいな政治家が国会内に現われる可能性も有るでしょうなあ。危ない、危ない。


2007年8月6日、国務院新聞弁公室で北京五輪の準備状況を伝える記者会見が開かれた。北京五輪組織委員会の王偉(ワン・ウェイ)執行副主席兼秘書長が出席し、聖火リレーの準備状況について発表した。……北京五輪の聖火リレーは3月下旬に開始され、8月8日の開幕式までおよそ130日間にわたり行われる。リレーに参加する走者は合計で2万1880人ものぼるという。聖火リレーのルートは海外ルートと国内ルートとにわけられる。

■ヒトラーが考案した聖火リレーは、欧州文明の故郷ギリシアの神殿からベルリンまでを、美しいアーリア人の若者によって行われました。ナチスが偽造したアーリア人神話を無知な国民に信じ込ませるパフォーマンスだったわけですが、何故かこの悪習が受け継がれて4年に一度、世界中が古代ギリシアとのつながりを実感?して喜ぶようになってしまいましたなあ。古代オリンピックと近代オリンピックの違いが回を重ねるごとに大きくなって、米国ロサンゼルス大会でビッグ・ビジネスになってからは、まったく別物になっております。歴史の無い国は、こういう粗忽な面を持っています。ご用心、ご用心。

■逆に、異様に長い歴史を持っている!と無茶な事を主張する国の場合は、エスノ・セントリズム(自国中心主義)を繁栄して極端な歴史の曲解に走ってしまいます。日本も長い歴史を持っている国なのですが、東京オリンピックは「復興」をテーマにしたために、恥を晒すような演出は控える事が出来ました。しかし、長野での冬季五輪では、大物演出家が大いなる勘違いを下敷きにした開会式を企画して、非常に危ないところを見せてしまった事があります。地方自治体の長野県に巨額の負債を残し、西武グループのリゾート地が急にアクセスが良くなっただけの長野五輪を多くの日本人が忘れてしまったようです。北京五輪を東京五輪と重ねて、あれこれと気の利いた解釈を披露している人も多いようですが、ロス五輪と長野五輪を引き合いに出した方が、これから起こる事態を理解するには役立つはずです。


海外ルートは「調和の旅」をキャッチフレーズに、シルクロードを主軸に五大陸の19か国および香港・マカオ・台湾地区をめぐる。国内ルートは「熱情を燃やし、夢を伝えよう」をキャッチフレーズに行われ、全国113の都市をまわり、世界最高峰チョモランマをも経由するものになるという。聖火リレーの走者については今年6月23日より選抜がスタートしており、10月にも選考が終了する見通しだという。
8月8日 Record China

■以前、日本テレビがチョモランマ山頂からの実況生中継などという、世界中が呆れ返るような大規模な企画を実現してしまったことがありましたなあ。あれも「愛は地球を救う」とか言う怪しげな電気の無駄遣い偽善番組の一貫だったような気もしますが……。野口君のようにエヴェレストに掃除登山を敢行する人も居れば、何を目的にしているのか分からない登山をする人も居る。それも日本という国の特色なのでしょうか?

オリンピックの裏側で 其の壱

2007-08-09 19:10:18 | 外交・情勢(アジア)
■とうとう北京五輪の開催が1年後に迫ったのだそうで、テレビ画面からも熱気と祝祭気分を盛り上げようとする、矢鱈に真紅に塗り込められた暑苦しい事この上ない天安門の風景が放送されていましたなあ。いくら「行儀良くしろ!」などと言われても、冷房装置の無い北京市内の住宅に暮らす人達は、半裸姿になって少しでも風通しの良い物陰で涼むしか夏を過ごす手立てが有りません。そんな北京の暑気を無理やり思い出させる映像でありました。来年の今頃、本当に世界のアスリートがあの場所に集まって朝から晩まで、あの暑気の中で走り回るのでしょうか?テレビ放映の関係なのか政治的な理由なのかは知りませんが、欧州で勝手に作り上げたスケジュールを世界中に当て嵌めるのはイカガなものでしょう?たった1ヶ月でも開催日程を後ろに下げれば、随分と快適な環境を提供できるでしょうに!?

■1年前を祝う式典では、スーツ姿の人や民族衣装に身を包んで踊る群集の姿が見えましたなあ。無闇に頭が巨大な獅子舞を担当している人達はサウナ風呂の中で「ブート・キャンプ」をやらされているようなものですぞ。こんな所にも人命軽視、人権無視の風潮が透けて見えるような気もしますなあ。何万人も集めて歌って踊って花火を上げて、熱中症の犠牲者は一人も出なかったのでしょうか?テレビのニュース映像では、人間がゴマ粒にしか見えない遠景と、インタヴュー要員として準備されていたとしか思えない市民のアップ映像をつないで放送していましたなあ。あの大掛かりな式典を催すために、この暑い最中に一体、何日間の団体練習をやらされたのでしょう?通例では、参加する市民は昼夜逆転の生活を強いられます。日暮れ時から早暁まで、絶対に失敗しなくなるまで訓練が続いたはずですなあ。昼間は疲れ切って眠り、その日の夜に備えねばなりませんから、参加者の日常生活も仕事もメチャクチャになってしまいます。その流儀で大会本番を乗り切る計画が練られているはずですから、表沙汰にならない経済的・人的被害は莫大なものになるでしょう。

■北京市内の競技施設が開催日までに本当に完成するのか?という基本的な疑問も有るようですが、五輪開催に便乗した悪辣(あくらつ)な土地収用が加速して強制的にホームレスになってしまう家族がどんどん増えているという問題も有ります。犯罪に等しい地上げと追い出しは、バブル時代の東京などとは比較にならないほど情け容赦の無い物のようです。夜中に拉致されたり、食事中に建設機械が解体工事を始めてしまうなどという、被害者の証言が日本でも報道されています。日本のバブル時代に横行した嫌がらせや買収まがいの地上げは、最終的にはヤクザが請け負う構造になっていたわけですが、少なくとも日本の警察や裁判所は住民側に立って組織暴力と対決するのが建て前になっていますが、チャイナは両者の間に明確な区別が無い!というが問題なのでしょうなあ。

■違法な地上げを訴えると、被害者が逮捕されてしまうなどという、カフカの幻想文学みたいな事が現実に起こっているのですから、どれほどの不満が溜め込まれているのやら……。五輪大会を手放しで喜んでいる様子を海外のマスコミに見せてくれる人々には二種類有って、ヤラセ動員に応じている弱い立場の人達と、五輪景気で甘い汁を吸った連中です。汁を腹いっぱい吸った者と、工事現場で雫を舐めた程度の人までいろいろでしょうが……。物事には裏と表があるものですが、チャイナという場所はそれが露骨に表れる特色が有るようです。


2007年8月8日、2008年に夏季オリンピック大会を控える北京は今、市民の公衆道徳向上をめざし、さまざまな対策を打ち出しているが、どれも効果はいまひとつだという。北京市共産党委員会劉淇(リュウ・チー)書記は、「ハード面(建設分野)の環境整備は簡単だが、ソフト面(国民のモラル)の環境改善は困難」として、中国人の悪しき習慣を早急に改める必要性を強調。北京オリンピック組織委員会執行部の蒋孝愚副主席も「北京市民のモラル向上も含む、ソフト分野全般のサービス向上は、北京市にとって最大の挑戦」との見方を示している。

■どんな建設計画を進めているのかは知りませんが、昔の「大躍進」でも上役が喜び、自分の出世に都合の良い報告が提出されたばかりに、巨大なピラミッド型の権力構造を上に上って行く内に、奇跡か神憑りとしか思えない凄まじい数値が積みあがって行ったのです。北京五輪も、信じられない予算と信じられない少人数と信じられない短期間内で、すべての施設が完成しつつある、という報告が集まっているのではないでしょうな?!暢気なギリシア人は、アテネ大会直前まで土木工事をやっていて世界中の五輪ファンをやきもきさせましたが、あの大会では多くの既存施設をリニューアルして使用したので何とかなったようなものの、北京大会は市全体の風景をがらりと変えてしまうような大工事を続けているのですから、本当に間に合うのかどうか?


北京市民の非文明的行為について全国政協の資華ジュン委員は「新4害」と名づけた。それは、ゴミのポイ捨て、列の順番無視、どこでも喫煙しタンやつばを吐く、言葉遣いが悪い、の4行為。これ以外にも、不衛生な公衆トイレや熱狂的中国人サポーターによる暴動行為などが「国家の恥」となるとして、国民への教育の徹底が叫ばれている。はたして北京五輪までに間に合うのか?
8月8日 Record China

■改革開放時代に入ってから、少なくとも北京市内では人々の表情が温和になり、街角の怒鳴り合いや死角のゴミの山など、いろいろと改善が見られました。外資を大規模に導入してインフレ経済政策を進めたのですから、現金収入が急増した人々は殺伐とした生活から、一時的には脱出出来たのです。その後、猛烈な物価高騰が続き、とうとう株バブルと土地バブルの発生を見ているわけですから、以前に比べれば数段上の生活レベルを手に入れた上で、やっぱり人口過多と「安心・安全な」商品の不足でまたまた殺伐とした空気が生まれているようです。北京五輪を開催することで莫大な投資が行われたわけですが、富の分配を受ける階層は二つに分裂しているようです。地方から食うや食わずで工事現場に潜り込んだ人達と、強力なコネを持っている人達です。勿論、前者の分け前はちょっぴりで、後者にはバカみたいな役得が転がり込んでおります。