旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

核戦争は絵空事ではない?

2005-08-03 17:25:42 | 外交・世界情勢全般
■新聞やテレビではあまり取り上げていませんが、一部では大きな注目を集めている大事件が起こったようです。北朝鮮の核兵器廃絶を話し合う目的で六カ国協議が開催される事が決まっていたというのに、チャイナの将軍さんがトンデモない発言をしたそうですぞ!

対米核戦争を警告=中国人民解放軍将軍
【北京15日】中国人民解放軍の朱成虎少将(国防大学教授)は記者会見で、台湾問題に絡んで米国の攻撃を受けた場合、中国は核兵器による報復を加えると警告した。
 会見をカバーしたフィナンシャル・タイムズ紙などが報じたもので、朱少将は「米国が台湾問題で介入し、中国の領域にミサイルや誘導弾を撃ち込んだ場合、中国は断固、核兵器で報復する」と言明。「われわれは西安以東の全都市が焦土と化すことを覚悟している。米国も数百の都市が中国の核ミサイルで灰燼に帰すことを肝に銘じなければならない」と言い切った。
 朱少将は、この発言をあくまで個人的な意見とし、中国政府の立場を表明したものではないと念を押しているものの、人民解放軍将官が核兵器使用の可能性を断言したのは異例。
 この発言について、分析筋は「中国が台湾問題を真剣に考えていることをはっきりと示す狙い」と見ている。〔AFP=時事〕
 
■かつてポンピドー仏大統領に向って、全面核戦争を歓迎すると毛沢東が発言した時代は昔の事だと誰もが思っているのに、栄光有る人民解放軍はその伝統を今も守っているのですなあ。北京の地下鉄に乗ってみれば、その異様な深さに驚くものですが、その手本となったモスクワの地下鉄の深さを知っていれば、それが核シェルターとして設計されているのが分かります。モスクワの地下鉄で動いているエスカレーターの速さは半端ではなくて、慣れない日本人は片足上げたまま間抜けな案山子(かかし)になってしまうほどです。遥かに下を見れば、果てしも無く深い穴に向って落ち込んで行くような錯覚に襲われます。日本も霞ヶ関駅は日本一の深さを誇るそうで、その場所がら万一の場合の備えではなかろうか?と真面目に疑う人々がいますなあ。大日本帝国はトンネル堀りの名人でしたから、帝都東京は知られざる大地下都市でもあったらしく、大江戸線の開通で崩落の恐れが有った地下通路が結果的に地下鉄に模様替えして補強工事が終了したという話も有りますなあ。

■基本的なデータをウェキペディアで見ますと、

戦略ミサイル部隊
中国語では「第二砲兵」という。 総兵力約10万人を有するが、実態は機密のベールに包まれている。 台湾対岸の福建省に大部隊を配置しているとされる。また核兵器搭載のICBM(大陸間弾道ミサイル)(東風2号など)20基以上、中距離弾道ミサイル130基から150基、短距離弾道ミサイル360基以上を保有している。吉林省の通化基地には24発の中距離弾道ミサイルが配備され日本に向けて照準されてある。
という具合ですが、核ミサイルを発射できる原子力潜水艦も持っていますから、「米本土」の前に在日米軍基地周辺が月面のような風景に変ってしまうでしょうし、「西安以東」と米国の主要都市を互いに焼き尽くした後でも、トドメの核を海中に潜ませて置けるというわけで、北朝鮮の核問題が解決しても基本的には核兵器を互いに向け合っている世界の現実を忘れるなよ!という有り難い将軍様の教えなのでしょう。上野公園のパンダだって焼かれるのですから可哀想ですなあ。

■英国から香港を取り戻し、ポルトガルからマカオを奪還したまでは外交交渉で済みましたが、次に予告されている台湾となるとヤヤこしい歴史が邪魔をして話し合いでは何時になったら取り戻せるのかさっぱり分かりません。前任者の江沢民さんは、小泉首相ばりに任期中に台湾を奪還して歴史に自分の名を残そうと思っていたようですが、米国の太平洋戦略が壁になって台湾の国論を二分するところまでしか出来ませんでした。胡錦涛さんは台湾の前に、地下資源の豊かな尖閣諸島を固めて、太平洋への出口を確保する選択をしているようですが、そうなればいよいよ米国との直接対決の可能性が高まるので、早々と、「我々は本気だぜ!」と人民解放軍の意志を明らかにしておく事にしたのかも知れません。この将軍さんは共産党に叱られたとか、失脚したとか、粛清されたとも聞きませんから、良くぞ言った!と褒められているのでしょうなあ。胡錦涛さんが一緒に喜んでいるかどうかは別問題です。

■こんな発言をしたら世界から孤立して袋叩きに合うかと思えば、「我々は決して孤独ではないぞ!」という企画がちゃんと用意されていたのでした。


軍事演習:中露が初めて合同で 中国東部で18日から
 中国とロシアは2日、18~25日の8日間、初の大規模合同軍事演習を中国東部の山東半島周辺海域などで実施すると発表した。
 「平和の使命2005」と名づけた演習について、両国は「第三者を目標にしたり、第三国の利益を損なわない」と説明した。戦略爆撃機による巡航ミサイルの発射訓練や両国海兵隊の上陸演習を行う予定で、日米安保体制へのけん制や、中国の台湾武力侵攻を想定した演習との観測も出ている。
 会見したロシア陸軍総司令部のモルテンスコイ副司令官によると、演習は中国側の提案で計画された。日本政府の05年版「防衛白書」は、中国の国防費の大幅増や軍近代化に懸念を示している。中露の軍事協力拡大に周辺国で「中国脅威論」が高まる可能性がある。
 実戦形式が中心で、両国の陸海空3軍から計1万人近くが参加する。ロシアの約1800人以外は中国側の参加だ。中国の一部部隊がテロ集団などを想定した「敵部隊」を演じ、中露両軍で撃退するシナリオだ。実戦演習に先立ち、ロシア極東のウラジオストクで中露両参謀本部による机上演習も実施する。
 演習は、テロ防止などを目的とする中露と中央アジア4カ国でつくる上海協力機構の国防相らに加え、同機構への参加を希望するモンゴル、パキスタン、インド、イランも視察する予定だ。
 毎日新聞 2005年8月2日

■因みに巡航ミサイルは核弾頭搭載可能ですし、視察に来るパキスタンとインドは既に核保有国で、イランは間も無く仲間入りしそうな国です。中国が「第三国の利益を損なわない」と言っているのは、「台湾は第三国ではないぞ!」という意味を含んでいます。上海協力機構は内陸の中央アジア諸国と中国・ロシアが結成した組織ですから、テロ集団との戦いを想定していると言いながら「上陸演習」が含まれているのは奇妙です。ですから、この場合のテロリストは「一つの中国」を認めない分裂主義者を意味していて、彼等は海を渡って行かないと攻撃出来ない場所にいる事になりますから、仮想上陸地点は台湾の西海岸でしょうなあ。もしかすると、韓国を東西から襲うような事態も想定しているかも知れませんし、ウラジオストクで図上演習するのなら、北海道の地図も使われるかも知れませんなあ。

■核を搭載した巡航ミサイルと中距離ミサイルを隅田川の川開きみたいに打ち込まれたら、当たったらラッキーな馬鹿高い迎撃システムでは対応のしようも無いので、強襲揚陸艦艇が押し寄せた時には白旗を揚げるしかないでしょうし、政権中枢を焼かれていたら、和平交渉をする代表まであちらの御指名に従わねばならないでしょう。昔、ソ連が東ヨーロッパを呑み込んだ懐かしいやり方ですなあ。六カ国協議が開催される裏側やら周辺で、本物の核兵器をちらつかせる品評会が開催されるようなものですから、いよいよ広島の平和公園に刻まれた「過ち」は近付いているのかも知れませんぞ。だからと言って、原爆慰霊碑に八つ当たりなんかしては行けません。

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エチゼンクラゲで考えた事

2005-08-03 15:55:16 | 外交・情勢(アジア)
■今、日本海沿岸の漁民の皆さんは、「エチゼンクラゲ」の大量発生で大いに困っています。過去最悪の発生を見た年の10倍になる勢いだそうです。大切な網を破られるし、せっかく獲った魚はクラゲの毒で売り物にならなくなるそうです。島根県や鳥取県の漁港には、クラゲで埋まった海面を恨めしく睨みながら本来なら大忙しで出漁しているはずの自慢の船がやる事も無く係留されているとの事です。夏の終わりにはクラゲの大群は更に巨大化して津軽海峡を通過して、今度は千島海流に乗って太平洋岸を南下するのだそうです。ロシアの砕氷船ならぬ「砕クラゲ船」でも作らないと、漁場がダメになってしまいそうですなあ。

■食べるにしても、そんなに沢山の需要は無いそうですから、本当に役に立たない困った大群なのです。巨大な熊手のような装置を付けた大きな船でクラゲを落ち葉のように一箇所に集めて処理でもしないと、日本の漁業は壊滅してしまうのではないでしょうか?何でも、黄海あたりで生まれたクラゲが北上して、北京や天津からの雑排水で富栄養化が激しい渤海湾でプランクトンをもりもり食べて元気に育ってから日本海に入って来るらしいのですが、今のところ、決め手となる方策はまったく無いとの話ですなあ。やりきれない表情の漁師さん達の姿には堪らない気分になります。クラゲを好物にしている海亀さん達が負けずに大量発生してぱくぱく食べてくれれば良いのでしょうが、立派な海亀は甲羅が欲しいと乱獲されて数が激減中ですから、希望は持てませんなあ。

■行き先は波任せのクラゲですから、大発生するとばらばらにならないで団体行動になってしまいます。エチゼンクラゲの大発生は、地球温暖化の結果との説も有りますが、環境問題に無神経な中国の経済成長も大きな原因となってもいるようですから、中国沿岸の海水がきれいにならないと解決されない問題のようです。京都議定書でも「発展途上国」の身分でほとんどの規制を受けずに済んでいる中国ですから、大気も海水も汚し放題の時代がまだまだ続きそうですなあ。問題がクラゲだというので、政府は農林水産省に押し着けていれば済むのでしょうが、これが人間になったらどうなるのでしょう?北京で開催中の六カ国協議に北朝鮮が参加した最大の理由が、不作による食糧事情の悪化だとする説があります。そして、それを裏書きするように、飢えに耐えられないと言って韓国の岸辺にエンジンも無いオンボロ船が続々と漂着中です。日本の海上保安庁の皆さんのように優しい応対はしない韓国の国境警備隊が待ち構えているのを承知の上で着の身着のままで海に出るようです。

■海流に流されるクラゲの大群は中国・韓国の領海を楽々と突破して日本海沿岸を北上中なのですから、北朝鮮の東側の海岸から同じような船が続々と船出したら、日本海岸に漂着するのはクラゲの大群ではなくて大量の難民になる可能性が有るのではないでしょうか?その時、日本政府はどう対処するのか、今のうちに決めて置いた方が良いのではないでしょうか?韓国は無制限に脱北者を迎え入れる政策を変更しているようですから、日本に足止めされる人々がどんどん増えるような事態も考えられますなあ。

■911テロ以降、すっかり有名になったキューバに有る米国のグアンタナモ基地について調べていましたら、非常に参考になる事が分かりました。


グアンタナモ基地周辺では基地内部からキューバの哨兵に対する発砲事件が頻発する緊張状態が続いていたが、1994年に手作りのいかだなどに乗っておよそ12万人の大量難民が流出した「バルセーロ事件」が起り、当時のクリントン政権との間で移民協定が結ばれ、米国は難民を送還し、キューバは難民の脱出を阻止すると約束した。米国は他のラテンアメリカ諸国の移民には厳しい取り締まりを行っているが、キューバ難民については無条件に受け入れ、1年と1日経れば自動的に永住権を与えていた。それが難民流出を引き起こしていたが、この移民協定によって革命以来、対立を続けてきた両国の関係に変化が生じた。
 この時、米国は一部の難民をグアンタナモ基地に移送したので、基地では米国への移住を求める難民の暴動が起きた。その一方で、キューバに戻ろうとする者も出たり、逆にキューバ側から基地内に駆け込もうとする者も有った。しかし、周囲は地雷原で脱出者を保護しようとして、キューバ兵士の身が危険にさらされたこともあった。大雨と洪水のために地雷や標識が流されてしまい、非常に危険な状態で、互いに情報を交換する必要があるということになり、基地の内と外をつなぐ「ホット・ライン」が設けられた。
 99年、米国側がコソボの難民を基地に収容することを歴史上初めて事前通告した。単なる通告だったが、画期的な変化であった。しかし、実際には難民の移送は行われなかった。そして、今回、アルカイダの「捕虜」の移送についても「事前通告」があり、保安要員を増員することも伝えられた。これに対し、キューバ側は受け入れを表明し、マラリア対策など医療面での協力を申し出たことはマスコミ等で伝えられた。アルカイダ兵士が基地から脱出した場合には基地に送還される。

■テロ容疑者を手荒に取り調べていると悪い噂で有名になったグアンタナモ基地ですが、軍事基地以外にも難民収容所として利用されている歴史が有ったのですなあ。ここまでは外国の話ですが、六カ国協議が決裂したり北朝鮮側に大幅な譲歩を強要したりした場合、食糧も資金も電気も貰えない事に失望して怒り狂った北朝鮮は、乏しい電気を地下工場の遠心分離機に集中させてウラニウム原爆をせっせと作り続けるでしょう。ますます食糧事情とエネルギー事情は悪化しますから、飢餓の群れが大規模な脱出を試みるでしょう。逃亡する人民を追い回す余裕が無くなった平壌政府は、ヤケを起こして「逃げたい奴は逃げれば良い!」と開き直って「難民兵器」として積極的に追い出すかも知れません。中朝国境には国境警備隊だけではなく既に人民解放軍が駐留しているという情報が有りますから、射撃練習の標的になってしまいます。

■今までは、北朝鮮を刺激するという有り難い理由で、同胞の脱北者を大々的に受け入れなくても済んでいた韓国ですが、大量難民の発生となれば、「同胞を救う」という看板通りの行動を採らねばならなくなりますなあ。最近の日韓関係を参考にしますと、この大量難民の発生も、元はと言えば日本の責任だ!ときっとデモが起って日の丸が沢山燃やされて、大泣きしながら難民問題を日本に押し付ける運動が起るのではないでしょうか?大物亡命者だった黄長(ファン・ジャンヨプ)さんは、前々から金生日政権を人権問題で崩壊させるために、国境近くの中国側の領土に大規模な難民キャンプを作って受け入れろ!と主張していましたが、そんな事をされたら高句麗の悪夢が蘇るので、中国は早々と国境の封鎖を強めたわけでしょうなあ。

■そうなると、日本と韓国とが協力して何処かに難民キャンプを作らねばならなくなります。果たして、韓国が同胞のために自国領内にそれを作る決断をするかどうかは見物ですが、ワールド・カップ・サッカーの共同開催の前例などを引いて、日本を巻き込んで多大の協力を要請して来るかも知れませんなあ。ぞろぞろと難民が脱出してもキューバは社会主義政権のままで元気ですから、北朝鮮の人口を考えれば、数十万人の難民が逃げ出しても丁度良い厄介払いが出来たと言って喜ぶくらいの事でしょうが、押し付けられた方はエライ目に遭いますぞ!韓国は基本的な読み書きを身に付けさせて、定住までの猶予期間の生活費一切を与え、就職の斡旋から家族の生活支援など膨大な資金が必要となります。これまでに亡命して来た同胞達に手を焼いて嫌気も差しているので、自分だけで全てを背負い込もうなどとは絶対に考えないでしょうなあ。

■そうなると、何処かに極東版のグアンタナモ基地を作らなければならなくなります。しかし、そんな施設を作るとあちこちから難民が湧き出して流れ着きそうな気がしますなあ。経済成長が著しい中国の国内には実質的には既に経済難民が大量に発生しておりますし、旅行者・研修生・留学生などの身分で出国する人々の中には実質的には経済難民同然の人々が紛れ込んでいるのですから、正式な受け入れ施設などが出現したら、中国バブルに罅(ひび)が入っただけで先を争って入所しようとするでしょうなあ。ですから、作っても大変だし作らないともっと大変な難民収容施設の研究を早めに始めておかないと、ドサクサに紛れてやって来る困った連中のおかげで、日本も韓国も『スカー・フェイス』のような映画が何本も作れるような事になってしまいそうです。社会主義国には仕事をしてもしなくても食っては行ける体質が染み込んだ人々に混ざって、何故かマフィアが大量発生するものですから、どちらの人でも扱いには苦労しますなあ。

■日本には熱狂的な人権思想家が沢山いますから、大いに難民を受け入れるように運動する人が出るでしょうし、手厚い保護と援助を当然のように政府に要求するでしょう。しかし、極楽のような生活は提供できませんから、必ず難民の二世や三世の中から逆恨み気分が生まれて、悪い奴が焚き付けるとテロリストになってしまうというロンドンで起った事と同じ事が繰り返されるのでしょうか?楽しい話ではありませんが、準備だけはしておかないと本当にエライことになりますぞ!そのシミュレーションの結果、やっぱり北朝鮮には徹底的に援助を続けて難民問題が起らないようにするべきだ、という結論が出るかも知れませんが、そうなるとますます付き合い方が難しくなって拉致問題は解決どころか、どんどん邪魔者扱いされるようになるでしょう。大量難民はエチゼンクラゲよりもずっと扱い難いものだという事を、クラゲの大群を見ながら考えております。

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キューバがやった事

2005-08-03 14:33:35 | 歴史
■六カ国協議が予想通りの宜しくない流れになっているようです。拙ブログ『だから言ったじゃないの』で心配した通りに、共同文書には「拉致」でも「人権問題」でもなく、「日朝平壌宣言」に従って日本は頑張ってね!という一文を入れてお仕舞いという落とし所に追い詰められているとの報道が有りました。調印した当事者だった日本の代表は、それでは不足だ!心配だ!とゴネているというのですから、目も当てられませんなあ。こんな使い物にもならない作文を書いた張本人と思われる田中均さんが外務省を退官して、国際交流基金だかの「研究員」になると発表されたのが同じ日だというのは意味深です。「ゴメンナサイ」の一言も無く、石をぶつけられるでもなく、まだ税金から給料を貰って日本外交を研究をして下さるとは、嬉しくて涙が出ますぞ!

■貰える物は残らず貰って、失う物はほとんど無いという結果を得る為に北朝鮮はいつもの二枚舌と粘り腰で乗り切ろうとしているようですが、日本に恩を売っておこうと米国は「人権問題」の一言くらいは入れるように努力するかも知れませんが、元々「平壌宣言」にはこの一言が無いのですから北朝鮮側は絶対に受け付けないような気がします。あの宣言から「人権問題」の意味を汲み取ろうとすると、昔の日本が人権無視の悪行を山ほどやったという話にしかならないのですから、せっかくそんな「名文」を宣言にしたのですから、今回は核廃棄に関する文言だけで逃げ切ろうとするでしょう。日本の佐々江さんは米国のヒルさんに泣きついているかも知れませんなあ。

■しかし、核問題と関係の無い「人権問題」を余りしつこく追求すると、それを逆手に取って悪用される事が有るよ、とヒルさんは自分の国がキューバにしてやられて苦い思い出を佐々江さんにしんみりと話して上げたかも知れないのです。海を隔てて向かい合う社会主義国という共通性を考えれば、日本を米国、北朝鮮をキューバに当て嵌めると、案外この空想は現実化する可能性が高いようにも思えるのです。


1980年、同性愛者、精神的に病んでいる人々、及び、一部の犯罪者たちを国外追放とした。12万5千人のキューバ難民が発生した所謂マリエル事件である。

ハワード・ホークス監督の名作『暗黒街の顔役』をオリヴァー・ストーンが脚本、ブライアン・デ・パルマが監督して1983年にリメイクした『スカー・フェイス』という恐ろしい映画が有りますが、その冒頭には実写フィルムが使われていましたなあ。それが「マリエル事件」の様子を実に良く教えてくれます。少人数が、ぽつりぽつりとキューバから海を渡って来るたびに、難民として手厚く保護して外交的な圧力にしていた米国でしたが、一挙に12万人がフロリダ半島に殺到したのですから、対処に仕方を間違ってしまったのも仕方が無かったのでした。その結果、マイアミを中心としたフロリダが高級リゾートの地ではなく米国でも有数の物騒な場所に変ってしまったのでした。

■少しばかり、米国とキューバの関係を振り返って見ると、


1977/06/03,昭和52/06/03
アメリカとキューバが双方の首都に代表部を置くことで合意。

※1980年「マリエル事件」発生。

1986/03/11,昭和61/03/11
キューバと北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が友好協力条約に調印。
1989/04/02,平成1/04/02
ゴルバチョフ書記長がキューバを訪問する。
1989/04/04,平成1/04/04
キューバを訪問中のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が、ソ連・キューバ友好協力条約に調印。
1991/09/11,平成3/09/11
ゴルバチョフ大統領、ソ連軍のキューバ全面撤退の交渉を開始することを表明。
1992/01/03,平成4/01/03
キューバ市民34人が、ヘリコプターでアメリカに亡命する。
1992/09/05,平成4/09/05
キューバ、カストロ首相がフラグア原発の建設を断念することを発表する。
1993/02/24,平成5/02/24
キューバで、共産党の1党独裁のもとで革命史上初の直接・秘密投票による人民権力全国会議(国会)議員選挙の投票が行われる。
1993/12/22,平成5/12/22
キューバのカストロ国家評議会議長の実の娘アリナ・フェルナンデス(37)がアメリカに亡命する。
1994/08/19,平成6/08/19
クリントン大統領が、公海上で救出したキューバ難民について、政治難民を除いてアメリカへの入国を認めない政策に転換することを表明。
1994/08/20,平成6/08/20
クリントン大統領が、キューバ系米国人からキューバ国内の親戚への現金の送金を禁止するなど、対キューバ圧力強化策を発表する。
1994/08/24,平成6/08/24
キューバのカストロ国家評議会議長が、クリントン大統領のキューバ難民急増問題への厳しい対応に対して非難し、難民の国外流出を事実上容認する姿勢を示す。

※バルセーロ事件発生。

1994/09/09,平成6/09/09
アメリカとキューバが、こじれていた難民流出問題で話し合い合意。1995/09/05,平成7/09/05
キューバの人民権力全国会議(国会)で、外国企業が同国内に100%出資の事業を行うことを認める外資法改正案が成立する。
1995/11/29,平成7/11/29
キューバのカストロ議長が初の中国訪問のため北京入りする。
1996/02/24,平成8/02/24
キューバからアメリカへ亡命してくる難民を支援するため活動している小型飛行機2機がマイアミ沖でキューバの戦闘機に撃墜され、4人が行方不明に。
1996/02/28,平成8/02/28
キューバ空軍による米民間機撃墜事件について、キューバのロバイナ外相が国連本部で記者会見し、「民間機は数度の警告を無視し撃墜するしかなかった」と述べる。米政府のキューバ軍機の交信は「ウソのものだ」と主張。
1996/07/07,平成8/07/07
キューバ軍将校のホセ・フェルナンデス中佐がキューバ国営航空機をハイジャックし、キューバ本島南端のグアンタナモ米空軍基地に強制着陸。
1996/08/19,平成8/08/19
キューバ政府が米利益代表部で人権問題を担当している米国人外交官に対して国外退去を命じたことに対抗して、アメリカ政府がワシントン駐在のキューバ人外交官1人を国外退去とする。
1997/03/03,平成9/03/03
リマの日本大使公邸人質事件でドミニカを訪問していたフジモリ大統領が、ドミニカを出発してキューバのハバナに到着。空港にカストロ首相が出迎える。会談後、カストロ首相は、日本とペルー両国政府の正式な要請があれば公邸を占拠しているMRTAのメンバーを受入れる用意があると表明。
1997/05/12,平成9/05/12
キューバとアメリカの間のフロリダ海峡単独遠泳に挑んでいたオーストラリア人女性のスージー・マロニー(22)が、ハバナを出発して24時間半、180キロ離れたキーウェストに到着し横断に成功。

■ドラム缶で組んだ筏(いかだ)でも渡れる狭い海峡は、運が良ければ泳いでも渡れるというわけですなあ。韓国のペクリヨンドという小さな島に、北方限界線(NLL)を越えてボロ船で北朝鮮の難民が続々と漂着しているという報道も有りますぞ!今のところは、飢えと圧政に絶望して逃げ出す人民を罰している北朝鮮ですが、万一、キューバのカストロの真似をして、強制収容所や刑務所を開いて「無駄飯喰い」でしかない人々を海岸に追いたてたらどうなるのでしょう?相手は「人権」に含まれる移動と居住場所の自由選択権を主張して来るでしょうから、「人権問題」を言い立てている側としては、大規模な掃討撃沈作戦は実施出来ません。更に、韓国に曳航して行こうにも、全員の保護を受け入れるとは限らないのですなあ。「しばらく預かっておいてね。」と言われたら日本はどんな交渉をするのでしょう?

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