2005年1月18日、ライス大統領補佐官が国務長官指名承認を審議する上院外交委員会の公聴会で北朝鮮を「圧制の拠点」と批判。
■イラクで躓いていた米国の新任国務長官としては、北朝鮮を「外交的に」屈服させて見せたい誘惑に駆られたのでしょうが、残念ながら北朝鮮はそれを嘲笑うかのように地下核実験を実施してしまいました。
2005年2月10日、北朝鮮が「6者協議参加の無期限中断」を発表し、「自衛のための核兵器を製造した」と宣言。
今となって見れば、この時の「宣言」は核実験の準備が整った事を正直に公表していたと思われます。イラクに全力を投入していた米国は、北朝鮮の核開発の詳細を知らないまま金正日将軍様の術中にはまってしまったのでした。クリントン大統領はアフリカと旧ユーゴスラビアの実情を知らずに下手な干渉をして大失敗しましたが、イラク攻撃と中東民主化しか考えていなかったブッシュ政権は、北朝鮮に振り回される結果になってしまったようなものです。
2005年4月27日、ラムズフェルド米国防長官が上院公聴会でNPT違反の北朝鮮とイランを念頭に、「地下施設を攻撃する新型核兵器の研究開発の必要性」を訴える。
■03年末、ブッシュ政権はそれまでに禁じられていた「使える核」の研究開発を解禁する決定をしています。クリントン政権時代の94年度の国防歳出権限法(スプラット・ファース条項)によって、高性能火薬換算で5キロトン未満の小型核の研究開発を禁じていたのですが、03年11月末にブッシュ大統領はこの小型核の「研究費6000万ドル」を計上した次年度の国防予算に署名しました。小型核は戦術核とも呼ばれてミサイルや魚雷に搭載して通常兵器と同じように使用される事を前提として開発されたものです。大砲の弾に仕込んで数十キロ先の敵陣に打ち込むことさえ可能ですが、そんな物を発射した方も被曝してしまいますから、もっぱら戦術核ミサイルか核魚雷が中心となって配備されているようです。
■しかし、ラムズフェルド国防長官が言っている「地下施設を攻撃する新型核兵器」というのは、地中貫通型爆弾に核弾頭を搭載した兵器を指しています。何でもかんでも地下に埋めてしまっている北朝鮮を攻撃するとなると、この種の兵器が必要になると考えられているのですが、実は、この兵器は英国が発祥なのです。第2次大戦中に「グランドスラム」「トールボーイ」という2種類の超大型爆弾を開発した英国は、ドイツ軍が岩盤を刳(く)り貫いて造った潜水艦基地やV号発射基地に向けて、合計854発を投下したと言われています。「トールボーイ」は重さが5トン以上もあり、高度5500メートルから落せば音速を超える勢いで地面に突き刺さり、その頑丈な弾体を利して地中10メートルまで潜り込み、遅延信管によって爆弾に仕込まれた2400キロもの炸薬を爆発させる兵器でした。これを使うと凄まじい衝撃波によってちょっとした町なら1ブロック全体が崩落して廃墟となるそうで、「ブロック・バスター」などと言う恐ろしいニック・ネームが付けられました。
■「グランドスラム」という景気の良い名前が付いた方は、更に大きくて頑丈に作られていて、重量は10トン、炸薬量は5トンという化け物でした。これを使えばどんなにぶ厚い岩盤でも破ってしまったそうです。この英国製爆弾を真似て米国が作ったのが、「GBU-28」通称バンカー・バスターです。「地下掩蔽壕・破壊兵器」とでも訳すのでしょう。米国がこの兵器に注目したのは最近のイラク相手の湾岸戦争の時だそうです。朝鮮戦争やヴェトナム戦争では、原爆使用を我慢して通常爆弾とナパーム弾や枯葉剤をばら撒いていた米軍でしたが、イラクにはジャングルは無いし、米国自身が援助して作った地下施設がたくさん有りましたから、地中貫通兵器を慌てて開発したそうです。