■10月12日、中国の唐家セン国務委員が胡錦濤国家主席の特使として訪米して、ブッシュ大統領と会談しました。同日の朝日新聞に掲載された韓国と中国の研究者インタヴュー記事です。
韓国西江大学副教授・金英秀
「北朝鮮の行為はいつもの瀬戸際外交ではない。積極攻勢の一手だ。再開しない6者協議やミサイル発射による非難の高まりで不利になった状況を、一気に盛り返す奇襲だ。11月に中間選挙を控えた米国を無力化し、ネオコンをかき乱す、計算ずくの戦略だといえる。……韓国内部での葛藤は深刻化すべきだ。当面、韓国ができることは何も無いと言える。金総書記は今、国際的な状況が悪くなればなるほど結構だと考えているのではないか。再びミサイル発射や核実験など強硬手段に出て、或る日突然、「核不拡散条約(NPT)に復帰する」「米と外交関係を樹立しよう」などと重大発言をして、更に掻き回す可能性も高いと見ている」
■「中間選挙」でブッシュ政権を無力化するという目標を立てていたのなら、見事に狙いは的中したと言えるでしょう。ネオコンも退潮も著しく、リーダー格のラムズフェルド国防長官が更迭されたのですから、こちらの目的も達成されたと言えるかと言うと、ネオコンの主張は中東問題の解決を中心にしたもので北朝鮮問題とはほとんど関係が有りません。新しい国防長官に就任したゲーツ氏は、ブッシュ父政権でCIA長官を務め、米国内で最も早く北朝鮮の核兵器開発に警鐘を鳴らした人物とされています。米国をイラクの泥沼に沈めておいて東アジアに手が回らない状態にして置いた方が良かったかも知れませんなあ。更に、「韓国ができることは何も無い」というのも正確な分析でした。金副教授のような優れた分析力を持っている学者が発言力を増して行くのなら、韓国の将来も明るいような気がします。もしも金副教授の予測が的中したら、近々、ミサイル実験と核実験が行われる事になるわけですが、これは当たって欲しくない予言ですなあ。
韓国政府は13日、北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議を受け、制裁委員会に提出する決議履行計画を発表した。韓国政府は決議で言及された大量破壊兵器関連物資の輸出禁止措置などは既に実施しているとの認識の下、実質的な追加的制裁を行わず、既存の措置を補強していく方針を明らかにするにとどめた。
(時事通信) - 11月13日
■太陽政策を捨てずに側近閣僚を次々に交代させて内閣を何とか維持している盧武鉉政権ですが、今更、米国主導の北朝鮮に対する制裁措置の一角に参画するわけには行きますますなあ。北朝鮮との関わりの深さが目立った側近を数名辞職させたところで、内閣中枢にまで及んでいると言われる金日成思想に感化されている人々を一掃する事など不可能でしょう。このまま事態が悪化の一途を辿れば政権の支持率は限りなく低下し凄まじい権力闘争が始まるかも知れません。唯一の希望は、米国政府が方針を転換して2国間協議に応じ、金正日体制を維持する援助を約束してくれるようになるのを待って、太陽政策の正しさを声高に叫んで見せる事なのでしょうが、たとえ民主党政権の誕生まで事が進んでもKEDOの大失敗を再び繰り返すほど米国は間抜けではないでしょう。
■次は何度も登場して貰っている中国復旦大学国際問題研究院副院長の沈丁立教授が発表した核実験直後の分析です。
「なぜ、北朝鮮が9日に核実験に踏み切ったのか。中ロ両国と日米韓3箇国は、核開発反対という立場では一致するが、制裁の程度については必ずしも一致していない。北朝鮮はこの不一致を巧みに利用した。……8日は日中首脳会議。北朝鮮は核実験で日中関係の修復を促したくはないし、中国を刺激したくもないため、実行しなかった。中朝関係が好ましくない今、中国を不機嫌にさせたくない。翌日なら、中国が不機嫌になる程度は8日ほどではない。……北朝鮮の核保有で中国にメリットが無いわけではない。米国は核保有国に武力行使したことはない。……北朝鮮の軍事力が米軍を朝鮮半島に引き付ければ、台湾問題を抱える中国にとっては米軍の圧力が軽減されることにもつながる。……中国は限定的な制裁しかできず、今回の核実験は北東アジアに新たな軍事的な緊張をもたらすことになるだろう。」
■日中首脳会談の「翌日なら」中国が不機嫌になる程度が低いという分析は甘かったようです。面子を丸潰れにされた胡錦濤総書記の怒りは相当に強烈らしく、国境の緊張、経済制裁の強化と手回し良く北朝鮮の締め上げを強めています。沈教授ばかりでなく多くの専門家が口を揃えて「米国は核保有国に武力行使しない」という原則を引っ張り出しますが、それが永久に変わらないという保証は無いでしょう。それに、北朝鮮の核武装が台湾問題とリンクした場合、中国に対する米国の軍事圧力が軽減されるという読みも危ういものが有りそうです。グアム島基地と沖縄の攻撃力が増したら、それは北朝鮮と台湾の両方を睨んで三角形の軍事的緊張は一段と高まるのではないでしょうか?
韓国西江大学副教授・金英秀
「北朝鮮の行為はいつもの瀬戸際外交ではない。積極攻勢の一手だ。再開しない6者協議やミサイル発射による非難の高まりで不利になった状況を、一気に盛り返す奇襲だ。11月に中間選挙を控えた米国を無力化し、ネオコンをかき乱す、計算ずくの戦略だといえる。……韓国内部での葛藤は深刻化すべきだ。当面、韓国ができることは何も無いと言える。金総書記は今、国際的な状況が悪くなればなるほど結構だと考えているのではないか。再びミサイル発射や核実験など強硬手段に出て、或る日突然、「核不拡散条約(NPT)に復帰する」「米と外交関係を樹立しよう」などと重大発言をして、更に掻き回す可能性も高いと見ている」
■「中間選挙」でブッシュ政権を無力化するという目標を立てていたのなら、見事に狙いは的中したと言えるでしょう。ネオコンも退潮も著しく、リーダー格のラムズフェルド国防長官が更迭されたのですから、こちらの目的も達成されたと言えるかと言うと、ネオコンの主張は中東問題の解決を中心にしたもので北朝鮮問題とはほとんど関係が有りません。新しい国防長官に就任したゲーツ氏は、ブッシュ父政権でCIA長官を務め、米国内で最も早く北朝鮮の核兵器開発に警鐘を鳴らした人物とされています。米国をイラクの泥沼に沈めておいて東アジアに手が回らない状態にして置いた方が良かったかも知れませんなあ。更に、「韓国ができることは何も無い」というのも正確な分析でした。金副教授のような優れた分析力を持っている学者が発言力を増して行くのなら、韓国の将来も明るいような気がします。もしも金副教授の予測が的中したら、近々、ミサイル実験と核実験が行われる事になるわけですが、これは当たって欲しくない予言ですなあ。
韓国政府は13日、北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議を受け、制裁委員会に提出する決議履行計画を発表した。韓国政府は決議で言及された大量破壊兵器関連物資の輸出禁止措置などは既に実施しているとの認識の下、実質的な追加的制裁を行わず、既存の措置を補強していく方針を明らかにするにとどめた。
(時事通信) - 11月13日
■太陽政策を捨てずに側近閣僚を次々に交代させて内閣を何とか維持している盧武鉉政権ですが、今更、米国主導の北朝鮮に対する制裁措置の一角に参画するわけには行きますますなあ。北朝鮮との関わりの深さが目立った側近を数名辞職させたところで、内閣中枢にまで及んでいると言われる金日成思想に感化されている人々を一掃する事など不可能でしょう。このまま事態が悪化の一途を辿れば政権の支持率は限りなく低下し凄まじい権力闘争が始まるかも知れません。唯一の希望は、米国政府が方針を転換して2国間協議に応じ、金正日体制を維持する援助を約束してくれるようになるのを待って、太陽政策の正しさを声高に叫んで見せる事なのでしょうが、たとえ民主党政権の誕生まで事が進んでもKEDOの大失敗を再び繰り返すほど米国は間抜けではないでしょう。
■次は何度も登場して貰っている中国復旦大学国際問題研究院副院長の沈丁立教授が発表した核実験直後の分析です。
「なぜ、北朝鮮が9日に核実験に踏み切ったのか。中ロ両国と日米韓3箇国は、核開発反対という立場では一致するが、制裁の程度については必ずしも一致していない。北朝鮮はこの不一致を巧みに利用した。……8日は日中首脳会議。北朝鮮は核実験で日中関係の修復を促したくはないし、中国を刺激したくもないため、実行しなかった。中朝関係が好ましくない今、中国を不機嫌にさせたくない。翌日なら、中国が不機嫌になる程度は8日ほどではない。……北朝鮮の核保有で中国にメリットが無いわけではない。米国は核保有国に武力行使したことはない。……北朝鮮の軍事力が米軍を朝鮮半島に引き付ければ、台湾問題を抱える中国にとっては米軍の圧力が軽減されることにもつながる。……中国は限定的な制裁しかできず、今回の核実験は北東アジアに新たな軍事的な緊張をもたらすことになるだろう。」
■日中首脳会談の「翌日なら」中国が不機嫌になる程度が低いという分析は甘かったようです。面子を丸潰れにされた胡錦濤総書記の怒りは相当に強烈らしく、国境の緊張、経済制裁の強化と手回し良く北朝鮮の締め上げを強めています。沈教授ばかりでなく多くの専門家が口を揃えて「米国は核保有国に武力行使しない」という原則を引っ張り出しますが、それが永久に変わらないという保証は無いでしょう。それに、北朝鮮の核武装が台湾問題とリンクした場合、中国に対する米国の軍事圧力が軽減されるという読みも危ういものが有りそうです。グアム島基地と沖縄の攻撃力が増したら、それは北朝鮮と台湾の両方を睨んで三角形の軍事的緊張は一段と高まるのではないでしょうか?