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旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

続・北の原爆50年史 其の参拾八

2006-11-24 12:42:21 | 歴史

「朝鮮族2人による濃縮ウラン密売」事件について、中国の捜査当局が「ウランでも朝鮮族でもない」とし、前言を翻した。北京の公安関係者は23日、「濃縮ウラン1キロを売ろうとした中国人2人を逮捕した」という20日の中国マスコミの報道について、「犯人は朝鮮族でロシアのものとみられる濃縮ウランを押収した」と語っていた。しかし24日にこれを確認した朝鮮日報の報道で波紋が広がると、公安関係者は「2人の犯人が中身を濃縮ウランと誤解して証言したことが誤って外部に伝えられた」と語った。当地の人民検察院の斉捷氏も当時は「上から一切の取材に応じるなとの指示を受けた。朝鮮族でもウランでもない」と言葉を変えた。しかし後に「濃縮ウラン1キロを売ろうとした中国人2人を逮捕した」との情報を直接提供した人物が斉氏であることが確認された。
朝鮮日報 10月26日

■ほんの1箇月前の報道ですが、この続報は無いようです。北朝鮮の物資不足は極限状態だと言われていまして、電気エネルギーなどの動力源は断続的にしか供給されず、やっと電気が来ても工場の機械は部品を盗んで売り飛ばす者が跡を絶たないので、出勤している人達も最初から生産活動をする心算がないとか……。中には、核関連施設で働いている者の中にも、自分達が扱っている物の恐ろしさを知らずに、部品ばかりかウランの粉末をちょろまかして中朝国境で売り捌こうとしているという怖い噂も絶えません。いよいよそれが実際に摘発されたか?と思ったら、「誤報」だと言うのですから、著(いちじる)しく怪しい話ですなあ。

■もしかすると、摘発されたのが中国人だったのが不味かったのかも知れません。「核拡散」の尻尾を捕まれては大変ですからなあ。本当に北朝鮮から流出している物騒な放射性物資は何処にどれほど有るのか分かったものではありません。勿論、完成品の小型原爆となればロシアから幾つも行方不明になっているとの、もっぱらの噂です。まあ、このニュースが本当でも誤報でも、「摘発」したのですから安心ということでしょうなあ。


韓国国防省が、北朝鮮が50キロに達するプルトニウムを抽出した可能性があり、弾道ミサイルに搭載するために核兵器を小型化しようと努力している、との報告書を作成していたことが明らかになった。Song Young-sun議員が26日、メディアに公表した。報告書は、それだけの量のプルトニウムがあれば、7~8個の核兵器を作ることが可能だ、としている。同議員によると、報告書は、北朝鮮はおそらく重量が2~3トンの核爆弾を作る能力を持っているが、それをミサイルに搭載するためには、1トン以下に小型化する必要がある、と指摘している。韓国国防省は、報告書の内容についてコメントを拒否したものの、報告書が10月10日に国防省や軍司令官の会合で議論されたことは確認した。
ロイター - 10月27日

■これは今でも概(おおむ)ねそのまま信じられている話です。実験に使用されたのはプルトニウム型の原爆だという事も大気のサンプル調査で確認されたと言われています。何よりもミサイルの大型化に専心努力して来たという実態があるのですから、弾頭に載せるための核兵器を開発していると考えない方が非常識でしょう。


スイス政府が国連安全保障理事会決議1718号による対北制裁に26日、取りかかった。 核兵器、ミサイルなど大量破壊武器(WMD)開発に使われる可能性のある物品はもちろん、高級時計など各種ぜいたく品取引も全面中断する方針だ。スイス連邦経済省のオスマ・ビス輸出入統制、制裁担当官は25日「米国の声(VOA)」放送とのインタビューで「今回の制裁によって軍事物資はもちろん軍事、民間用ですべて使うことができる『二重用途』物品の輸出入も規制される」と明らかにした。しかし彼は「スイスが8年間、コンピューターソフトウェア、機械工具など二重用途物品を北朝鮮に輸出した実績は40万ドル未満」とし」「実際の影響は大きくない」と付け加えた。……ロレックスを含むスイス製高級時計などぜいたく品供給中断が北朝鮮最高指導部に大きな打撃を与えるものとみられる。

■将軍様からの御褒美や贈り物には日本製を含む舶来品が愛用されているという話は有名で、時計も将軍様の名前入りの特製品が渡されるとの証言も有ります。最初は海外勤務の役人が金日成を喜ばせるために調達して献上した物が、点数稼ぎの競争を呼んで膨大な量が溜まってしまい、いつの間にか御下賜の品に転用されたのが習慣化したのかも知れませんが、国内経済が破綻して飢餓を避ける食糧輸入に当てる資金も底をついても、将軍様だけは贅沢品を大量にストックしているというのは、体制の末期症状の典型です。


ビス担当官は「時計を含みキャビア、ワイン、タバコ香水、高級衣類、カーペット、毛皮、ダイヤモンド、電子製品、自動車、音響器機、芸術品などが輸出禁止対象」と明らかにした。核心はやはり時計だ。ビス担当官は「昨年北朝鮮に輸出されたぜいたく品は23万7000ドル分水準」と明らかにした。しかし米ワシントンに本部を置いた「自由アジア放送(RFA)」はスイス時計産業連合資料を引用して「北朝鮮は1995年から2004年まで2400万ドル分のスイス時計を買い付けた」と報道した。

■10年間に「2400万ドル」なら年平均で240万ドルです。日本円で2億5千万円ほどになるでしょう。1箇で数百万円というのもザラに有るスイス製高級時計でも、毎年、200箇も300箇も買える金額になります。軍部や取り巻きに加えて、海外の工作員や綺麗なオネエチャンに渡し続ければ、その程度の数になるのでしょうなあ。案外、本物のスイス製時計が貰えなくなったという噂が広まると権力中枢に動揺が広がるかも知れませんぞ。宝石や高級時計は、いざという時に亡命した先でも換金できますからなあ。

続・北の原爆50年史 其の参拾七

2006-11-23 12:43:42 | 歴史

ピーター・ペース米統合参謀本部議長は24日(現地時間)、「米国は(すぐにも)北朝鮮などと戦争をする場合、相手を制圧できる戦力を保有しているが、戦争による犠牲は大きいはず」と述べた。ペース議長は米国防総省の記者会見場で「われわれはイラクとアフガニスタンで戦争をしているが、もう一つの戦争に対応した十分な兵力と戦力を保有している」とし、このように主張した。……「北朝鮮が(米国などの)対北朝鮮制裁に報復すると述べているが、脅威の本質は何か。 韓国戦争(1950-1953)当時のように(北朝鮮が)電撃的に侵攻することか」という質問に対し、「北朝鮮が武力挑発をするのか、その意図は分からないが、われわれが北朝鮮であれ他の国であれ、米国に挑戦する相手に対応する能力を確保していることは確かだ」と答えた。

■ロシアと韓国から同時に打ち上げられたアドバルーンに即座に反論して見せたのは、中間選挙の大敗が予想されていたブッシュ政権中枢からの命令に従ったのでしょう。仮想される第二次朝鮮戦争は、イラク戦争と比較した場合に戦後の後始末をすべき「身元引受人」が決まっている点が大きく違いますし、アフガン戦争とも「敵は特定される」点が違います。後は野となれ山となれ!と自国に対する脅威だけを叩き潰したら米国の目的は達成されるのですから、切っ掛けが有れば何の迷いも無く体制崩壊の決定は下されるでしょうなあ。不得手な地上戦に兵力を投入するのを避けて、精密爆弾と巡航ミサイルだけで権力中枢と核開発設備を短期間に壊滅させ、後は6箇国協議でのんびりと戦後処理をして貰えば良いと考えるのがブッシュ政権らしいやり方でしょうなあ。次の選挙までブッシュ大統領がこのまま阿呆扱いされて黙っていると考える方が難しい。


ペース議長は北朝鮮などとの戦争が勃発する場合を想定し、「その時にはイラクやアフガニスタンよりも過酷な手段(more brute force)、すなわち在来式爆弾(dumb bombs)がもっと多く使われるだろう」と語った。……「精密攻撃ができる武器や情報システムがガルフ地域に集中しており、他の地域に直ちに移動させるのが難しいため」……「このためさらに多くの付随的被害(collateral damage、軍事行動による民間人犠牲と財産損失)が発生するはずであり、結局は(軍人と民間人の犠牲者が多かった)第2次世界大戦や韓国戦争に似た戦争になるはずだ」と主張した。

■おやおや、ペルシア湾岸に配備した精密兵器を移動させる手間と時間を惜しんででも、手持ちの中古兵器の「総棚ざらえ」で対処するのですか?軍用倉庫に眠っている武器をごっそりと掻き集めて、文字通りダンピング攻撃に踏み切る、となりますと、昔懐かしい大砲と爆撃機が大活躍する重量級の戦いになりますなあ。こうした乱暴な発言が飛び出すところを見ると、ブッシュ政権内で軍部が失敗ばかりしている外交部に対して相当に苛立っている事が分かります。イラクではガセ情報に騙され、兵力をケチったばかりに泥沼に嵌まり込んで恥を晒した米軍は、徹底的な情報収集を行って開戦劈頭(へきとう)から州兵まで駆り出して、物量作戦で圧倒するつもりなのでしょうなあ。グアム島や沖縄が兵站拠点となるでしょうから、そこに軍事物資と兵が集まり始めるのを北朝鮮が黙って見ているとも思えませんが、ブッシュ政権が一つくらいは「金星」を上げて置こうと思うかどうか、問題はそれだけなのかも知れません。


ペース議長は「米国にはガルフ地域に派兵された20万人余の兵力以外に、現役と州防衛軍、予備軍を含めて動員可能な兵力は200万人以上にのぼる」とし「本土にある部隊の武装が完璧でないのは事実だが、国家利益を守るためなら明日にも圧倒的な戦闘力を創出できるわれわれの能力を敵が誤って判断してはならない」と警告した。
韓国中央日報 2006年10月25日

■ロシアや韓国は、最後になれば良かれと思って頼まれた事を代弁しただけだ、と言い逃れられる立場ですから、米軍が本気で事を構えたら体を張って止めにかかる事は無いでしょう。それにしても「兵力200万人」とは米国も大きく出たものです。机上の作戦で終わった太平洋戦争末期の「オリンピック作戦」と「コロネット作戦」の資料でも持ち出して研究を始めているのかも知れませんぞ。因みに、世界史を履修しても日本の高校では昭和の戦争を教えないそうですから、大日本帝国が本気で考えていた「本土決戦」を考えるのに必須の知識として復習しておきましょう。

■米軍が計画した日本本土侵攻作戦は、『ダウンフォール作戦』と総称されていまして、2段構えになっていました。第1段が「オリンピック作戦」です。計画では1945年11月1日を期して、歩兵師団・騎兵師団・海兵師団などが宮崎海岸、志布志湾、吹上浜に上陸します。その5日後、歩兵師団・戦闘団などが鹿児島湾、種子島、甑島に上陸して、航空部隊の支援を受けながら九州南部を制圧して航空基地を設営。動員される総兵力は81万人で、原子爆弾や毒ガス兵器の使用も計画されていたのだそうです。長崎の次も九州だったのです。

■第2段が「コロネット作戦」で、いよいよ帝都東京が標的となります。1946年3月1日を予定していたそうですぞ。初日に神奈川県の湘南海岸に主力の30万1000人を上陸させ、続いて機甲師団が上陸。同日、千葉県の九十九里浜に24万人が上陸します。総計54万人が帝都東京を目指して南と東に上陸侵攻するという計画です。最終的には上陸兵員計117万人、これに10万輌以上の戦車や装甲車、トラック等の乗員22万2000人が加わって竹槍と石ころで応戦する日本軍?を蹂躙して行くと言うおぞましい大作戦でした。「オリンピック作戦」と「コロネット作戦」に動員される歩兵部隊の総数が、何故か200万人になりますなあ。北朝鮮には東西に海岸が有るわけですから、それぞれに100万人ずつ上陸させて、在韓米軍と韓国軍が38度線を突破して北上するのでしょう。将軍様御一家の逃げ口となる北側は開けて置くのですから、北朝鮮軍はぽいと見棄てられてしまう運命が待っています。

■イラクでは外れた民衆蜂起の目論見が、案外、北朝鮮では簡単に実現できるかも知れませんから、米軍が海岸線に接近した頃には将軍様御一行は逃亡し、国内は凄まじい復讐劇が繰り広げられている可能性が大ですなあ。日本でもすっかりお馴染みになったテレビのアナウサーさん達など、どうなるのでしょう?

続・北の原爆50年史 其の参拾六

2006-11-23 12:43:05 | 歴史

米国が北朝鮮の核実験を核抑止力として受け止めない場合、北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイル発射を試みる可能性があるとの分析が明らかになった。核兵器に詳しい米科学国際安全保障研究所(ISIS)のオルブライト所長が24日、ジョンズ・ホプキンス大学で行われた韓米研究所の討論会で述べた。オルブライト所長は、北朝鮮の核実験は究極的に核弾頭を作りミサイルに搭載することを目標としているとの考えを示した。米国が北朝鮮の核抑止力を恐れていないと北朝鮮が判断した場合、北朝鮮は米国に脅威を与える核プログラムの確保に乗り出す可能性があると指摘した。北朝鮮の立場からすれば、米国が脅威を感じない地下での核実験ではなく核弾頭を有効に発射する能力のアピールが必要だとしている。

■クリントン政権で国務長官を務めたオルブライトさんと血縁関係が有るのかどうかは分かりませんが、平壌でマスゲームに感動してハシャイでいたオルブライトさんはすっかり北朝鮮の謀略に乗せられたのですが、このオルブライト所長の言っている事も北朝鮮を喜ばせるような内容になっています。


オルブライト所長はまた、北朝鮮の核実験は失敗ではなく部分的な成功と結論づけ、北朝鮮が再び実験を行う場合は問題点を正すと予想した。北朝鮮の核弾頭製造能力については、ノドンミサイルに搭載する粗悪な水準のものは作ることができるが、今のところテポドン2号に搭載できるほど軽い核弾頭を作る能力はないとした。オルブライト所長は北朝鮮が核実験前から核兵器を保有していたと分析し、北朝鮮を核兵器保有国として扱うことを提案した。
YONHAP NEWS - 10月25日

■「ノドンに核弾頭搭載可能」ということは、日本列島全土が核攻撃の標的になったという事です。ダミーを混ぜて相手の迎撃体制を攪乱する多弾頭ミサイルのような高度な技術が無くても、空っぽの弾頭のノドンを数十発打ち上げて、1発か2発の「本物」を混ぜて置けば日本が急いでいる迎撃兵器では対応不能です。立派な核保有国が日本の隣にもう一つ出現した事は確実です。それでも核議論をタブーとする頑固な政治家が多いのは驚くべきことで、そんな怠け者に限って平壌との交渉方法を探る努力などもしなければ、核廃絶の大戦略も持ってはいないものです。祈りは宗教者に任せておくべきですし、能書きは寅さんの専門分野で、冗談ならば寄席の出し物にすべきです。「打たれたら諦める」と分かり易く言ってくれれば助かるのですが……。


平壌市で20日に行われた軍民大会以降、北朝鮮では核実験の成功を祝う歓迎大会が全域に広がっている。朝鮮中央放送は25日、「歴史的な核実験成功を歓迎する平安南道、慈江道、江原道軍民大会が道所在地で行われた」と報じた。各道の朝鮮労働党責任秘書や党・政府機関、労働団体関係者、軍が出席した大会では、核実験成功に対する誇りを強調し、米国の対北朝鮮敵対政策を非難する演説が相次いだ。平安南道で開かれた大会である演説者は、北朝鮮が核実験を実施したのは、国の自主権や民族の安全と、朝鮮半島と周辺地域の平和と安定を守るための正当な決断だとして、「強力かつ自衛的な国防力を保有することは、祖国と民族の誇りだ」と強調した。また、国連安全保障理事会での北朝鮮制裁決議案採択を批判し、「北朝鮮軍と人民は、米帝国主義者の策動を断固として粉砕する」と力説した。……YONHAP NEWS - 10月25日

■どうせヤラセ動員に決まっているのですが、少なくとも飢餓の現状が変わる事だけを理由に「第二次朝鮮戦争」を待ち侘びている北朝鮮公民の中には、核武装を本気で喜んでいる人が結構な数に上っているのではないでしょうか?一方的に核攻撃を受ける危険が減り、通常兵器に限定した殺し合いなら、ソウルを焼き払い掠奪し放題で南の富を丸ごと吸収できると楽しみにしている者がきっと居ますぞ。外の世界からの情報に接することなく50年間も過ごした人々は、平壌の軍事パレードに出て来る「骨董品」を最強の最新兵器だと信じているでしょうし、全国何処でも軍服姿が見られるのですから自国が世界的な軍事大国だと信じている可能性も有ります。「ウソも百回言えば本当になる」とか「大きなウソほど大衆は信じ易い」などという恐ろしい法則も有りますから、党に言わされている狂気の沙汰としか思えない恐ろしい空元気も、いつしか頭の中を占領して信じ込んでしまうものですからなあ。


ロシアのプーチン大統領は25日、北朝鮮の核実験問題をめぐる危機を解決するためには、国際社会は北朝鮮を窮地に追い詰めてはならない、との考えを示した。大統領は、北朝鮮が10月9日に核実験を実施したと発表した理由のひとつは、6カ国協議の「参加国すべてが正しいトーンを見つけることができなかったからだ」と述べた。
その上で「交渉の参加者の一人を窮地に追い詰め、緊張を高める以外に選択の余地がないような状況に追い込むことは決してあってはならない」と語った。
ロイター - 10月25日

■「収容所群島」を支えた情報機関出身のプーチンさんですから、北朝鮮がやっている反人道的な政策には何も文句は無いはずです。自分達はもっと大規模な人権弾圧を効率的に実行していたのに、ソ連が崩壊した後でも何処かの謝罪と反省が大好きな国とは違って、一言も過去を謝ってはいませんからなあ。自分の権力基盤を危うくする隣国の大統領に毒を盛ったり、ジャーナリストを国内で射殺したり、何でもロンドンを舞台にして毒殺事件が起こったという最新ニュースまで飛び込んで来ましたぞ!それらが全部プーチン指令によるかどうかは不明ですが、限りなく黒に近いような印象です。そんな真っ黒い霧に包まれているような人物が、妙に「平和」のイメージを散りばめた美辞麗句を使う時には、よくよく用心しなければなりませんなあ。


丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官は25日、慶尚南道馬山市で開かれた講演会に出席し、最近の北朝鮮の核問題について「ブッシュ米大統領の誤った北朝鮮政策から始まった」と強く批判した。ブッシュ政権が同時多発テロ後に北朝鮮を「悪の枢軸」と位置付け、先制攻撃も辞さないとの姿勢を維持したことから、北朝鮮も対抗措置を取ったものと主張している。丁元長官はまた、来月実施される米国の中間選挙で民主党が勝利すれば、ブッシュ政権の北朝鮮政策にも変化が起こり、過去にクリントン政権が取っていた北朝鮮和解政策に変わるとの見方を示した。……包容政策は北朝鮮に核が存在しない時期に始まったもので、政策との連関性を指摘することは行き過ぎた解釈だと主張した。開城工業団地や金剛山観光の問題に関しても、市場経済や民主主義の価値を北朝鮮に伝えるために重要な投資だとし、政策の中断に否定的な姿勢を示した。
YONHAP NEWS - 10月26日

■まったく同時期に、米国外交の失敗に全ての責任を押し付けて北朝鮮を弁護するコメントがロシアと韓国から発せられるとは、語るに堕ちたと言えましょうなあ。間違いなく平壌からの働きかけが活発化していますぞ。プーチン発言は尻尾を捕まれないように注意深く言葉を選んでいますが、丁元長官は身内を相手にした講演会という場の影響も有って、短兵急な物言いが露骨です。中間選挙後にクリントン時代の愚かな外交政策が復活するというのは、随分と虫の良い皮算用ですし、「太陽政策」が始まった頃に北朝鮮に核兵器が無かったとは確証が得られない話で、何よりも核武装をこの半世紀の間、一度も諦めた事の無い金王朝を免罪する論法は余りにも危険です。

続・北の原爆50年史 其の参拾伍

2006-11-22 16:24:22 | 歴史

ロシアのラブロフ外相は24日、6カ国協議の参加国に対し、状況を悪化させかねない性急な措置をとらないよう警告した。インタファックス通信によると、ラブロフ外相は、サンクトペテルブルクの講演で、ロシア政府が北朝鮮に対して最大級の自制と6カ国協議への復帰を促したことを挙げ「モスクワでは、6カ国協議の参加国すべてが、同様の立場から対応を進め、状況を悪化させるような措置をとらないよう望んでいる」と述べた。タス通信は、外相の発言として、北朝鮮が2度目の核実験を実施しないようロシア政府が希望している、と伝えた。
ロイター - 10月24日

■この段階で北朝鮮の肩を持って、出来れば身元保証人として6箇国協議での存在感を高めたいロシアの目論見がちらちらと見え始めます。ロシアはイランの核開発にも融和策を提案して仲介者として動き回っていますから、実質的には「悪の枢軸」側に立った代弁者の役目を演じている事になります。


米ブッシュ政権から大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加を求められている韓国の盧武鉉大統領が苦悩の色を濃くしている。参加をめぐり与野党だけでなく政府内も意見が分かれているが、盧大統領は沈黙したまま。先に日韓中露4カ国を歴訪したライス米国務長官との会談でも「韓国が最も慎重だった」(同長官)とされ、中国が対北制裁を強化する姿勢をアピールしたのと対照的。一向に足元が定まらない盧政権の迷走ぶりが目立っている。

■「PSI」は盧武鉉政権に対する厳しい「踏み絵」ですから、大統領は頭を抱えているに違い有りません。誰が支えているのやら、きっと尻を叩いてヤケを起さないように必死で説得しているのは誰でしょう?


ライス長官との会談で盧大統領は、国連安全保障理事会の決議への支持を表明しつつ、「朝鮮半島の緊張を高めず外交的な解決に向けた努力の強化が重要」などと述べ、制裁実施には消極的な姿勢に終始した。米韓外相会談でも韓国は金剛山観光、開城工業団地の2事業の見直しは「慎重に検討する」にとどまった。米国は今回の安保理決議と並び、同国が中心で進めてきたPSIについても韓国に参加を促している。しかし、PSIをめぐる議論は、与野党と政府部内で複雑に賛否が入り乱れている。盧政権内では青瓦台(大統領府)と統一省が「慎重」あるいは「反対」で、与党ウリ党は「絶対反対」(党首の金槿泰議長)。これに対して、外交通商省と野党ハンナラ党が「前向き」あるいは、参加推進を主張し、対立している。

■「慎重に検討する」というのは、日本の小泉元首相が愛用していた「総合的に判断して適切に処置する」のと同じような台詞ですが、小泉さんがこう言う時には既に決断が終わっている事が多かったのに対して、盧武鉉さんは本当に身動きが出来ない状態に追い込まれています。自分で播いたタネなのですが、育ってしまった物が大き過ぎて刈り取れなくなってしまいました。


…北朝鮮からみれば、韓国のPSI参加は「民族」を捨て、「米国の対北敵視政策」の選択となるため、PSI参加は南北関係の中断を意味するだけでなく、緊張増大を危惧する国内世論もある。国連の安保理決議1718は、国連加盟国に採択後30日以内に対北制裁で各国が何を実施したかの安保理への報告を義務付けている。期限は11月15日となる。このため、韓国では、盧政権がPSIに対する態度をあいまいなままにしておける期限は、事実上、11月15日との見方が出ている。
産経新聞 - 10月25日

■結局、国連が定めた随分と曖昧で大雑把な制裁事項を遵守する事で決着するのですが、米国が希望していた協力は拒否して失望させてしまいましたから、後々、そのツケが恐ろしい形になって現れる可能性が有ります。金大中さんが売り物にしていた「民族第一主義」が、北朝鮮を増長させてこんな大きな問題を引き起こしたようなものですから、韓国の中にはあちこちから怒りの声が上がり始めているようです。景気が良い時には「金持ち喧嘩せず」と言われるように、貧乏な北の同胞に大盤振る舞いして良い気分を味わいながら問題の先送りも出来たのでしょうが、極端な民族主義は国際的な孤立状態を呼び込む引き金となり易く、そこに民族的な誇り高さが加わると行き場を失った鬱憤が変なところで爆発する可能性が高まりますなあ。またぞろ反日運動の八つ当たりだけは勘弁して欲しいものです。

続・北の原爆50年史 其の参拾四

2006-11-22 16:23:54 | 歴史

北朝鮮船舶1隻が、香港で検査を受け抑留されていることが分かった。香港の英字紙、サウスチャイナモーニングポストが24日に報じた。検査の結果、核物質や兵器などの禁止品目は発見されなかった。国連安全保障理事会の決議案採択以来、北朝鮮船舶に対する海上検査が行われたのはこれが初めて。安保理決議1718は、核・生物・化学兵器関連物質や装備、在来式兵器などを積載した船舶が北朝鮮を往来する場合、関連国が検査を実施することで禁止品目の搬出入を阻止するよう定めている。この船舶は20日に中国・上海を出てインドネシアに向かい上海に戻った後、14日に出港、22日夜に香港に到着した。23日午前に香港海事処の検査を受け、当局により正式に抑留され、現在は香港領海上に停泊している。到着当時貨物は空で、24日に台湾で鉱物廃棄物を積んで北朝鮮の南浦港に戻る予定だった。

■米国の軍事衛星が監視している中で特定された怪しい動きをする北朝鮮のこの船は、追い回された揚句にミャンマーに逃げ込んでしまいます。それにしても、「中国・上海を出てインドネシアに向かい上海に戻った後、14日に出港、22日夜に香港に到着」したのに、荷物は空だったというのは面妖な話です。上海とインドネシアの某所とを往復して、何を運んでいたのでしょう?オーストラリアが素早く反応して見せたのは、もしかしたらインドネシア内の反オーストラリア勢力に物騒な物を売ったからかも知れませんなあ。日本の南には、海賊船と密輸船が横行する無法の海洋が広がっているのですが、北朝鮮の怪しげな船のそれに紛れて何をしているのやら、さっぱり分かりませんぞ。日本政府もシンガポールと協力して海賊船狩りをやろうとしましたが、あっさりと断られた事が有りましたなあ。大日本帝国海軍の復活は、誰も望んでいないのでしょう。困ったことです。


20日に米国と日本が追跡していると報じられた北朝鮮船舶と同一かどうかは明らかになっていない。貨物船の船長は、北朝鮮に対する制裁や核実験の事実をまったく知らず、東南アジアを中心に港湾を往来する貨物船だと話しているという。米国は船舶の香港入港を受け23日、誘導ミサイルを搭載したフリゲート艦を香港に入港させ、物理的衝突に備えた。
YONHAP NEWS - 10月24日

■北朝鮮は、自分達が相当な事をやっても攻撃されない、と間違った学習をしていますし、人命などまったく尊重しない凄い感覚を人民に浸透させておりますから、フリゲート艦の一隻や二隻近寄って来ても何でも無いでしょうなあ。


チェイニー米国副大統領はリビアの核プログラムを放棄させた事例を持って国連の対北制裁が失敗した場合、軍事措置も排除しないことを示唆した。チェイニー副大統領は19日、米時事週刊誌タイムの電子版に掲載されたインタビューで「韓半島非核化とイランの核開発野望を断念させられるのかという問題で国連安保理が試験台に上がった」とし「国際社会が対北制裁案を作り、強制して結果を作り上げなければならない」と強調した。チェイニー副大統領は引き続き「もし対北制裁が失敗したらどうするのか」という質問に「(ブッシュ)大統領の言葉通り、我々は何の選択案もテーブルからしまっていない」と述べた。チェイニー副大統領は「選択案」の中には軍事措置も含まれているという意をリビアの事例を持ってさりげなく表した。

■実質的にはチェイニーさんが米国大統領みたいなものですから、この人の発言の方がブッシュ息子よりもずっと分かり易くて重みが有ります。でも、リビアの例を北朝鮮に当て嵌めるのは如何なものでしょう?


チェイニー副大統領は「米国がイラクに向けて進軍するとリビアが大量破壊兵器関連の対話に出るという意を見せ、9カ月後、サダム・フセイン前イラク大統領を捕らえた直後、リビアはすべてのものを放棄すると発表した」と明らかにした。リビアが核プログラムを放棄したのはイラク戦争の「直接的結果」だったという主張だ。米行政府内の代表的強硬論者のチェイニー副大統領がリビアの成功事例を言及したことはイラク戦争失敗論に対する反論の性格もある。しかし軍事措置の効果に対する確信を見せ、強調した点は注目される。

■本当は英国が間に入って米国からの「攻撃しないよ」という証文を取って説得したのが効いたと言われているリビアの変貌劇ですから、チェイニー発言はぼろぼろになったイラク戦争の意義を必死で説く、言ってみれば廃物利用のようなものでしょうなあ。だから、ぜんぜん説得力が有りません。


チェイニー副大統領はまた国連安保理の対北制裁決議案を高く評価しながらも成功についてはもう少し時間をかけてみなければならないという立場を見せた。「国連安保理が基本的に一歩進む用意があるのか見守る」とし「どうなるかわからないが、我々はこの問題を外交的に解決することができることを希望する」と述べた。
韓国中央日報 2006.10.24

■話はぐるりと一周して、結局はイラクで躓いた米国は北朝鮮に対して打つ手は無いんだ、と正直に認めているような話です。やはり、自分が経営しているハリバートン社の仕事にならなら北朝鮮問題には余り熱心ではないのがチェイニーさんの本音なのでしょう。

続・北の原爆50年史 其の参拾参

2006-11-22 16:23:19 | 歴史

20日午後(米国時間)、韓米国防長官の共同記者会見は韓米関係の現状を象徴的に示した。戦作権転換と核の傘提供具体化表現などについて接点を見出せなかった両国長官は、共同声明を発表することができないまま両国記者たちの質問を受けた。米国はラムズフェルド長官に対イラク政策を集中的に聞いた。米中間選挙(11月7日)を控えているからかラムズフェルド長官は相当時間を割いてイラク問題に対する見解を述べた。その横に立っていた尹光雄(ユン・グァンウン)国防部長官は黙っているほかなかった。

■選挙の大敗を受けて、絵に描いたような敗将として辞任したラムズフェルドさんの姿を見てしまった後となっては、この頃の発言は虚しいと言うよりも悪い冗談を聞かされているような気分になりますなあ。


--北朝鮮の2回目の核実験が切迫していると思うか。(米国記者)

◆尹長官=「1回目のときもそうだったが2回目も可能性をめぐって韓米情報を注視している。今、入って来た報告によると金正日(キム・ジョンイル)委員長が2回目目の核実験をしないと言及したという。しかし時間をかけて見ることだ」

--金正日の言葉を信じるのか。(米国記者)
(このときラムズフェルド長官は皆に聞こえるほどに笑う)

◆尹長官=「過去を見れば分かるだろう」

--核の傘の表現を強化しようという韓国側要求を受け入れない理由は何か。(韓国記者)

◆ラムズフェルド長官=「私も知らない内容をどうして記者が知っているのか。ソース(情報源、韓国側を指称)があらかじめ伝えたようだ。…共同声明は昨年と同じような水準になるだろう」

会見場では両側の立場が食い違う質問が出たとき、尹長官がラムズフェルド長官に何かを急に説明する姿も見られた。両長官は会見後、廊下に立って異見が露出した核の傘の具体的表現などをめぐり対話を交わしたという。
韓国中央日報 2006.10.23

■数年前でしたか、日本の政治家が米国防省から聞いた話として、「韓国政府に軍事機密を伝えると、直ぐに漏れるから信用できない」と言ったとか言わないとかで、大騒ぎになったことが有りましたなあ。日本の国会の中にもクレムリンや北京と通じている情報トンネルが幾つも有るのですから、韓国政府としても「日本にだけはそんな事を言われたくないぞ!」と激怒するのも道理が有る話です。まあ、そんな情けない同盟国を冷戦の最前線に置いて戦っていた米国も可哀想ですが……。

■ラムズフェルドさんが大笑いしたのが象徴的で、どうもブッシュ政権は北朝鮮を余りにも甘く見ていたとしか思えません。イラクは10日間の戦闘で片付けて半年で民主化を完了する!と本気で考えていた政権ですから、大真面目にKEDOのピエロになったクリントン大統領をせせら笑って就任した手前、北朝鮮など相手にしないぜ!と大見得を切りたくなったのは分かりますが、知らない相手を見くびるのは非常に危険です。勿論、相手の宣伝を信じ込んで「地上の楽園」運動に加担した愚かな国は論外ですぞ。


オーストラリアのネルソン国防相は23日、北朝鮮の核実験実施を受けた国連安全保障理事会の制裁決議に絡み、北朝鮮船舶の臨検実施を支援するために、軍艦1隻を派遣することが可能だと表明した。ネルソン国防相は地元テレビに対し、北朝鮮の領海に出入りする船舶が大量破壊兵器や関連資材を運搬していないかを調査するための国際的な取り組みを支援するために、軍艦1隻を派遣することが可能だ、と述べた。オーストラリアは、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に参加している。
ロイター - 10月23日

■血縁関係の有無は不明ですが、往年の英雄ネルソン提督と同じ姓を持つ国防相が「軍艦」の話をするというのはアナウンス効果が上がりますなあ。アジアへの浸透を進めているオーストラリアは、東チモール独立で弾みを付けてますます北へ北へと押し出して来る様子が見えます。日本はこうした動きにどう対応するのかが、まだはっきりとは見えないのが気になります。米国の怪しげな牛肉を買わなくなればオーストラリアから買える、それだけの関係では勿体無いと思いますなあ。

続・北の原爆50年史 其の参拾弐

2006-11-21 18:20:52 | 歴史

金大中(キム・デジュン)前大統領は21日、北朝鮮が国連の制裁措置に対抗して武力を行使する可能性があると警告するとともに、北朝鮮を孤立化させるよりも包容政策により国際社会に招き入れるほうがよいとの考えを示した。AP通信とのインタビューで述べたもので、北朝鮮の船舶に対する貨物検査を行う場合には武力で抵抗する恐れがあり、南北境界でも若干のトラブルが起きる可能性があると指摘した。その上で、こうした小さな紛争が将来的にどのように拡大するかはわからないと懸念を示した。

■医者と政治家は絶対に自分の過ちを認めない人種として有名ですが、この民主化闘争の老いたカリスマも大したものです。自分がノーベル賞を貰いたいばかりに推し進めた太陽政策が東アジアに新たな核保有国を誕生させた事をまったく他人事のように考えているのですからなあ。自分が韓国大統領になるために北朝鮮とどんな取引を何時から始めていたのか、永遠の謎となってしまうのでしょうが、悪名高い軍政時代の見直しが進み、金正日体制が崩壊すれば、びっくりするような歴史の真相が炙り出される可能性は有ります。まあ、金大中さんは自分の目が黒い内はそんな大事件など起こらないと多寡を括っているのでしょうが……。


金前大統領はまた、北朝鮮への圧力を強めることに反対の姿勢を明確に示すとともに、米国と北朝鮮による2国間協議を行い譲歩を通じて北朝鮮の核問題を解決すべきと強調した。さらに、南北間の和解の努力に進展がないことを批判し、その原因は米国にあると指摘した。太陽政策は成功したが、完全な成功を得られなかった理由は米国と北朝鮮の関係が膠着(こうちゃく)状態に陥ったためだとしている。
YONHAP NEWS - 10月23日

■自分の失敗を絶対に認めず、「悪いのは米国だ!」「もっと悪いのは日本だ!」と言い続けるのは感心しませんなあ。もしも南北統一に成功したら、今の北朝鮮外交を引き継いでロシアと中国を両天秤に掛けて上手にやろうと考えるのも分かりますが、本当に日米を敵に回して韓国の未来が開けるとは思えません。今の38度線がぐっと北に上がって鴨緑江になるのか、それとも南に下がって狭い玄界灘が巨大な壁となるのか、日本にとっては大問題なのですが、どっちに転んでも良いようなシミュレーションは済んでいるのでしょうか?


北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が、19日に平壌で中国の唐家セン国務委員と会談した席で、6カ国協議への復帰問題についても言及していたことが明らかになった。また北朝鮮外務省の姜錫柱(カン・ソクジュ)第1外務次官も、6カ国協議と関連した北朝鮮の立場を具体的に説明した。消息筋によると、金総書記と姜次官は、追加核実験について、米国が北朝鮮を圧迫しないというなら追加の核実験はしないと述べたという。また、6カ国協議への復帰については、米国の姿勢が変わらないのなら、北朝鮮側が先に復帰するので、米国は復帰後すぐに金融制裁を解除すべきだと求めた。

■毎度のことながら、北朝鮮の理屈は本末転倒・支離滅裂・我田引水・厚顔無恥の塊です。6箇国協議などという大掛かりな国際会議をだらだらと大金を使って続けているのは、一体、誰のためだと思っているのでしょう?「俺が出てやるから、米国はちゃんと反省しろ」とは、何という言い草でしょう?!外交相手は常に下手に出て北朝鮮に頼んだり反省したり、仕舞いには感謝感激の涙でも流さねばならないと決まっているようです。餓死寸前の子供達が不憫だからと食料を送ってやれば、将軍様からの贈り物にしてしまうし、半世紀も遅れている産業の発展を援助しようとエネルギーと資金を提供すればミサイルと原爆を作ってしまうし、そんな国を相手にして「人道援助」を叫んでいた日本の政治家も居ましたが、何の尻拭いもしないまま名誉の引退をしてトンズラです。


北朝鮮のこうした姿勢について、韓国政府消息筋は「核実験強行後初めて北朝鮮の最高首脳部が、条件付きながらも核実験猶予の方針を伝えたもので、6カ国協議再開についてもこれまでとは言及が変化した」と指摘し、これを注視していく考えを示した。ただ、北朝鮮が依然として前提条件を付けていることから、中国の強い説得を考慮してある程度の余地を残して発言したものであり、北朝鮮の態度変化とみるには厳しいとの判断も出ている。
YONHAP NEWS - 10月23日

■どこの報道機関も似たようなもので、奥歯に物がぎっしり詰まったような要を得ない記事ばかりが目立ちます。つくづく、ブッシュ石油命政権がイラク油田に執着して無駄にした時間が惜しかったと思います。イラク以外の「悪の枢軸」はブッシュ大統領の演説のお陰で、世界中の反米勢力のエースになってなってしまい、イラクとアフガニスタンでの抵抗をどんどん元気付けてしまいました。北朝鮮が恐怖を「匹夫の勇」に転じて開き直り、念願の核実験をするチャンスを得たと思ったのも、ブッシュ政権のアホな外交戦略の賜物でした。熾烈な国際外交の世界では「他人の不幸は蜜の味」が常識ですから、北京政府はブッシュ政権の苦境に付け込んで、恩を売って後々の発言力強化を計算して動いているのでしょうなあ。








続・北の原爆50年史 其の参拾壱

2006-11-21 18:19:28 | 歴史
■韓国にどれほど奇妙な大統領と政権が誕生しようとも、日本の地政学的な条件は変わらないのですから、半島で起こる「周辺事態」に対して即応できる立場を明確にしておかないと、一番最後に火事場に駆けつけて「後片付け」の手伝いをするか、給油・見送り・声援しか遅れない無責任で頼りない隣人になっていなければならないでしょうなあ。勿論、流れ弾と難民は引き受けねばなりませんぞ。

北朝鮮は20日、核実験の成功を歓迎する軍民大会を平壌の金日成広場で開催した。朝鮮中央通信が報じたところによると、大会には軍人や平壌市民10万人以上が集まり、朝鮮労働党と政府、軍の幹部が出席したという。北朝鮮は9日の核実験実施直後に朝鮮中央通信を通じ、核実験が成功したと北朝鮮住民に伝えている。この日の大会で朝鮮労働党中央委員会の崔泰福(チェ・テボク)秘書は、安全保障理事会の決議案に対し、北朝鮮軍と人民は少しも恐れることなく、党の先軍領導のもとに一致団結した威力と自衛的国防力で米国の策動を踏み潰すと演説した。
YONHAP NEWS - 10月21日

■思えば、中華人民共和国が「毛沢東の原爆」を破裂させたのは1964年、日本がアジア初のオリンピックを開催した年でしたが、国を挙げて実験成功の一報に沸き立って祝ったものでした。何故か、当時の日本では「原爆を祝う」国に対して不快感や怒りを表明する声は出なかったようです。それどころか、政治的に「平和」を主張する人達の中には中国の核武装を喜んでいた声が出ていたようです。とても不思議な現象ですが……。原爆とは国を挙げて「祝う事」なのだという事実を知った上で日本の核武装論議も進めるべきかも知れませんなあ。


ライス米国務長官は21日、中国の唐家セン国務委員(外交担当、前外相)との20日の会談について「唐氏は私に対し、金正日(総書記)が核実験を謝罪したとか、再実験をしないと表明したとは言わなかった」と述べた。北京からモスクワへ向かう専用機の中でロイター通信などに明らかにした。ライス長官は「北朝鮮は緊張の激化を望んでいると思う」と述べ、依然として再び核実験を強行する可能性があるとの認識を示した。……ライス長官としては、北朝鮮の再実験がないとの見方が広まることで、米国の狙いに反して国際社会の圧力が弱まることを警戒して、あえて会談内容を明らかにすることで、北朝鮮の姿勢に変化がないことを強調する思惑があったものとみられる。
産経新聞 - 10月22日

■大した期待など持たずに北京を訪れたはずのライス国務長官でしたが、さすがに何の収穫も無かったのが腹立たしかったのでしょう。イラクの泥沼に悪評が高まっていた中間選挙のキャンペーンを打開する材料の欠片でも手に入れば、親分のブッシュ大統領に良い土産となったのでしょうが、北京政府はここぞとばかりに北朝鮮とのパイプを独占している自らの立場を精一杯高く売る商売に大成功しただけでした。しかし、後に北朝鮮はロシアの方に期待を懸けて天秤を大きく傾けて見せるのですから、一筋縄では行かない化かし合いです。


ヒル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、米領事館からマカオでの北朝鮮関連資産凍結をめぐる状況の説明を受けるため、香港を訪れている。米領事館の報道官が22日、明らかにした。ヒル次官補は、ライス米国務長官の日韓中歴訪に随行した後、21日に香港入りした。米財務省は昨年、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)が北朝鮮の違法金融活動に関与していると指摘。その後、同行の北朝鮮関連資産約2000万ドルが凍結された。

■ヒル次官補の香港訪問が前から予定されていたのか、急遽決められた事なのかは分かりませんが、報道官が発表するまで知られていなかった事から、北京での空振りをリカヴァーするために慌てて派遣されたように思えます。何と言っても、失敗続きのブッシュ外交で北朝鮮の不正預金凍結は唯一のヒットでしたからなあ。


英字日刊紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、ヒル次官補は「ここでの状況の最新情報を得る良い機会だ。マカオでの問題について説明を受ける予定だ」と述べた。同紙によると、ヒル次官補は、米国が北朝鮮との交渉で新たな前提条件を付け加える意図はないと強調。6カ国協議に復帰し、昨年合意した核の放棄を実施するよう、引き続き北朝鮮に求めた。米領事館の報道官によると、ヒル次官補は23日に香港をたつ予定。
ロイター - 10月22日

■「核保有国とは認めない!」と言っているのに、「核放棄」を求めるというのは馬鹿馬鹿しい矛盾なのですが、独裁的なアラブの王制国家を見方に付けてイラクを攻撃したのが「中東民主化大計画」なのですから、この程度の矛盾は大した事ではないのでしょう。IT時代にわざわざ現地のマカオに高官を派遣して見せるのは、パフォーマンス効果を狙った茶番劇なのでしょうが、国内の選挙対策である以上に北朝鮮に対する厳しいメッセージとなったに違い有りません。本当は北京で北朝鮮から6箇国協議に復帰する「条件」が出されていたに違いないのに、「無条件復帰」を言い立てるブッシュ世間としては、マカオこそが対北朝鮮戦略の拠点となっております。たった2000万ドルで政権崩壊の危機を感じる程度の、小さな東洋の専制国家に世界の超大国がおろおろしている様子は、覇権意識を強く持っている国やテロリスト集団を喜ばせるだけです。

続・北の原爆50年史 其の参拾

2006-11-21 05:58:17 | 歴史
■前回の報道記事の続きです。

貿易関係者によると、16日に北朝鮮からの貨物車を数えてみると従来と同じ100台だったが、ほとんど貨物が積まれておらず検査は不要だった。貨物があっても、小麦粉や菓子、野菜などだったという。17日も貨物を積んだ車は2~3台にすぎず、従来の20~30台に比べ大幅に減少している。またこの数日間、中国商人の取引方法も変わり、これまで北朝鮮の要請があれば掛け売りもしていたところを、今は代金を受け取ってから商品を送っているという。同紙は地元の旅行代理店関係者の話として、丹東経由の北朝鮮観光も8月中旬から中断された状態で、来年4月ごろ再開される見通しだと伝えた。そのため、中国から北朝鮮を訪問するためには商業視察団に参加するしかなく、その場合も行き先は平壌に限られているという。
YONHAP NEWS  10月20日

■北京政府が北朝鮮にお灸を据えるのは、赤子の手を捻るのも同然ですなあ。でも、本当に捻ってしまうと空いている手で原爆を投げそうですから、たとえ国際的な人気取りや冗談にも手を捻る訳には行きません。文字通りの「藪蛇」になります。これは米国政府に対する外交的な自己顕示だったのでしょうが、決して息の根を止めない程度に目立つ場所を選んでニュースが取り上げられ易いように工夫しているようです。一方、韓国はどうだったかと思えば。


政府が北朝鮮核実験の直後、京義線・東海線鉄道連結事業のため北朝鮮側区間で勤務していた韓国側人材を、事実上撤収させていたことが分かった。政府当局者は20日、北朝鮮が9日に核実験を発表した直後、北朝鮮側区域で両鉄道の駅舎工事を行っていた技術支援チームが撤収したと明らかにした。人数は10人前後とされる。これで北朝鮮側の鉄道駅舎新改築工事は事実上中断されたことになる。技術支援チームは7月のミサイル発射以降も週4日は北朝鮮側の現場に滞在し、作業を行っていた。今回の撤収は、核実験後に韓国政府が鉄道連結事業の追加進行を暫定的に留保としたため。ただ、韓国側関係者が現場の維持と保存、管理の面から、現在も週に1度は現場を訪れているという。
YONHAP NEWS - 10月20日

■工事の中断よりも、ミサイル乱射の後も鉄道連結工事を続けていた事の方が驚きです。地雷原と地下坑道が設けられている休戦ラインに風穴を開けるようにして建設されている鉄道は、もともと日本が敷設して運営していた貴重な社会インフラでした。それが切断されたのは朝鮮戦争が原因です。切断当初は韓国が陸の孤島となって大いに困ったのを尻目に、北京・モスクワへの鉄路を独占した北朝鮮は大いに有力な国際的な輸送手段として活用したのでした。しかし、線路の補修作業にも列車の運行にもエネルギーと原材料の支障が出て宝の持ち腐れになってしまったのでした。それに引き換え、韓国の方は海と空とに活路を開いて陸の孤島変じて、東アジアの「ハブ空港」と「ハブ港」となって大発展してしまいました。

■韓国としては拡大し続ける中国市場との取り引に鉄道を使う事で二酸化炭素の排出量を抑制できるというオマケ付きの援助事業ですから、一石二鳥三鳥の妙案だったはずですが、万一の事態が発生したら一瞬で苦労が水の泡となって鉄路も駅舎も瓦礫となってしまいます。でも、その程度なら「事が終わった後」で再建すれば済みますが、首都が「火の海」にされて廃墟となっては再起不能になってしまいます。


今回のワシントン韓米軍事委員会(MCM)では、いかなる状況や段階でどの米軍核兵器を使うかについて、具体的な作戦計画を立てることに合意した。1991年に在韓米軍の戦術核兵器が完全に撤収された後、全面戦争に備えた「韓米連合作戦計画5027」には、北朝鮮が核兵器などの大量破壊兵器の使用を試みた場合、前もって無力化する計画などがあるだけで、米軍の核兵器を使って報復する計画は含んでいなかった。

■冷戦終結に際して、米ソ間での取り決めに従ってブッシュ父大統領はきっちりと朝鮮半島を「非核化」していたのです。従って、現状こそが「半島の非核化」が達成された状態なので、その非核化を大義名分にして核保有国になった北朝鮮は文字通りの「ならず者国家」になるわけです。


米国が韓国に提供する核の傘では、150キロトンから200キロトン級(1キロトンはTNT火薬1000トンの威力に相当)の核弾頭を装着し、1000キロ以上離れた目標を正確に攻撃することができるトマホーク巡航ミサイルが最優先で活用される見込みだ。0.3キロトンから350キロトンの威力を持つB-61系列の核兵器も、F-15、F-16、FA-18などの戦闘機から投下されることができ、必要な場合は在韓米軍のF-16で核の傘を提供することができる。また、地下数十メートルの地中にあり、従来の通常兵器では破壊が不可能な北朝鮮地下施設を攻撃するために開発中の「地中貫通型核兵器(RNEP)」も、米国が提供する核の傘の有力な候補として挙げられている。……
朝鮮日報 2006年10月20日

■変な大統領が夢見がちの素人政治をやっていても、国家の安全を保障する軍部までが一緒になって戯(たわ)けた夢に酔っ払っている訳ではないのです。非核三原則に「持ち込ませず」条項を加えて済ましていられる国とは事情が違うのです。こうした報復攻撃を前提とした核抑止力を備えられる韓国は、ますます北朝鮮の核攻撃の対象から遠ざかる一方で、間抜けな国がデモンストレーション用の標的にされて弄ばれる危険性が高まるという寸法です。「非核三原則」を本気で遵守・死守する心算ならば、「撃たせず」と第一項に加えておくべきでしたなあ。それが無いから政府、外務省、防衛庁が思考停止になってしまったのではないでしょうか?『憲法9条』が自殺条項にならないためには、この史上初の夢を実現する条項を実現する為に、哲学者のカントもラッセルもマルクスも考え付かなかった人類初の知恵を生み出さねばならないのです。でも、そんな努力をした人は日本には居なかったようです。

続・北の原爆50年史 其の弐拾九

2006-11-20 06:07:38 | 歴史
■産経新聞が列挙した米国の懸案事項は当たっているでしょうが、順番は見事に引っ繰り返っていますぞ!北朝鮮の技術力とエネルギー事情を考えれば①の懸念を共有する国は皆無です。この10年間で必要な技術と軍事物資は手当て済みなのですから、今更、こんな事を心配しているのは病的に臆病な米国だけでしょう。②に関しても、通常兵器とも呼べない自爆攻撃でイラク占領軍は自滅寸前ですし、トマホークの大盤振る舞いから始まったアフガン攻撃もタリバン政権の復活で先行きは真っ暗です。③こそが本命で、本番で飛ぶか飛ばないか分からないミサイルと核分裂が本当に起こったのかどうかも確認できない地下実験が、日本や台湾のタカ派に利用されては溜まりません。少なくとも韓国を除く台湾と日本は、2年もあれば信頼性の高い核兵器は保有できるでしょう。

■最近、日本の核武装計画に冷水を浴びせる理屈の中に、「地下核実験用の場所が無い」という滑稽な空論が有りますが、英国と仏国が何処で核実験をやったか忘れたのでしょうか?日本の領海内には3000以上の無人島や岩礁が点在していますぞ!核実験をするのに、別にゴーギャンが愛したような風光明媚な南洋の珊瑚礁など無くとも良いのです。それこそ、暴走覚悟で「竹島」を実験場に指定するぐらいの勢いを見せれば、何処でも核実験場は見つけられるのではないでしょうか?だからと言って、核武装推進論を打つ気は今のところ無いのですが……。


国防部の尹光雄(ユン・グァンウン)長官は19日、核実験に伴う米国による韓国に対する「核の傘」提供問題に関連し、20日に開催される韓米定例安保協議会(SCM)でさらに具体的な意見を交換する意向を明らかにした。SCM出席のためワシントンに到着した尹長官は記者らに対し、「安保状況が大変重大で困難な時に力を発揮するのが、真の同盟の価値」と指摘、そうした次元から今回の会議もうまく運ぶだろうとの見解を示した。

■この「核の傘」という英語から直訳された奇妙な軍事用語についても再考が必要でしょう。そもそも「傘」は雨を避けて衣服が濡れように用いる道具です。それならば、米軍がさし掛ける「傘」が何処かから飛んでくる核弾頭付きの大陸間弾道弾を弾き返してくれるのでしょうか?ここで有効になるのが「見えない傘」としての抑止力です。この理屈は「相互確証破壊」という悪い冗談にまで発展して、どちらかが一発打てばその報復とそのまた報復を計算して、その余りにも馬鹿馬鹿しい計算結果に怖気づいて核攻撃を思いとどまるというものでした。

■後になって「世界中に赤い旗が立たないのなら地球ごと滅べばよい!」などとソ連は考えてもいなかったのでした。今となっては、似たような事を考えている国は米国だけではないか?との疑惑が色濃くなっているくらいです。原住民を根絶やしにしてスペイン領のメキシコの半分をもぎ取って大喜びしていたような国が、同じ理屈を世界中に押し広めるのは楽しい話ではありません。そんな国がさし掛けている「傘」が、本番でどれほどの効力を発揮するのか、広島と長崎を知っている国だからこそ心配になる事も有るのではないでしょうか?


戦時作戦統制権の韓国単独行使時期をめぐる交渉の見通しについては、「今回のSCMでは、北朝鮮の核問題に対する後続措置が最重要課題」とし、作戦統制権よりも核実験に伴う朝鮮半島安保と北東アジア平和構造について主に論議することになると述べ、即答を避けた。韓米は1978年に開催された第11回SCMから、米国の「核の傘」提供を共同声明に明記してきているが、今年は北朝鮮の核実験という新たな安保問題が発生したことから、韓国側は共同声明により具体的な内容を盛り込みたい考えだ。
YONHAP NEWS - 10月20日

■米ソ間の「デタント」が一気に進んだのは、「使える核」と呼ばれた中距離核ミサイルが東西欧州に続々と配備された結果でした。それを対岸の火事と思って眺めていた東アジアの日本国でしたが、本当は欧州よりも深刻な核戦争直前の緊張状態に有った自分が置かれた状況には無頓着だったのは、やはり「憲法9条」の呪術効果だったのでしょうか?北朝鮮の拉致犯罪と核実験が、無責任な平和主義の理屈を瓦解させたとしたら、拉致被害者家族の皆様には申し訳ないのですが、日本を目覚めさせるのに少しは役立ったのかも知れませんなあ。韓国は右に左に大きく揺れますが、その振幅の大きさは日本の無責任な日和見「言論商売」の気楽さとはまったく異質なものだと考えるべきでしょう。


北朝鮮が9日に核実験を実施した後、中国との通商区3か所を閉鎖していることが分かった。閉鎖された通商区は、北朝鮮との国境付近にある中国・遼寧省の東港と上河口、吉林省の図門。中国紙の環球時報が19日付けで報じた。同紙は、17日から2日間にわたり北朝鮮・新義州と、鴨緑江を挟む対岸の中国・丹東一帯を取材した記事を掲載した。丹東の一般市民は一部の外国メディアが報じたのとは異なり、緊張した雰囲気が感じられないとした。ただ、北朝鮮が3つの通商区を閉鎖したため、現在はほぼ唯一の通商区として丹東で中朝貿易が行われているという。

■地続きの「国境」というのはこのような物です。一旦、突破されたら地獄が現出するのが国境地帯です。交易品や人間の行き来を制限したり緩和したりすることで、国家の意思を示し合って外交交渉の前提となるメッセージを交換し合うのです。海洋列島国家の日本は港湾と空港でしかこの種のパフォーマンスは見せられません。ところが、海岸線は丸裸で海上保安庁には国境警備に必要な物理的な能力も法的な権利も与えられていないのですから、日本海岸から看護婦さんでも中学生でも拉致し放題だったわけです。拳銃・麻薬・テロリスト、日本の海岸からは何でも入り込めたのです。こんな物に対しては在日米軍も核の傘もまったく役に立ちませんでした。そんな情けない国に対して「6箇国協議に出席する資格無し」という理屈は、一応の説得力は有ります。但し、盗人猛々しい!と悪口を言われない資格の有る国が言えば、という当然の条件はありますが……。

続・北の原爆50年史 其の弐拾八

2006-11-20 06:07:02 | 歴史
■血族内の争いに腰巾着の官僚群が干渉すれば、たちまち陰謀渦巻く陰湿な権力闘争が始まるのは世の常でありますが、週刊誌もワイドショーも無い国の事ですから、その内幕は一切外部には漏れずに密かに世襲が決定したものですから、2代目は形振り構わず父親を永久に祭り上げる大事業を打ち出したのだそうですなあ。錦繍記念宮殿と言う名の現代版ピラミッド?を建設して、御遺体を永久保存しました。これは総工費「8億9000万ドル(多分、真札)」で周囲に1キロメートルもの回廊が付いているそうですなあ。3周忌には90.5メートルの「永世塔」まで付け加えられたとか……。古代エジプトの王様も御釈迦様もビックリ仰天?比較の対象になるのは秦の始皇帝ぐらいでしょうか?でも、この親孝行プロジェクトに使われた資金を食糧輸入に当てれば、3年分の食糧不足が解消できるという計算があるそうです。首領様を拝みながら餓死する幸せ?

■「主体思想」はどんどん儒教臭くなって19世紀には最先端の社会科学理論だったマルクス主義が先祖返りしてしまったようなものです。核実験も父親の悲願だったのですから、名付けるなら親孝行主体主義爆弾とでも言うのでしょうなあ。


そうした徹底した独裁に基づく全体主義の国家は、外部の圧迫が強くても容易に崩れない。権力者が除去されても、指導部がそれなりの弾力性を発揮し体制を維持していく可能性がさらに大きいということだ。もし北朝鮮が崩壊し、米国と同盟関係の韓国が主導する統一が実現されるとしても、中国が心配する理由はそれほどない。 韓国は中国を脅威する国ではないからだ。韓国は間違いなく、最も大きく強力な隣国の中国と、何とかして良い関係を維持しようとするはずだからだ。すでに中国は、韓国の貿易対象国のうち最も大きな市場であり、最大の貿易のパートナーだ。したがって中国は考え方を変えなければならない。中国はもう少し積極的に、北朝鮮に対し「核保有放棄」への圧力を加え、北東アジアの安定をリードし、それを自身の影響力を拡大する機会にしなければならない。

■この辺は韓国ナショナリズムが色濃くなってしまっています。それほど簡単に米中韓の強固な関係が築かれるとは思えませんし、北京政府は東南アジアから中東・アフリカまで積極的な外交を展開している真っ最中ですから、北朝鮮を見棄てるような国際信義に大きく傷を付けるような決断をする可能性は極めて低いと思われます。また、米国と中国とはその思惑はまったく違っているにしても、共通の認識として東アジアにおける日本は常に潜在的な最大の脅威である事には変わりはないでしょう。従って、両国が日本を棄てて韓国のために北朝鮮を崩壊に追い込むとは考え難いのです。


…北朝鮮の核実験を防げなかったことには米国の責任もなくはない。米国は北朝鮮の核保有を防ぐため平壌(ピョンヤン)に「圧迫」ばかり加え、核保有を放棄すればどんな「ニンジン」があるのかについては、それほど説得や対話の努力をしていない。また、中国の変化した位相を認めず日本との関係だけを重視し、東アジアの安保システム作りに手を抜いていたのも失策だ。 米国は、東アジアでの中国の力と役割を認め、北朝鮮の核問題を解決するうえで中国の積極的な介入を誘導すべきだ。キッシンジャー元米国務相は71年に北京で、周恩来中国首相に会い、そうした見事な突破口を作ったことがある。

■正に、この71年に行われたキッシンジャー・周恩来の秘密会談で、両国の本音が交換されたのでした。周恩来が大きく頷いたキッシンジャーの発言の中核に、日本脅威論と日本悪玉論が有ったことは後に公開された文書で明らかになりました。


米国をはじめ全世界は、21世紀がアジアの世紀だとの点に同意している。米国が本当にアジアの重要性に気付くならば、もう一度中国と積極的に対話し、北核問題の解決に臨む姿を見せるべきだ。考え方を変えれば北朝鮮の核実験は、そうした新たな進展に向けた逆説的な契機になりうる。
韓国中央日報 2006年10月19日

■発言の場所が米国のジョージタウン大学ですから、話の中からますます日本の影が薄くなるのは仕方が無いでしょうが、これほど的確な状況判断が披瀝された結果が、要するに中国の要請に応じて米国は「米朝2国交渉」に入るべきだ!というメッセージになっています。日本のジャーナリストの中から、こういう韓国メディアの動きに対抗して米国に乗り込んで熱弁を振るう人物がまったく出て来ないというのは、実に情けない話です。


ブッシュ米大統領は18日、北朝鮮が核関連物資・技術を、核開発を進めるイランや国際テロ組織アルカーイダなどに売却した場合、「重大な結果を招く」と述べ、金正日総書記に対し厳しく警告した。北朝鮮の核が拡散することに懸念を示したもので、米側では大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の枠組みも活用して、国連安全保障理事会の決議が禁じた北朝鮮と第3国、テロ組織の核関連物資・技術移転に対する監視を強める構えだ。……ブッシュ大統領は「核兵器の移転情報を入手すれば、核物資を積んだ船舶や航空機を検査して移転を差し止めることになる」と指摘した。米国が必要な措置を取ることで関係した国や組織も「重大な結果」に直面するとも語った。

■ライス国務長官を東アジア歴訪に送り出した直後に、ブッシュ大統領はこんな事を言っていたのです。内容は正しくとも、時期を逸してしまえば政治家としては決定的な失敗と判断せざるを得ません。地政学上、陸路での臨検は不可能ですから空と海を舞台にした封じ込めをするぞ!と肩を怒らして見せねばなりません。ところが、イラクで手一杯、アフガニスタンは英国を中心とした欧州軍に丸投げ状態だという事は衆知の事実ですから、張本人にもまったく恐怖感を与えられなかったでしょう。相手は迎撃と持久戦の「準備完了」を言い立てているのに、こちらには攻め手が無いのですから勝負になりません。


大統領は「北朝鮮指導者が責任を問われる」と述べ、核移転を思いとどまるよう金総書記に強い警告を発した。ただ、移転が確認された場合に「(北朝鮮に対して)軍事手段を取るのか」との質問に対しては、言及を避けた。
 北朝鮮の核実験後、米政府が強く懸念しているのは(1)北朝鮮の核兵器技術の向上と量産(2)イラン、反米テロ組織への核拡散(3)日韓など周辺国の核開発競争-の3点だ。
ライス国務長官が訪日した際「日本の防衛」に対する米国の責務履行を強調したのは、核開発競争を未然に押さえ込むためだった。…。
産経新聞 - 10月20日

続・北の原爆50年史 其の弐拾七

2006-11-19 09:48:50 | 歴史

国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に基づき、制裁の履行監視に当たる安保理の制裁委員会は19日、専門家レベルによる会合を行った。制裁委員会は当面の作業として北朝鮮への禁輸対象品目のリスト作成に当たる。委員長についてはスロバキアのブリアン国連大使が有力視されている。制裁委は、戦車などの大型通常兵器や核・ミサイル・大量破壊兵器の開発関連物資、ぜいたく品の禁輸品目や金融資産凍結の対象となる大量破壊兵器計画にかかわる団体や個人を指定。こうした人物の入国禁止など決議が履行されているかどうかを監視する。

■皮肉な事に、数週間後には北朝鮮がチェコから物騒な物を密輸しようとした疑惑が公表されました。ソ連という重石が利いていた頃はチェコ・スロバキアという一つの国だったのですが、元々、西半分のチェコはドイツ語圏に属した工業地域で、東半分はスラブ語圏の農業地域でしたから、東西統一を果たしたドイツが背負った経済的な重荷を歴史を逆転する形で投げ捨てたのがチェコと考えられるような関係に有りますからなあ。チェコ製の武器は高性能の上に安価なので、闇市場でも大変な人気とか……。


外交筋によると、大量破壊兵器関連の禁輸品については、原子力供給国グループ(NSG)の作成したリストや、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)で定められた規制対象品目などが参考にされている。しかし、「高度に技術的な話だが、いろいろな情報に基づく話なので政治的な性格も持つ」(外交筋)ため、専門家、大使レベルの両方で断続的に協議が行われる見通し。制裁委は、加盟国から30日以内に寄せられる報告をふまえ、最低90日ごとの履行状況を安保理に報告する。
産経新聞 - 10月20日

■半世紀も臨戦態勢を維持している北朝鮮は、それこそ稼動する軍事博物館のように骨董品を並べているような状態ですが、少なくとも第一次朝鮮戦争と同じ展開になれば、「絶対に負けない」地下道ゲリラ戦で耐え抜く戦術は相当に攻撃側を苦しめるはずです。トンネルを使ったゲリラ戦は米国にとってはヴェトナムの悪夢を再び体験することになるので、時々漏れ出て来る北朝鮮の地下要塞の情報は結構な抑止力になっているような気がします。本気で空爆して地上戦闘に入るまでに抵抗力を根こそぎにする心算ならば、ただでさせ不毛の荒地が多い北朝鮮を月面と見紛う風景に変えねばなりません。そうなれば、今話題沸騰の映画「硫黄島」の再現ですなあ


「北朝鮮が行なった核実験で、最大の失敗者は中国だ。中国が本当に積極的に臨めば、北朝鮮を交渉のテーブルに座らせることができる」。 李洪九(イ・ホング)元総理(中央日報顧問)は17日(米国時間)、米ワシントンのジョージタウン大学で行なった講演でこのように述べた。続いて「米国は中国の変化した位相を認め、中国が役割を果たせるよう配慮すべきだ。これまで中国は北朝鮮に対し、レバレッジの役割を積極的に果たしていない」と指摘した。次は講演の内容をまとめたもの。

■この講演内容はなかなか面白いものです。どうして日本のマスコミは取り上げなかったのでしょう?怪しげな「専門家」をテレビに引っ張り出して「一言コメント」を強要して、次の話題に繋いでばかり居ると国民がどんどん愚かになってしまうような気がしてなりません。韓国の人々皆が盧武鉉さんの白昼夢を共有しているわけではない事を確認するためにも、じっくり読んでおくべきでしょうなあ。


北朝鮮が行なった核実験の最大の被害者は誰だろうか。韓国をはじめ北朝鮮の周辺諸国は、6カ国協議を通じて北朝鮮の核保有を阻止しようと努めてきた。だが、強く豊かな5カ国(韓米日中ロ)が最も弱く貧しい国(北朝鮮)を防げず、結局核実験を招いてしまった。これは明確に外交の失敗だ。全ての国が失策した。だが最も大きな失敗をし、だから最も大きな責任がある国は中国だ。 英紙フィナンシャルタイムズが最近、中国の専門家をインタビューしたものを見てみると「中国政府が北朝鮮の核実験を防げなかったのは、現代中国が1949年に建国して以来の最も大きな失敗だ」としたほどだ。……ひとまず日本が北朝鮮の脅威を口実に核武装に進めることもでき、台湾と韓国も同じ行動を取ることができるからだ。

■「核ドミノ」と呼ばれるこの連鎖は、冷戦構造が消失した時から、世界中の軍事研究家の間では、時間の問題とされていたテーマです。特に世界で最も多くのプルトニウムを貯蔵して(成功すれば)世界で最も高性能のロケット技術を持っている原発大国の日本が、「世界唯一の被爆国」という布切れ一枚で米国があちこちに配備している核兵器の抑止力を存分に利用して貿易立国になったカラクリは、世界中の軍関係者にとってはお見通しでした。ちょっとした切っ掛けで日本が「防衛力としての」核兵器開発に踏み出して自らの手で世界中に広がっているシー・レーンを守る姿勢を見せることになるだろう、と監視を続けていたはずです。


そうなると、すでに核保有国になったインドとパキスタンに続いて、中国は核保有国に囲まれるようになる。第一の国家的課題として経済成長を目ざしている中国としては途方もない苦境だ。安保も問題だ。北朝鮮が核弾頭が搭載されたミサイルを発射すれば打撃を受けるようになる最も近い地点はどこだろうか。物理的距離にはワシントンでも東京でもなく、北京が最も近い。それにもかかわらず中国は、北朝鮮の核保有を阻止することに消極的な態度を取ってきた。北朝鮮の崩壊を懸念したからだ。しかし、それは過去と硬直したイデオロギーにこだわった誤った判断だ。事実上「北朝鮮の崩壊」という概念自体があいまいなものだ。北朝鮮は、マルクシズムに基づいた伝統的な共産国家とはかけ離れた全体主義の国家だ。金正日(キム・ジョンイル)総書記というひとりが、権力を世襲、独占し、唯一のイデオロギー(主体思想)で国中を掌握しているからだ。

■マルクスが残した革命理論はレーニンによって実践的な暴力理論になり、スターリンが仕上げに監視密告制度を導入して恐るべき弾圧国家を生み出したわけですが、これを手本にした国々は次々と破綻して行き、親玉のソ連が崩壊すると同時に自己崩壊を遂げました。早めにソ連から離反していた中国共産党と朝鮮労働党は生き残り、ソ連に実質的に見棄てられていたキューバは健気(けなげ)に米国と上手に喧嘩し続けているようなわけです。チャイナには歴代王朝という統治方法の教科書が揃っていますから、主席・総書記―何と呼ぼうと皇帝に似た絶対権力者を祭り上げて全領土を網羅する官僚機構がすぐに出現する仕掛けになっております。

■しかし、こうした伝統の無い朝鮮民主主義人民共和国(本名はロシア語)は、スターリン体制をそっくり真似てみたのの、それが時代遅れになると結局はカルト染みた個人崇拝に走らねばならなくなりました。『西遊記』のも出て来ないような神憑(がか)り伝説を並べて、天井知らず恥知らず遠慮会釈の無い大盤振る舞いの大宣伝をエスカレートさせたので、宣伝言葉の中だけには神様が統治する地上の楽園が完成してしまったのでした。大日本帝国時代のインフラ遺産を基盤としてソ連の技術指導と莫大な援助によって動き出したタカリ国家体制は、農業地域だった半島南部を凌駕する発展を見せたものです。しかし、生身の人間を神様扱いする個人崇拝の哀しさで、御当人の寿命が尽きる時が国家崩壊の危機となるわけです。

続・北の原爆50年史 其の弐拾六

2006-11-19 09:48:26 | 歴史
■北朝鮮は自らは核保有国と遇される新たな国際会議のようなものを望んでいる節が有りますが、実験後の1箇月ほどは、失敗だ半分成功だとややこしい推測が飛び交っておりました。米国は口では「核保有国とは認めない」と声を荒らげていますが、持った者勝ちの世界を自分の手で組み立ててしまった以上、核保有国でもない北朝鮮に核兵器の廃棄と再開発を断念させねばなりません。同盟国の日本は、米国のコメントには何も言及せず、自国の核武装につていの「議論」をすべきかどうかを議論にもならない口喧嘩のテーマにしている始末です。現実の時間軸上では、既にヴェトナムのハノイを舞台にしたAPECが開催されているわけですが、「歴史」を追いかけているので話は1箇月前の事になります。

韓国政府は北朝鮮核実験による対北制裁として金剛山(クムガンサン)観光客に対する政府補助金の支援を中断する方針を18日決めた。また内金剛(ネグムガン)観光と開城(ケソン)観光、開城工団追加分譲を含む対北新規事業の承認をすべて凍結することにした。しかし補助金の規模が年間30億~50億ウォン水準にすぎない上、7月のミサイル発射でもともと推進が難しい開城工団分譲拡大などを対象にしたという点で強い制裁を要求してきた米国との衝突は避けられない見通しだ。

■小さな事から制裁決議に同調する姿勢を示さねばならない韓国は大変に苦しい立場に置かれております。太陽政策に基づいて支払われた莫大な援助資金は、遠い将来への投資であると同時に、当面の保険でもありますから、それと全部止めてしまったら投資は無駄になり、保険が切れて明日からの生活に不安が生じます。それに替わる保証を朝鮮戦争で殺し合った中国に求めるわけには行きませんし、軍事的な独立を要求している手前、米国にすがりつくのは見っともないことになります。


アレクサンダー・バーシュボウ在韓米大使はこの日「韓国政府が金剛山観光と開城工団事業に対して深刻に再検討していると聞いている」とし「これ以上何もなかったように行動してはいけない」と述べた。……観光補助金は教師や子供たちの北朝鮮体験学習と離散家族などの観光費用の補助名目で組まれてきたが、2002年4月以後9万2000人に294億4000万ウォン(約37億円)が支給された。予算はすべて国民の税金である南北協力基金であてた。

■この記事では「37億円」と報じていますが、累計で「540億円」が投入されているそうですし、入山料名目で毎月1億円以上が支払われているという話です。「体験学習」「修学旅行」に大規模な予算を付けたのは、南北統一に向けて国民レベルでの交流を広げてゆっくりと友好と融和の雰囲気を育てて行こうという計画なのでしょうが、独裁体制の国家がこの手法で瓦解した例(ためし)は無いようです。日本からの人道的援助も将軍様への贈り物と国家としての謝罪の印だと宣伝されてしまいましたし、黙っていれば遠い昔の朝貢貿易そっくりの構図で報道されてしまいます。まあ、それを強引に友好関係の証拠だと言い張る政治家やジャーナリストが日本にはたくさん居るわけですが……。


金剛山観光に対して宋旻淳(ソン・ミンスン)青瓦台(チョンワデ、大統領府)安保政策室長も「修正や補う部分があれば改善点を考える」とし、……中央日報と現代経済研究院主催で開かれた「21世紀北東アジア未来フォーラム」で「政府は南北経済協力や開城工団事業、金剛山観光を中止すると言っていない」とし「運用方式が国連安保理決議や国際社会要求と、調和・符合するように必要な部分を調整、検討する」と明らかにした。 また補助金中断とともに政府は金剛山観光にかかわる政府レベルの現地施設工事や資金投入もしないことにした。政府は2004年9月、観光客便宜のため27億2000万ウォンをかけて観光道路20キロを舗装した。政府はこれとともに韓国企業と経済協力事業をしてきた北朝鮮側機関に対する全面的な検討作業にも取りかかった。当局者は「米国など国際社会が大量破壊兵器(WMD)関連企業と指定した企業かどうか、また今後の国連制裁委がリストにあげる北朝鮮企業と取り引きしたか、などのほか北朝鮮軍部との関連性などを集中して見ていく」と述べた。政府はこのような対北制裁構想を19日に訪韓するライス米国務長官に説明し、日米との調整を経て近いうちに決める予定だ。……
韓国中央日報 2006年10月19日

■結局はのろのろと「微調整」をする事を決定したという一点で米国から飛んで来るライス国務長官を納得させようという魂胆だったのですが、ブッシュ大統領個人からもすっかり嫌われている盧武鉉さんが言う事などに始めから期待していなかったのでした。


ライス米国務長官は20日午前、北京入りし、中国の李肇星外相と会談した。……そろって記者会見に臨み、北朝鮮核問題で米中両国が「対話を通じた平和解決」を目指すことで一致したことを明らかにした。この中でライス長官は北朝鮮の核実験発表は「挑発的行為」と非難。そのうえで、北朝鮮の核開発問題をめぐる6カ国協議に「北朝鮮が無条件で復帰することを望んでいる」と改めて呼び掛けた。李外相によると、双方は朝鮮半島の非核化で努力することで合意。李外相は「関係各国は慎重さと冷静さをもって平和的解決を目指す」と述べ、国連安保理の対北朝鮮制裁決議については「中国は義務を果たす」と表明した。ライス長官は同日午後、胡錦濤国家主席や温家宝首相と会談する。さらに、胡主席特使として平壌で金正日総書記と会談した唐家セン国務委員とも会って直接、北朝鮮側の反応を聴くことにしている。
産経新聞 - 10月20日

■米国による先制攻撃だけは避けたい北京政府としては、世界で只一人平壌で金正日将軍様の肉声を聴いて来た唐家センさんの「耳」を最大限に利用していました。何らかの情報を得ていたらしいライス国務長官は6カ国協議への「無条件復帰」という高いハードルを設定しますが、全てを知っている李肇星外相は、米国に対して「対話」「慎重」「冷静」を呼び掛けている事を印象付けるとともに、国連安保理の制裁決議には同調するという点は抑えて対米協力を約束して見せることで、北朝鮮と断続的に続けられているはずの水面下の説得工作の圧力にしたいと考えたようです。

続・北の原爆50年史 其の弐拾伍

2006-11-17 22:26:54 | 歴史

会談後、安倍首相は19日昼、首相官邸で記者団に対し、「国連決議を実効あるものにすることが北朝鮮の政策を変えさせることにつながる。そのために何ができるか、日米の事務当局者同士がよく話合って、詰めていくことになる」と述べた。ライス長官、麻生太郎外相はそれぞれ19日午後にソウル入りし、韓国の潘基文外交通商相らと会談。6カ国外相会合の実現に向け最終調整する。
産経新聞 - 10月19日

■同日の夜にはライス国務長官と韓国外交通商部の潘基文(パン・ギムン)長官とが会談するという強行軍で、とても落ち着いてあれこれ込み入った話など出来ないはずです。この慌てぶりから、日本と韓国に同時に噴き出した「核武装議論」の火消しに走り回ったのだろうという推測が取り沙汰されるのも当然です。日本政府は聞き分けの良いところを見せたのですが、韓国は国内の世論がどうなろうと米国政府が何を言おうと、現政権の存在意義が消滅してしまうような対北朝鮮強硬路線など取れるものではないません。案の定、19日に行われた外交通商部の潘基文(パン・ギムン)長官とライス米国務長官による韓米外相会談について、米メディアは「韓国政府は金剛山観光と開城工業団地の対北朝鮮事業を持続するとの立場を表明した」と一斉に報じたのでした。

■少なくとも開城工業団地で生産されているのは民生品に限られているようですから、この輸出は止められませんし、金剛山観光の方も税金を投入して高校生の修学旅行先に指定しているくらいですから、これも止められませんなあ。善隣外交や平和外交の象徴と言われても、そこから揚がる収益が良からぬ目的に流用されるのは分かり切った事だと多くの国々は考えています。特に米国内には核武装と長距離弾道ミサイルに対するアレルギーが強いですから、ニューヨークタイムス紙は「韓国、対北事業持続を表明」との見出しで会談内容を報じたそうです。それだけでは危なっかしいので、ライス長官が「韓米同盟の重要性」を強調して、北朝鮮制裁の目的が緊張を高めることではなく、6カ国協議復帰と核プログラム放棄だと説明したとも伝えたそうです。

■ワシントン・ポスト紙も、ライス長官が北朝鮮に対する全面的な制裁を履行するよう圧迫したが、強行措置が「戦争を触発する可能性」があるとの懸念が韓国内で広がっているため、韓国高官らは事業中断の決定を先延ばしにしたと報じました。AP通信も、韓米日の3カ国は北朝鮮の核実験に対し一致した立場を示したが、韓国が米国のような強行アプローチ策を即刻採択する動きはまったくないと報道しました。報道内容が混乱していて、ライス長官の訪韓が無駄足だったのか何らかの成果が有ったのか、さっぱり分かりませんが、盧武鉉政権の発足以来の動きを見ていれば、こんな慌しい会談で政策を転換するとはとても思えません。

AFP通信は、ライス長官に同行中の米国務総省高官が「盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と潘長官が、国連安全保障理事会の制裁決議に合わせ北朝鮮包容政策の全面再検討を約束した」と述べたと紹介している。匿名を求めた同高官は、韓米間の会談で韓国側が南北関係全般を再評価していることを明らかにしたと紹介、韓国は間もなく安保理決議履行案を発表すると述べたという。
YONHAP NEWS - 10月20日

■潘基文さんは「油ウナギ」という渾名を持っているそうですから、その場その場で卒の無い返答をして切り抜けるのが上手なのでしょう。「再検討」するからと言っても、結局、元の木阿弥で現行の政策を続ける事になりましたと結論付けても構わないわけです。折角、ライス国務長官が乗り込んだのに、どうやらこの時期の韓国政府は北朝鮮と気脈を通じたかのように、足並み揃えてブッシュ政権が中間選挙でボロ負けするのをじっと待っていたようです。頑固で優柔不断な韓国政府に失望したライスさんは、翌日には北京に入りました。


中国外交部の劉建超・報道局長は19日の定例記者会見で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に行っている支援について「正しい政策だ」と述べた。「人民日報が社説で『仮に北朝鮮がこのまま核実験を継続するならば、食糧援助やエネルギー支援を打ち切るべきだ』と主張したが、中国政府も同じ方針か」との質問に答えた。
劉報道局長は「マスコミがどんな主張を発表しようと我々には口をはさむ権利がない。これまでに何度も申し上げてきたように、中国は北朝鮮人民が生活を改善し、経済的困難を克服するために力の及ぶ限り支援を行ってきた。これは正しい政策であり、人道主義的な問題の改善に資するものだ」と述べた。

■まるでマスコミが政府の影響を受けない自立性を確立しているかのような言い方ですが、検閲どころか編集権事態を党政府が独占的に掌握しているのは衆知の事実です。『人民日報』の社説は、露骨なアドバルーンとして便利に使われる媒体ですから、一応、強硬意見も国内に存在しているかのように装って見せ、実際の政策は変えないという念の入った対応です。


会見では更に「外交部が主管する雑誌『世界知識』が『北朝鮮が核実験に踏み切ったので、6カ国協議は破局する可能性が高い』と予測している」との指摘が出された。これに対して劉報道局長は「こういった類いの報道は執筆者や雑誌社の見解を表すに過ぎない。中国政府の方針と一致することもあれば、そうでないこともある」「関係各国は『現在でも6カ国協議は朝鮮半島の核問題を解決するために有効な手段だ』と考えており、北朝鮮が復帰することを望んでいる。6カ国協議は破局したわけでなく、まだ希望がある。中国もこのために努力を続けている」と答えた。
サーチナ・中国情報局 - 10月20日

■確かに、国連の場でも支離滅裂な事しか言わない北朝鮮を闇から引っ張り出すには北京政府が睨みを利かせている6箇国協議という席しか、今のところは有効な場所が無いのですが、そこでも北朝鮮の勝手な振る舞いが目に余り、議長役の中国が玉虫色の作文を工夫しては時間稼ぎをしているだけです。そうやって稼ぎ出された時間を誰が一番上手に使っているかが問題なのです。クリントン政権が残した失政の一つがKEDOのペテンだったわけですが、この後始末をしっかりやらないままブッシュ政権はイラク攻撃に突っ込んで行ったのが大間違いだったことになりそうです。北朝鮮はKEDO第2弾となる甘い話を期待して民主党政権の誕生を心待ちしている事が、中間選挙後に明らかになりましたが、これは非常に危険な事だと言えるでしょうなあ。

続・北の原爆50年史 其の弐拾四

2006-11-16 13:54:30 | 歴史

2006年10月14日、国連安全保障理事会が北朝鮮制裁決議を採択。

■ここまでは、核実験が生み出した衝撃が世界的に広がって日本の拉致被害者家族の皆さんや、安倍新首相も勢いづくほどの盛り上がりが見られたのです。しかし、すべての鍵を握ると言われている北京政府が、国際社会の動きを横に見ながらも独自の動きを見せたのでした。


2006年10月19日、唐家セン委員が平壌で金正日総書記と会談。

■さてさて、この時の会談内容を巡って世界中のマスコミがスクープ合戦を繰り広げます。発表されたのは2枚の写真だけ……。金正日将軍様が「謝罪」したかどうか?などという馬鹿馬鹿しい限りの問い掛けが続きました。あの国が建国のペンテンを含めて謝罪したり正直な事を口にした事など有ったのかなあ?と思い出してみれば分かりそうなものです。まして、50年以上もの悪戦苦闘の末に手に入れたちょっと不良品めいたにしても、原爆には違いないのですから、有る事無い事で理由付けして見せるのが当然の話なのです。その後、父の代に引き起こした韓国大統領暗殺未遂事件や日本人拉致事件の時とまったく同じ、「一部の冒険主義者」の仕業にして済まそうとしているなどというフザケた噂まで流れて来るのでした。

■ライス米国務長官が日本にすっ飛んで来て、首相と外相に何事かを必死に説明したのですが、「瓶の蓋理論」はまだ生きている事を世界中にアッピールしようとしているのは明らかでした。かつての大日本帝国陸海軍が復活するなどという白人世界の悪夢を見たくないという世界的なコンセンサスの下に、米国が日本の国防を肩代わりして日本の軍事力を抑制して置くという旧来からの理屈ですが、その奥底に隠されているのが日本の核武装という大問題であることを多くの人が思い出したのでした。


安倍晋三首相は19日午前、首相官邸で来日中のライス米国務長官と会談し、北朝鮮の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議を速やかに実施するため、日米両国が緊密に連携していくことを確認した。また北朝鮮の問題で中国の役割が重要との認識で一致した。
 ライス長官は「日本の安全保障は米国の安全保障だ」と明言、「日米同盟はミサイル、核実験に応える能力が十分にある。北朝鮮は(自国の)安全保障環境を変えられると思ってはいけない」と北朝鮮を強く警告した。
 
■要するに、北朝鮮の件は米国がきっちりと落とし前を付けるから、日本は大人しくしていて頂戴ね。という事でしょう。そう言えば、北朝鮮の核疑惑が濃くなり始めた頃に、拉致被害者家族の横田夫妻をホワイトハウスに招待したりしたのも、こうした日本の核武装を早めに牽制する動きの一環だったのかも知れませんなあ。


安倍首相は「北朝鮮の挑戦の中で、アジアの安定のための日米同盟であることを示していきたい。ミサイル防衛(MD)を含めて、日米同盟を強化していくよう努力する」と述べた上で、「国連決議を実効あるものにするため、日米のしっかりした協議が必要だ」と指摘。北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査などを想定し、日米間の役割分担について実務者協議を加速化させる考えを示した。

■北朝鮮の船舶検査と言うのは「PSI(大量破壊兵器拡散阻止構想)」に関連した話です。しかし、対テロ戦争でも灼熱のインド洋でせっせと給油作業を続けるしかない日本の立場からすれば、怪しい北朝鮮船舶を見つけても米海軍に「御注進」して追い掛け回して貰うしかなく、それを機関砲の弾が届かない場所から遠巻きに眺めているだけになりそうです。まさか、応援歌を大音量で流すわけにも行かないでしょうなあ。頑張って海上保安庁の巡視船に警察官を便乗させて参加したところで、準軍事行動として行われる臨検作業の足手まといになるばかりです。まあ、そんな無防備な日本だからこそ、好き放題に拉致でも密輸でもやれたのですが……。


また中国の北朝鮮への対応について、安倍首相は「中国は今までよりも強い立場で今回の事態に対応している」との認識を表明。ライス氏は「(中国が)北朝鮮を違う方向に動かすよう努力してくれることを期待する」と応じた。ライス氏は北朝鮮による拉致問題について「引き続き日本の立場を支持する」と表明、安倍首相は「長官から拉致について言及があったことを大変心強く思っている」と謝意を示した。

■拉致問題に関しては、そのまま国連人権委員会での動きと連動していて、11月13日になって「すべての人を強制的失踪(しっそう)から保護するための条約(強制的失踪防止条約)」案が国連総会第3委員会(人権)に提出されて満場一致で採択されました。年内には総会で採択されて成立する見通しだそうです。日本としては「核から拉致か」というい馬鹿馬鹿しい選択に追い込まれないように慎重に事を運ばねばなりますまいなあ。何せ、北京政府は6箇国協議の元締めとしての面子さえ保てれば、あとは軟着陸を画策するのは目に見えているのですから……。