文庫で発売なのでこれは図書館に申し込まずに買ったマイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズ。
中国人の酒店店主が殺されて、その捜査中、容疑者が関係するであろう三合会という中国犯罪組織が香港にいるボシュの娘を誘拐した。
今回はかなりハードボイルドな展開だけれど、娘を救うために感情もむき出しな活動、ボッシュっていろいろな主人公のなかでも一番アクが強い。
主人公のボッシュはジャズが好きなので、必ずジャズについての記述が出てくる。
ロン・カーターのアルバム『Dear Miles』から「天国への七つの階段」に耳を傾ける。カーターは、この五十年間でもっとも重要なバース奏者のひとりだ。~ 自身のアルバムの録音であれ、ほかのだれかののための録音であれ、カーターの演奏はいつも際立っていた。それはベース奏者として、カーターがけっして伴奏者になれないからだらだ、とボシュは信じている。カーターはつねに要だった。カーターがつねにビートを刻んだ。たとえマイルス・デイヴィスのトランペットがまえにあったとしても。
意見はいっしょじゃないけれど、熱くかたってくれるのは一向に構わない。もう一つ
きょう、プレーヤーに入っているのは、最近発見したお気に入りの音楽だった。トーマス・スタンコは、ポーランド出身のトランペット奏者で、まるでマイルス・デイヴィスが蘇ったような音を奏でた。スタンコのトランペットは、鮮烈で魂がこもっている。監視には格好の音楽だ。ボッシュに警戒態勢をとらせつづけてくれた。
でもミステリーだからそれも一つ
おのれの人生の方程式に、はじめてボシュは、“もし”という項をいれた。もし娘を連れ戻せるなら、おのれを救う方法を見いだすだろう。もし二度と彼女に会えないなら、救済はありえない。