人類殲滅作戦に使用されている生物兵器
生物兵器(せいぶつへいき)とは、細菌やウイルス、あるいはそれらが作り出す毒素などを使用し、人や動物に対して使われる兵器のこと。国際法(ジュネーヴ議定書)で使用が禁止されている。化学兵器と合わせて貧者の核兵器と言われる。主なところでは天然痘ウイルスや炭疽菌、ボツリヌス毒素などがある。
治療法があって自分の身を守りつつ敵国にダメージを与えられる細菌やウイルスが適し、治療法が確立していないものは適さない。使用方法は、多種多様であり、砲弾や弾道ミサイルの弾頭に装填する方法、航空機などより噴霧する方法などがある。
フィクション作品においては「生体兵器(動物兵器)」と混同されることがあるが、別物である。核兵器などに比べて簡単に入手ができ(失敗したとはいえ、民間のオウム真理教が炭疽菌を培養して散布した)、与える被害が大きいことや以下の特徴からテロリストなどに使われることが危惧されている。
また、医学や細菌学の研究、生物兵器に対する防御法の研究という建前でひそかに開発が行われていることがある。
核兵器、生物兵器、化学兵器の3つをあわせてNBC兵器もしくはABC兵器と呼ぶが、この中でも生物兵器はもっとも費用対効果に優れるとされる。核兵器の開発は高度な技術と施設が不可欠であり、化学兵器も兵器として十分な量を製造するためにはそれに伴う規模の施設と原料が必要となる。
しかし生物兵器の中には、ある程度の知識と技術があれば大がかりな設備が無くても製造することができるものも存在する。反面、使用時の外部条件(例えば気象)に左右される部分が多いことや、与える被害を予測しにくく、その場で効果が現れることもないため、ほかの二つに比べると兵器としては使いにくい。
生物兵器が化学兵器と大きく違うところは細菌兵器を例にすると感染してもすぐには効果が現れず、人から人への感染を起こすことである。 感染の方法、感染力は様々であるが、生物兵器の多くは生物から生物へ感染する。化学兵器は風の影響や、付着していた化学兵器の蒸発による二次被害などがあるものの、基本的に被害は散布された周辺のみにとどまる。
しかし生物兵器は、感染者が移動することにより広範囲にわたって影響を及ぼす。特に近年は、丸一日あれば世界のどこにでも行けるほど移動手段が発達しているため、被害は想像以上に大きくなる可能性がある。
特にテロに使用されやすいとするもう一つの理由は潜伏期間の問題で、感染してから数日たってから発病するため、感染経路の特定が難しく、その間に実行犯は国外などへの逃走が可能となる。
生物兵器の歴史
ウイルスや細菌を攻撃の手段とする考えは紀元前からあり、実際使用されることもあったが、いずれの場合もこれまでの経験から病気になると考え使用したものであり、科学的な手法に基づくものではない。ウイルスや細菌を人工的に培養して攻撃の手段としての使用を考えるようになるのは20世紀に入ってからである。ただし、見方によっては変わる。
例えば、中世の包囲戦において包囲下にある城・都市にペストなどの感染症による死者の遺体を投棄し、感染症の発生を狙ったこと、また18世紀北アメリカのフレンチ・インディアン戦争で、英国軍が天然痘患者の使用した毛布をインディアンに配布し、インディアンの患者の半数が死亡した。天然痘は、患者の使用した物品からも感染することがあり、それを狙ったのである。
生物兵器への対応
生物兵器に対する最も有効な対応は、兵器として使用する可能性のある国家・組織に生物兵器を保有させないことである。そしてもし生物兵器が使用された場合には感染の拡大を防ぐため、患者の隔離と治療を行う必要がある。
保有の禁止 生物兵器は従来より戦争で使用する兵器としての保有は生物兵器禁止条約で禁止されているが、国際的に遵守されていたとは言えない。
また研究目的で個人が保有することは多くの国で可能であったため、近年までテロリズムに対しては十分な対応ができていなかった。1995年の地下鉄サリン事件を受け、世界的に生物兵器の保有に関する法体制の整備が進む。特にアメリカは2001年に炭疽菌を使用したテロが発生し、法整備がなされた。
日本では1982年に生物兵器禁止法が制定されている。自衛隊は対バイオハザードのための訓練も行ことが、必要。
隔離・治療 多くのウイルスや細菌は人から人への感染を起こすため、感染者の隔離が必要となる。通常は患者を隔離し、患者と接触した人へのワクチン注射を行えば感染を防ぐことができる。
しかし、兵器として使用された場合には多くの人が感染することになるため、通常の隔離では対応しきれない。その為状況に応じて地区の隔離や、最悪の場合その国への渡航を禁止し国まるごと隔離する必要がある。