日中関係が良好ではなくても急増する中国人富裕者の日本移住!
日本国にすり寄る中国政府!!
中国で何が起こっているのか?
日本は中国人富裕層の安住の地なのか?

中国に関する会話のなかで「潤」という単語が出てきたとしても、ピンとくる方は限られているのではないだろうか?
最近よく聞く「潤」とはなんなのか?
恥ずかしながら、『潤日(ルンリィー): 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(舛友雄大 著、東洋経済新報社)を読むまでは、この点に関して豊富な知識を持っているなどとは公言できない立場にあった。
では、「潤」とはなんなのか?
現在、多くの中国人アッパーミドル層が日本に「潤」してきているのだという。
その大半は経営・管理ビザで来日して起業し、きちんと税金も支払っているのだそうだ。
メディア関係者で「潤」してくる人も多いようだ。
しかし「潤」は、なにがきっかけで祖国を去る決心をしたのだろう?
日本に来ているのは、どのような中国人なのだろうか?
そもそも、なぜ他国ではなく日本なのか?
日本で、どんな思いを抱きながら暮らしているのだろうか?
疑問は尽きないが、「潤」のあり方をさまざまな角度から検証した本書を読み進めていくと、おぼろげながらその理由や各人が抱く考え方などがぼんやりと浮かび上がってくる。
ここでは、基本的なことがらをなぞってみることにしよう。
最大800万人が国外脱出?
「潤」という名称が中国で最初に出現したのは2018年で、2022年に入ってから本格的に流行するようになったという。
注目に値するのは、「潤」ということばが持つ意味合いだ。それは社会に対する一種の不満の表明であり、そこにはどうしようもない現状への嘆きが込められているというのだ。
『フィナンシャル・タイムズ』中国版のコラムニストで香港大学で教鞭をとるブライアン・ウォン助教授は、若者世代の動向からこの流行語を読み解いた。
「一般家庭の第2世代、第3世代は生活の中で大きなプレッシャーに直面するようになっており、(中略)若者は『躺平(タンピン)』(寝そべり)の態度をとるようになった」
しばしば聞く話だが、つまりは激しい競争のなかで、とくに大都市圏においてはサバイバルに近い状況が出現しているということだ。
そう考えると、「潤」はもともと激化する競争や就職戦線などによって不安にかられた若者が、局面打開を目指して海外を志向する動きであったことが推測できる。
興味深いのは、「潤」を実践する有志によってまとめられたというGitHubの「潤学綱領」に示された記述だ。
ここには、「潤」を志す人たちの心象が反映されているのである。
信仰的なニュアンスが強い表現は誤解を呼びそうでもあるが、それはともかく、中国人の追い詰められた状況を端的に言い表した文章であることは間違いなさそうだ。
ちなみに中国15億人(中国の公式統計では約14億人だが、オフィシャルに登録されていない中国人も多く存在する)のうち、年収12万人民元超が1億人ほど。
そのなかで約1000万人が情報封鎖を突破し、かつ外部ネットワークにアクセスする条件を備えているという。
さらに、そこから特権階級や既得利益者など200万人を除いた800万人が、潜在的な「潤」だと推定されるようだ。
いずれにしても今回の移民ブームは、「状況の悪化する中国から脱出する」という意味合いが強いのだろう。
日本移住ブームの源流
しかし日中関係は決して良好ではなく、「反日」を自称する人も少なくない。
にもかかわらず、なぜ「潤日」と呼ばれる中国人たちは日本にやってくるのだろう?
日本が「潤」のスイートスポットとなっているのは、欧米各国がゴールデンビザ(投資家ビザ)の縮小・制限に向けて舵を切る中で、日本は逆に関連する長期滞在系ビザの緩和に動いていることも大きい。
たしかに日本でも2010年代半ばごろから「潤」の前兆のような動きが少しずつ出てきていたことがわかるという。
潤日は新華僑とどう違うのか
多くの「潤日」は、私たちがイメージする在日中国人、すなわち1980年代の改革開放以降に日本へ渡ってきた新華僑とは多くの点で性質が異なるようだ。
従来の新華僑の視野は日中両国間に限られがちで、日本語を習得し、必死に日本社会に溶け込もうとした。
多くは就学生だが、密航や出稼ぎで日本にたどり着いた人もいる。
多くの人は政治には無関心、もしくは中国政府と近い立場にある傾向が強かった。
では、「潤日」はどうか?
端的にいえば、「潤日」は比較検討をした結果として日本に来ているということになる。
そのため、この先もずっと日本に居続けるとはいえず、中国国内で状況が好転したり、他国がより魅力的になれば日本を離れる可能性もあるだろう。
ただ、現時点において日本が“適切な場所”であることは間違いないようだ。
ちなみに新華僑と「潤日」を比較した場合、居住地域にも明確な違いが見られるという。
新華僑のコミュニティとしては池袋がとくに有名で、かの地を選んだ人々は歳月を経て家族を形成すると、西川口のような郊外のマンションへと移っていったという。
では、「潤日」は?
「日本のマンションは安い」といわれはじめたのは2000年ごろのこと。
中国人は持ち家志向が強いため、豊かになればさらに高級なマンションを選ぶことになるだろうとの意見もある。
引退企業家安住の地
また、引退後の安住の地として日本を選ぶ人もいるようだ。
たとえば、若くして「財務自由、提早退休」(FIRE)を実現したというエンジニアの郭宇(グオユー)氏は、2021年から2022年にかけ、中流階級にとっても超富裕層にとっても、日本が移住先として「選択肢のひとつ」に入ってきたと分析している。
そのため、超富裕層は、さまざまな手段を使って、人民元の資産を徐々に海外に移しはじめています。
その根拠として郭氏が「なぜなら、日本の経済は徐々に回復しているからです」と発言しているのは、なんとも興味深いところである。