台湾有事・着々と整備進む中国軍の着上陸侵攻能力!!
揚陸艦艇230隻で戦闘車両1530両輸送可との推計も…米海軍ピリピリ

中国人民解放軍がいくら精強な着上陸部隊を整備しても、上陸地点まで輸送する手段がなければ意味がない。
中国海軍の近代化の過程で、揚陸艦は最優先の整備対象ではなく、輸送能力は現在のところ台湾本土への侵攻には不十分とされる。
だが、2000年以降の近代化の結果、防御側の態勢次第ではあるものの、日本の離島や南シナ海の島嶼(とうしょ)に侵攻するのに十分な能力を備えているようだ。
輸送力は1個師団以上
1990年代から急速に進んだ中国海軍の近代化の過程で、揚陸艦の増強は主要な目標ではなかった。
ただ、大型化と近代化は徐々にではあるが、確実に進んでいる。台湾海軍の学術論文によると、中国海軍は2000年代初頭から揚陸艦の大型化を進めてきた。
13年2月の論文は、近海以遠への兵力投射が可能となる大型・中型の揚陸艦の総数を88隻以上とし、1個歩兵師団(約1万2000人)が輸送可能としている。
台湾の国防部(国防省に相当)は11年の国防報告書で、中国には台湾の離島を奪取する能力があると分析。
中国大陸に近い台湾の離島の場合、小型の揚陸艦艇も使用できるため一概には言えないが、分析の背景にはこうした見積もりがあるとみられる。
前回紹介した海軍陸戦隊2個旅団全ての人員と装備が一度に輸送するのに十分な能力だ。
だが、推計では小型の玉北級(074A型)揚陸艇(LCU、800~1000トン)が150隻を占める。
同級は05年までに10隻の建造が確認されているものの、論文は、その後年5隻のペースで増産していると仮定している。
ただ、中国海軍はかつて、玉北級よりも旧式の玉林級(079型、約800トン)を南シナ海の島嶼への補給用に使用しており、気象条件が良ければ玉北級も南シナ海や周辺国向けに使用されるとみられる。
将来は遠征軍化か
米海軍情報局(ONI)が今年4月に6年ぶりに公表した中国海軍に関する報告書は、「水陸両用艦(Amphibious Ships)」の配備数を北海艦隊11隻、東海艦隊20隻、南海艦隊25隻の計56隻としている。
内訳は不明だが、小型の揚陸艇は「水陸両用作戦」の概念に含まれていない可能性がある。
また、2000年代初等の近代化計画の後、中国の両用戦艦隊の規模は「安定している」としている。
文中では、「少数の」玉亭2級戦車揚陸艦(LST、満載排水量約5000トン)が、耐用年数を過ぎた玉康級(同約4200トン)を代替する目的で建造中としているほか、大型の玉昭級(071型)揚陸艦(LPD)4隻が建造済みと明記。
近い将来、玉昭級が追加建造されるのに加え、より大型でヘリ用の全通甲板を備えた強襲揚陸艦(LHA)が建造されるとの見通しも示している。
排水量は1万7000~2万トンで、1隻で海軍陸戦隊1個大隊(兵員500~800人、水陸両用装甲戦闘車両15~20両と補給物資)が輸送できる。
また、大型のドック式格納庫に少なくとも4艘のエアクッション型揚陸艇(LCAC)が登載できるほか、後方の格納庫付きヘリ甲板から同時にヘリ2機(武装兵計30人が搭乗)の離発艦が可能で、ヘリの格納庫がなかった玉亭級と比べ、大幅に作戦能力が向上したとされる。
詳細な上陸手順
これらの上陸部隊は実際にはどのように作戦を行うのか。
台湾陸軍の14年10月の論文は、1個師団が上陸作戦を行う手順を、中国軍の教材などを元に分析している。
それによると、
・師団は隷下部隊を「突撃上陸群」(2個歩兵連隊と水陸両用戦車など)、
・「縦深攻撃群」(1個装甲連隊など)、
・「火力突撃群」(砲兵、対装甲部隊、攻撃ヘリ部隊)、
・「先遣部隊」、「空挺(くうてい)部隊」(1個歩兵大隊)、
・「合成予備群」(戦車、歩兵で1個大隊)などに分けて編成し、上陸準備を整える。
師団は、揚陸艦や輸送艦などで構成する輸送艦隊4~6個に分かれて乗船し、上陸地点に向かう。
上陸地点に近づくと、部隊は岸から40~60キロの地点で揚陸艦からLCACやヘリに搭乗。
さらに揚陸艇に乗り換えるのは岸から20~30キロで、水陸両用戦車・装甲車は4~8キロで水上に出る。その後、2~6キロの地点から一斉に突撃を開始。
12~25分で岸にたどり着くという。
上陸成功後は、6~8時間で長さ1000~1500メートルの簡易埠頭(ふとう)が設置され、後続の部隊や物資の陸揚げを行う。
空挺部隊も
これらの上陸部隊に加え、空挺部隊の存在もある。
国防部の10年4月の論文は、第15空軍(約3万人)が保有する輸送機を運8(空挺要員82人を輸送)30機、運7(同29人)30機、IL76(同125人)52機と推計。
基地から600カイリ(約1100キロ)の地点に計9830人が一度に降下できるとしている。沖縄県の宮古島から中国・上海までは約800キロ。
15空軍の拠点がある内陸部から直接向かうのは無理があるが、事前に進出しておけば不可能な距離ではない。