ルーツな日記

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フジロック予習:M.ウォード(その1)

2012-07-15 10:21:30 | フジロック
M. WARD / A WASTELAND COMPANION

フジロック予習企画第7弾、ポートランド及びロサンゼルスを拠点に活動する米個性派シンガー・ソング・ライター、M.ウォードです!!

ノラ・ジョーンズ、キャット・パワー、ベス・オートン、ジェニー・ルイス等の裏方仕事、そしてブライト・アイズ、ジム・ジェームス達と組んだモンスターズ・オブ・フォーク、さらには女優ズーイー・デシャネルとのシー&ヒムなど、感性豊かな仕事ぶりで知られるM.ウォードことマット・ウォード。ですが彼自身のソロ・ワークとなるとよりマニアックな印象があるかもしれませんね。陰影の深いフォーク/アメリカーナな音像を聴かせてくれながら、そのオルタナティヴなアプローチからか立ち位置的にはUSインディ系に寄っている。フジロックでもそれ故にレッド・マーキーに登場するのだと思いますが、個人的にはヘヴン周辺愛好家な方達にこそ聴いて欲しいM.ウォードさんなのであります。

99年に「DUET FOR GUITARS #2」でデビューして以来、既に7枚のアルバムをリリースしているM.ウォード。後にノラ・ジョーンズからもリスペクトを送られる03年の「TRANSFIGURATION OF VINCENT」、05年には古き良きトランジスタ・ラジオにインスパイアされたその名も「TRANSISTOR RADIO」、ルシンダ・ウィリアムス、ズーイー・デシャネル、ジェイソン・ライトル(元グランダディ)をゲストに向かえた09年の前作「HOLD TIME」など。全ての作品が彼独特のノスタルジックなムードで貫かれているものの、どの作品をとってもその作品ならではの新鮮な輝きを感じさせてくれます。また作品を重ねる度にロック/ポップ感を微妙に増してきている印象もあったり。そして今年リリースされたばかりの最新作が「A WASTELAND COMPANION」(写真上)です。

プロデュースはM.ウォード自身。バックにはジャイアント・サンドのHowe Gelb(M.ウォードはハウ・ゲルブに見いだされ、彼が主宰するレーベル、オウ・オムからデビューしています)、ブライト・アイズのMike Mogis(M.ウォードと共にモンスターズ・オブ・フォークの一員)、シー&ヒムでの好サポートも印象的なマットの右腕的存在Mike coykendall、さらにはPJハーヴェイのバックで知られるJohn Parishや、ソニック・ユースのSteve Shelleyなど、M.ウォードらしいスパイスの効いた面子が集められています。数曲でペダル・スティールを弾いてるJohn Graboffはカーディナルズのジョン・グラボフか?

アコースティックギターの音色にふわりとした優し気な歌声が乗る1曲目「Clean Slate」からそこはもうM.ウォードの世界。トラディショナルな感性に柔らかいトリップ感が溶け込むよう。この曲には「(for Alex & El Goodo)」というビッグ・スターとそのヴォーカリストだった故アレックス・チルトンへ思いを馳せたようなサブタイトルが付いているのもポイント。そして鮮やかなフィンガー・ピッキングからざらついたガレージ臭を醸す展開が秀逸な3曲目「Me And My Shadow」。エグく歪んだギター・リフの疾走感にやられますが、どことなく荒涼とした雰囲気にはM.ウォード流のトラッド解釈が伺われるようで興味深いです。

ゲスト参加のズーイー・デシャネルによる小悪魔的な甘い歌声にやられるレトロ・ポップ「Sweetheart」。こちらは奇才ダニエル・ジョンストンのカヴァー。M.ウォードがダニエル・ジョンストンの曲を取り上げるのはこれが初めてではありませんが、魅惑的な出来映えも相まって、そのセンスはやはり一筋縄では行きません。続いてルイ・アームストロングで知られるスタンダード曲「I Get Ideas」をレトロな味わいのジャンプ・ナンバーに料理。シャッフルのリズムに乗って掻き鳴らすM.ウォードのエレキ・ギターが格好良い! もちろん彼の歌声も味わい深い。この辺りの明るい色彩は今作中でもかなり印象的。鍵盤がポップなエッセンスを散りばめる「Primitive Girl」もキャッチーな秀曲。

ブルージーなアコギの爪弾きからストリングス等が入り、不思議な風景が脳内を巡るようなタイトル・トラック「A Wasteland Companion」、どことなくハードボイルドな香り漂う「Watch The Show」、フォーキーな弦捌きに思わずうっとりとさせられるアコギ弾き語り曲「There's A Key」、素朴な美しさを持ったメロディーをピアノとフィドルが彩る「Crawl After You」(ちなみにピアノを弾いてるのもM.ウォード)など、うっすらとしたサイケデリアに包まれたその楽曲の数々は、どこか映像的でもあり、何かしらのストーリーを語りかけてくようでもあります。そして不思議な昂揚感を持った「Pure Joy」がラストを締める。聴き終わった後、また最初から聴きたくなるある種の陶酔感。

また、日本盤にはさらにボーナス・トラックが2曲収録されてまして、特に最後を飾る「Roll Over Beethoven」が凄い! 雷鳴の如く切り裂くイントロのギターからガンガンに飛ばしまくるロックン・ロール。まるでボーナス・トラックが全てをぶち壊すような展開はどうかと思いますが、個人的にはこういう破綻した終わり方、大好きです!

フジロックではどんなライヴを見せてくれるのでしょうか?やはりアコギ弾き語りでしょうか?もちろんそれも観たい!ですが出来ればバンド編成でロックなライヴも展開して欲しいものです。



M. WARD / TRANSFIGURATION OF VINCENT
M.ウォード、03年の3rdアルバム。ノラ・ジョーンズが英MOJO誌にてベストアルバムの一つにあげたという隠れ名盤。巧みな技で紡がれるギターが素晴らしいのはもちろん、独特の味わいを醸す歌声が妙に滲みます。またどこかやさぐれていながらロマンティックな響きを持った、作品としての異空間的な佇まいも秀逸。デヴィッド・ボウイ「Let's Dance」のカヴァーも特筆物。ちなみにラスト曲「Transfiguration #2」でベースを弾くのは今をときめくエスペランサ・スポルティング。2011年にグラミー賞『最優秀新人賞』を受賞した彼女を03年時に既に起用しているというMウォードの人脈もしくは審美眼に恐れ入ります。






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