ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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上原ひろみ@表参道ヒルズ

2009-09-11 18:21:51 | ジャズ
上原ひろみ / PLACE TO BE

9月8日、上原ひろみのスペシャル・ライブ・イベントを観に表参道ヒルズへ行ってまいりました。これは9月5日に発売されたばかりの彼女のニュー・アルバム「PLACE TO BE」の発売記念フリー・イベント。この「PLACE TO BE」は上原ひろみにとって6枚目にして初のピアノ・ソロ・アルバム。もちろんこの日のライヴもピアノ・ソロで、しかも表参道ヒルズという特異な雰囲気が否が応でも期待感を高めます。

表参道ヒルズは建物全体が吹き抜けになっていまして、さらに螺旋状のスローブがその吹き抜けをぐるぐると取り囲む構造になってるんです。この日はその吹き抜け中央にグランド・ピアノが鎮座し、スローブ数階に亘って観客がびっしりと取り囲む状況。まるで表参道ヒルズ全体がコンサート会場になったような雰囲気でした。

拍手に迎えられて上原ひろみが登場。新作のジャケ写通りの、おそらくピアノの鍵盤をモチーフにしたであろう白黒ストライプの可愛らしい衣装が良く似合っていました。本人のキュートさも含めて、まるでピアノの妖精か?って感じ。なんてったって靴まで鍵盤柄でしたから。

1曲目「BQE」からスタート。決して静かではない雑踏の中、一音目からグワッ!と自分の世界に入る上原ひろみ。この集中力が凄まじい! 広い吹き抜けに彼女の気が充満し、その中を躍動感溢れるピアノの音が駆け巡ります。彼女の弾く姿はまるでピアノと戯れるようでもあり、挑みかかるようでもある。時に低く唸るような声を漏らしたり、「あ!」とか「うん!」とか気合を入れるような声を発しながら。それでいて感情表現というか情景描写はいたって繊細。例えば2曲目に披露された「Place To Be」の美しさは感動的でした。このメロディってなんか日本人の郷愁を誘いますよね。彼女の暖かくエモーショナルな演奏がまたグッとくるんですよ!そして「Viva! Vegas」の組曲へと続きます。

今回のライヴで私にとっての白眉は左手のリズムでした。実は新作「PLACE TO BE」を聴いて、気づいたことがあるんです。何故私はこんなに上原ひろみが好きなのか?それは案外彼女のハネたリズム感と独特のタイム感にあるのではないか、と。それをはっきりと感じさせられたのは、残念ながらこの日のライヴでは演奏されなかった「Pachelbel's Canon」。この曲はピアノに何か細工をしているのか、チェンバロのような音で弾かれています。そして上原ひろみにしては音数がやたら少ないんです。前半こそバロック音楽のような雰囲気ですが、中盤からフリーキーな感じになっていきます。そして音数が少ない分、絶妙の間が生まれるんです。さらにその間を絶妙のタメで捌いていくそのタイム感がめちゃくちゃ心地良いのです。普段ならメロディやソロに耳が行ってしまうのですが、シンプルなプレイゆえに反ってリズムが体に染みるのです。この曲を聴いたとき、あ~、私は根本的に彼女のリズム感がすきなんだなと、悟ったという訳です。

ライヴで演った「Viva! Vegas: Show Cuty, Show Girl」でもそのリズム感は顕著。左手の刻む反復的なベーズラインのノリが最高でした。CDよりさらに勢いと跳ねを増したそのリズムのキレはまさにライヴならでは! さらに「Viva! Vegas: The Gambler」の左手は目の回るような早いフレーズながらワクワクするほどバウンシーにうねる! この上原ひろみ独特のハネたリズムに、彼女ならではの自由奔放かつエネルギッシュな感性が絡み付くことで、たった一人にしてあの圧倒的なスケール感を生み出すのことが出来るのでしょうね。もちろん私はソニックブルームも大好きです。でもバンド全体のノリとしては結構フュージョン的だったりするんですよね。そういう意味では、ピアノ・ソロだからこそ上原ひろみの体内に宿る躍動のリズムをストレートに体感できると言えるかもしれませんね。

さて、拍手喝さいで終わったライヴの後は楽しいトーク。ピアノを弾くときの緊張感が嘘のような“ほんわか”ムード。そこを司会者に突っ込まれると、本人曰くそれはピアノに全精力を傾けるためだとか。本当ですかね~。そして彼女は30歳になったばかりだそうですが、この新作について、自身の20代をちゃんとピアノと向き合って残しておきたかった、的なことも語っていました。しかもたった2日間で録音されたとか。彼女の集中力にも驚かされますが、このアルバムの生っぽい瑞々しさの秘密はその辺りにあるのかもしれません。

そして今後の目標は?という質問には「ピアノが上手くなりたい」と答えていました。この言葉、笑いを誘いましたが、案外深かったんです。彼女曰く、ピアノは完全な楽器で、自分は不完全な人間、だとか。この永遠に続く関係こそ、上原ひろみが常に挑戦し続ける所以であり、それこそが彼女の凄みなのです!

そんなトークの間、新作収録の「Choux A La Creme」という曲にちなんで、およそ千個のプチシューで作られた巨大なタルトが完成。これには流石の上原ひろみも驚いてましたね。近寄って触ってみたりなんていう可愛い一面も。さらに、せっかくだからということで、シュークリームを前に「Choux A La Creme」をまるまる演奏。これも素晴らしかった!彼女らしい軽やかなノリを存分に堪能。トークを挟んでもう演奏は終わりと思わせといてのサプライズ的な1曲。こういう演出は良いですね。なんか得した気分です。

それにしても上原ひろみは幸せそうにピアノを弾きます。そして真剣な中にも遊び心がある。天真爛漫。例えば低音部の弦をいじってのベース・ソロ的なプレイとか、「Viva! Vegas: Show Cuty, Show Girl」での「Smoke On The Water」のフレーズも楽しそうに弾いてました。彼女のピアノの躍動感と表情豊かな音色、そして全身全霊を込めて幸せそうに弾く姿には、観ているこちらも幸せな気分になります。11月からは日本でソロ・ツアーが始まるそうです。上原ひろみのピアノ・ソロ、見逃せません!!

さて、最後にお楽しみのサイン会。事前応募の抽選でしたが、くじ運にめっぽう弱い私が何故か当たっていたので、しっかり頂いてきました(写真)。目の前で書いてもらえるのではなく事前に書かれたものを渡されるだけでしたが、言葉を交わせるということでかなり緊張しました。結局「ライヴ最高でした。ツアー楽しみにしています。」しか言えませんでしたけど、上原さんは満面の笑みで「ありがとう」、そして握手してもらいました。



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