息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

芙蓉千里

2012-11-11 10:20:45 | 著者名 さ行
須賀しのぶ 著

明治の終わり、活気あふれるハルビンを舞台に、遊郭で働く少女の運命を描く。
といってもラノベっぽい軽やかな文章に苦海の悲哀はあまりない。
ガールズ大河小説とはよくいったものだ。
ただあまりにも現代的な会話文と行動にちょっと乗れない部分があるのは仕方ない。

芸人の子として放浪の後、自らを人買いに売り込んで遊郭へ来たフミ。
彼女は素晴らしい才能に恵まれており、自ら望んだ遊女にはならず、
芸事を極めることとなる。

親に売られたタエは、美声を生かしたいという望みがかなわず、
遊女を嫌い抜きながらも筆頭のお職となる。

同じ時期に遊郭に入った二人はともに助け合いながら生き抜いていく。

宮尾登美子の作品など読んでいるとかなり違和感がある。
じっとりとした絶望感などはあまり語られない。
彼女たちの苦しみはむしろ心まで束縛や恋心の切なさ、そしてかなわぬ夢だ。

それでも日本とは違うおおらかな土地柄、様々な国籍の人が行き交い、
怪しげな男たちが闊歩する異国情緒は、よく表現されていると思う。
それを背景にしているからこそ大陸浪人・山村の魅力が引き立つ。

物語の終わりで世情から遊郭酔芙蓉は廃業が決まっている。
フミとタエはそれぞれのかたちで成功を手にし、未来にはかすかに陽が射している。
まだはたちそこそこで、人生の裏まで見尽くしてしまった少女たちが
これからどう生き抜いていくのか、激動の時代を前にしているだけに
気になる終わり方である。
続編もあるらしいが、読んでみようかなあ。

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