息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

ユリゴコロ

2014-02-14 10:06:47 | 著者名 な行
沼田まほかる 著

「ユリゴコロ」と題された一冊のノート。
その古ぼけたページには、恐ろしい殺人とそこに至る心理が書かれていた。

実家の父の部屋でそのノートを見つけた亮介は動揺する。
そして幼い頃の思い出がよみがえるとともに違和感が募っていく。

そのノートはまったく共感できない内容だ。
そして、それに振り回される家族たちの行動にも理解できない部分が多い。
それなのに、なぜかトンデモ感がない。
心の揺れや波がうまく表現されているからだろうか。
お互いを想いあっているということが根っこにあるからだろうか。

父は余命いくばくもない。
母といわれた人はもういない。
妻にしたいと願った人は行方が知れない。
亮介は自分の営む店だけしか居場所がない。

考えなくてはいけないことも、やらなくてはいけないことも
亮介を取り囲んでいる。
それなのに「ユリゴコロ」は亮介をとらえて離さない。

今まで読んだどんなものとも違う印象が残った。
結末も予想と全く違っていた。
殺人もあったし陰謀もあった。
それなのに残るのは切なさと悲しみとそしておだやかな日々。
静かな音楽のような、水彩画のような読後感だった。

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