息をするように本を読む

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波瀾のプリンセス 秩父宮勢津子妃の昭和史

2013-04-23 10:27:18 | 著者名 わ行
渡辺みどり 著

プリンセスものが好き、というよりは、
変動する時代を俯瞰するのに、選ばれし立場の方たちの目が
最もわかりやすいからだ。
だからあまりにももちあげるばかりの文章では物足りないし、
かと言って頭から批判的なものも読みづらい。
なかなか難しい。

勢津子妃は松平家出身。父は外務官僚だったことから出生地は
イギリスである。
英語、フランス語に堪能で、ジョージ六世の戴冠式をはじめ、
外交での華やかな場面が印象深い。

一方でアメリカから帰国直後の結婚は、古いしきたりに縛られた世界に
馴染むため大変な努力をされているし、筆頭宮妃として何かと先頭に立つ
場面はご苦労の連続だったと想像できる。
その上、秩父宮の長い闘病と敗戦前後の窮乏生活。
義妹にあたる松平豊子の『春は昔──徳川宗家に生まれて』の中で、
よく東京からの土産物を渡したり、実家との連絡をとりもったりという
場面が出てくるが、それも病床の夫の代理をつとめるためだったのだ。

2・26事件における立場の難しさ、名前があるゆえに利用されてしまう危険、
戦争への関わりと時代の流れ。
一般の民衆と違い、知っていたからこその苦しみもあったのだろう。

つくづく思うのだが、陸軍大学など学問として戦争を研究するところは
あったのに、最終的に精神論になだれ込むのはどうしてなのか。
結局戦争とは行き着くところが愚かだからどうでもいいのか。
よくわからない。

結論からいって、本書はやや美化に走りすぎだった。
そこはちょっと残念。

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