息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

アミダサマ

2011-12-18 10:28:19 | 著者名 な行
沼田まほかる 著

ホラーサスペンスであるが、下地にある仏の教えと考え方が実に深い。
主人公の一人、僧の浄鑑が誦経する場面は、その極楽の描写が目に浮かび、
こんなにも美しいものだったのかとしみじみさせられる。

「アミダサマ」とは何か、という問いに「ない」と答えるのも分かる。
人が人として考えたり、作り出したりするものには限界があるのだ。
どんなに素晴らしい宗教美術も、真実にたどり着くことはできない。
その一方でたどり着こうとする一途な想いが芸術を支えてきた。

そんな仏を守りつつ暮らしていた親子のもとに現れたミハル。
廃車置き場に捨てられた冷蔵庫の中に閉じ込められ、息も絶え絶えの姿で
浄鑑と、ミハルの“コエ”に導かれてきた悠人によって発見された。

悠介がミハルとかかわる危険を感じ、遠くへ養子へ出したと嘘をつき、
母とともに手もとで育て始めた浄鑑。
わが子以上にミハルをいつくしむ母と浄鑑との3人暮らしは平和に続くかと
思えたが、異変が始まる。

猫が死に、村の様子が少しずつ変化する。そのじわじわと迫りくる怖さに
ゴサインタン―神の座』を連想した。

ミハルと引き離された悠人のやりきれない暮らしぶりや、祖父とのかかわり、
そしてキーパーソンとなる律子の愚鈍なようでいて真実をみる力。

結局ミハルとはなんだったのか、悠人はミハルの兄だったのか、その力とは。
何もかもはっきりとはせず終わってしまうのだが、大きな願いが成就したような、
不思議な満足感が残った。

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