哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

聖愚者

2012-08-29 01:56:32 | 時事
文藝春秋誌に掲載された芥川賞受賞作品「冥土めぐり」を読んだ。この小説は聖愚者をテーマにしているという。身分不相応なセレブ生活もどきにより借金を積み重ねる実家の家族に対し、働くことさえ出来なくなった知能の低い夫が、むしろ主人公の精神的な救いになるというストーリーだ。そもそもフィクションはあまり好んでは読まない方だし、文体もあまり好きではないが、意外に読みやすいスタイルなのか、スルスルと読み終えた。


知能の低い愚者とされる人が、むしろその正直さと真面目さゆえに成功する物語は、意外と世界に多いのかもしれない。映画ですぐに思い出すのが、「フォレスト・ガンプ」だ。愚者である方がむしろ成功するというのは、学歴が高く計算高くて狡猾なビジネスマンが成功するというような世間の常識の対するアンチテーゼなのだろうか。あるいは、何も考えない方が成功すると思う方が、現実の悩み事に翻弄される現代人の癒しになるのだろうか。


確かに現実に悩んでばかりであるならば、ノホホンと何も考えずに生きている方が幸せしれない。あるいは、池田晶子さんの言うとおり、悩むな、考えよ、というところだろう。