哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

サン=テグジュペリ『人間の土地』(新潮文庫)

2006-08-21 02:51:50 | 
 以前に新聞社の企画で池田さんが学校で教えるというものがありました。教えた内容は別として、紙面で池田さんが推薦していた本が表題の本でしたので読んでみました。

 堀口大學さんという詩人の方の訳で昭和30年に出版されたものですが、詩的なせいか、もとの文章のせいか、やや文章の流れに唐突感が多く有りますので、あまり読みやすくありませんでした。

 中盤での砂漠での放浪の部分の文章が長いのですが、作者の言いたいことは最後の「人間」の章に集約されているように思います。



「戦争を拒まない一人に、戦争の災害を思い知らせたかったら、彼を野蛮人扱いしてはいけない。彼を批判するに先立って、まず彼を理解しようと試みるべきだ。」

「なぜ憎みあうのか? ぼくらは同じ地球によって運ばれる連帯責任者だ、同じ船の乗組員だ。新しい総合を生み出すために、各種の文化が対立するのはいいことかもしれないが、これがおたがいに憎みあうにいたっては言語道断だ。」


 当時の飛行機乗りは、今で言う宇宙飛行士のような、高次の視点を持てたのかも知れません。
 そしてもっとも最後に、集約された一文が置かれています。


「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる。」


 これは、旧約聖書の創世記における人間の創造をもじったものなのでしょう。人間における精神性の強調は、池田さんの言い方に同じです。