晩ごはんのあと、テレビを見て、寛いでいた。
孫娘の風友(ふゆ)が玄関からあらわれた。
赤銅色に日に焼けて、カタ太り、いかにも健やか。
仏頂面をしてるのかな?
ソファのうしろにまわって、テレビを見ながら、うつろな眼差し。
「どうしたんだい?」
ちょっと、表情が崩れそうになったけど、返事なし。
よく見るとランドセルなど、明日の学校の用意がしてある。
「きょう、ここに泊まる」
「いいよ」とぼく。
そのうち、なんとはなしにぼくが坐っているソファーに寝転んで
頭を腿に乗せてきて、テレビを見ているふり。
おばあさん小浪が、台所の片付けを終えて、やってきた。
「どうしたの?」と聞く。
こんどは、涙が目に滲んできて、「晴空(はるく)が・・・」と
弟の振る舞いがいかにいか酷いか、話しはじめた。
ママから「どっちも、いい加減にしなさい!」と叱られたらしい。
「だって、ママなんか、私の気持ち、聞いてくれない」と・・・
ははーん、そこかあ。
「きょうは、ここに泊っても、明日はママに風友の気持ち、
聞いてもらうの、できたらいいね」
風友は黙っていた。
「目覚まし4時にかけて」と風友。
「宿題するの?」と小浪。
いかにも、早すぎる。「5時にしとくね」
狭い6畳に川の字で眠る。
5時過ぎても、風友は起きない。
目は覚めている。
川の字が、ふとんのなかでおしゃべり。
「聞いて聞いてママ。見て見てママ。ママ、大好き」とぼく、歌う。
「音痴!」とばばと風友。
「じゃあ、もう一度」
他愛のない起き抜けのふとんのなかののどかなひととき。
7時半前、学校へ行く時間。
「ちょっと、桃子のところに行ってくる」と小浪。
風友、ランドセルしょって、ママの顔みて、学校へ・・・
娘一家と我が家は目と鼻の先。わるくはない。