めっきり涼しくなった。
お風呂も沸かすことが多くなってきた。
どうせ沸かすんだったら、近くに暮らす娘一家もいっしょに入ろう。
この間は、娘と小1の晴空(はるく)が夜やってきた。
晴空は、食卓の上のクッキーを見つけて、「これ、食べてもいいか」と
食べ始めた。
「おじいちゃんにも、ちょっと、おくれ。味みたいから」と言ったが、
「いや!」と返事。
家のなかでは、好きなことを言って、好きなことしている。
娘としばしおしゃべり。
今朝、集団登校で集まっている子どものなかに、晴空がいた。
なにか、家のなかでワガモノ顔で振る舞っている孫とは違う。
「やけに、おとなしいというか、おすまししてるというか」とぼく。
娘が衣更えの話をした。
「涼しくなったから、そういう服を用意したんだけど、ふつうは
その日の天気の加減でなにを着ていくかって、考えるじゃん。
晴空は違うんよ。他の子どもたちがどんな服を着ているかって、
そのほうが大きいのよ」
「へえーそうかあ」
じぶんの子どものころをおもいだす。そういう気持ちの持ち方が
まったくなかったわけでもないだろうが、あんまり記憶に出てこない。
中学生の男の子をもつお母さんから聞いたことがある。
「雨の日、しきりに友だちがどんな格好で学校へ行っているか、
そこんとこ、ずいぶん気にしてるのよ」
そんなこともないことなかったけど、切羽詰まったものはなかったかなあ。
周りのことを気にすることに、小学校の1年ぐらいから、切羽詰まった
感じ、健気にまわりに合わせていこうという気持ちの持ち方。
本人は、日常のあたりまえのこととしてやっていて、そんなに苦痛でも
ないときが多いのかもしれないが、そういうことは、その子のなかで
どうなっていくのかなあ。
昔から、”内弁慶”ということが言われている。
あんまり、気にすることもないのか。
毎日の積み重ねがどんな人間になっていくのか、無理な
緊張で暮らしていくのは、なにか人の本来性をゆがめていくように
かんじるのだけど。
その夜、「クッキーをもっと食べてもいいか」とばあさんに言いながら、
晴空はそのうちの一つをぼくにくれた。
そのあと、やっとお風呂に入りに行った。