大谷翔平選手がMLBオールスター戦に史上初めて投打「二刀流」で出場した。先発登板は日本人選手として野茂英雄以来26年振りであり、勝利投手は2019年のヤンキースの田中将大以来二大会連続で日本人が獲得することになった。
ア・リーグの指揮官を務めるケビン・キャッシュ監督は、「ルール上、大谷には、2人の選手として出てもらう」と語った。本来、大谷が投手として打席に入る場合、DHを解除しなければならないが、そうなると、「投手が打席に入るたびに代打を出したり、ダブルスイッチ(投手交代時に野手も同時に交代させ、投手の打順を入れ替える策)を頻繁にしたりしなければならない」 「自分が混乱しそうなので、リーグにルール変更をお願いした」ということだ(日経新聞・丹羽政善氏コラムより)。
それにしても、「二刀流」大谷を見せるためにあっさりルールを変えさせるほどの大谷フィーバーは、私たち日本人の想像を軽く超えている。
野球ジャーナリストのBob Nightengale氏は、USA TODAYに寄せたコラム: 'Simply thankful' Shohei Ohtani calls MLB All-Star Game the most memorable experience of his careerで、大谷はMVPに推されなかったし、打者としてヒットを打たなかったし、投手として三振を取れなかったが、そんなことはどうでもよい、今宵は大谷のものだった、と書いた(He wasn’t voted the MVP, that honor went to Vladimir Guerrero Jr. He didn’t produce a hit, or even get the ball out of the infield in two plate appearances. He pitched a 1-2-3 inning, but didn’t strike anyone out. It made no difference. The night, with the American League winning the All-Star Game, 5-2, for the eighth consecutive year Tuesday night at Coors Field, still belonged to Shohei Ohtani of the Los Angeles Angels.) 日本人として誇らしいのを通り越して、訝しいほどの異常事態である(笑)。
実際、前日のホームランダービーでは一回戦で二度の延長の末に惜敗したものの、500フィート(152メートル)以上の本塁打を参加8選手中で最多の6本も放ち、オールスター戦では全19投手の中で最速の100.2マイル(161キロ)をマークするなど、その実力の片鱗を見せつけている。先頭打者として、初回の1打席目は二ゴロに終わったが、初球から(本塁打を)狙って行ったようだし、投手として、全部(三振を)取りにいくつもりで行ったようで、その躍動は眩しいばかりだ。
Wall Street Journal紙は、「マウンドではノーラン・ライアンの速球、打席ではケン・グリフィー・ジュニアのパワーを兼ね備えた投打の『二刀流』で旋風を巻き起こす大谷」と書き(因みにスポーツ・イラストレイティッド誌は「ウィリー・メイズのように打ち、ロジャー・クレメンスのように投げている」と書いた)、「100マイルの速球と本塁打の組み合わせは前代未聞」であって、「DH制によって、投手として登板しない日に野手として出場せずに打席に立てること」は過去の選手(とりわけベーブ・ルースの時代)にはない利点としながら、「これまでの常識では、5日に1度のペースで登板し、その間に打席に立つということは、心身への負担が大きすぎてうまくいかないとされてきた」 「仮にルースが二刀流で活躍できるほどの投手だったとしても、肉体的にそれが可能だったのか」と問いかけ、「大谷は日本のベーブ・ルースではない。最初の『ショウヘイ・オオタニ』であり、唯一無二の存在だ」と絶賛した。
日本でも「エースで4番~」などと歌われるが、昨季のナ・リーグMVPを獲得したフレディ・フリーマン氏は、「米国にももちろん、高校、大学までなら、二刀流選手はいる。ここにいるオールスターの連中なら、みんなそうだったんじゃないかな。俺だってそうだった。でも、いろんな理由でそれをあきらめる。俺はケガをしたけれど、先が見えない、ということが一番大きい。でもこうやって、大谷がその先にゴールがあることを示してくれた。これで将来、才能のある若い選手が、どっちかに絞らなければいけないと、自分で限界を決めなくてもすむんじゃないだろうか。もう、どちらかに――という考えは、時代遅れかもしれない」と語った(日経新聞・丹羽政善氏コラムより)。丹羽氏は、かつてイチローがデビューし、活躍を始めると、体が小さくても大リーグで活躍できる――そんな希望を抱かせたことを彷彿とさせる、と書いた。
実力だけではなく、球場でさりげなくゴミを拾うとか、折れたバットを拾って審判に手渡すとか、このオールスター戦でも、三人目のバッターで、昨年まで地元ロッキーズで活躍したノーラン・アレナド選手(現=カージナルス)を打席に迎えた時、スタンドのファンから大声援とスタンディングオベーションが巻き起こると、大谷はマウンドを外してファンの拍手が終わるまで見守るなど、その振舞いまでもが高く評価される。日本人で活躍したメジャーリーガーの野茂やイチローと言えば修行僧のようなポーカーフェイスが特徴的だったが、大谷は感情表現が豊かで、老若男女のファンから愛されるキャラは、今や一種のアイドルのようだ。
大谷がオールスター戦で使用したスパイク、アームガード、レッグガードの3点セットは、早速、米野球殿堂博物館に寄贈された。これからも寄贈されるものが続出することだろう。ただでさえ苛酷な「二刀流」で、愛すべき野球小僧のように投げて打って走ることを楽しみながら躍動する彼を、これからもはらはらしながら見守ることだろう。くれぐれもケガにだけは留意して欲しいものだ。
なお、上に添付した写真は、26年前に野茂が先発した1995年のオールスター戦記念Tシャツ。その1年前にボストンに赴任し、近所のショッピング・モールで購入したもので、一度も袖を通さないまま、タンスの奥にしまってあったのを久しぶりに引っ張り出してみた。似顔絵の中で、一番奥の右から三番目に、名前のリストでは右側(ナショナル・リーグ)の下から4番目に、野茂がいる。それ以外にも懐かしい名プレイヤーが目白押しである。(右上から)ドジャースで野茂の女房役だったマイク・ピアッツァ、遊撃手として13年連続ゴールドグラブ賞に輝くオジー・スミス、通算最多762本塁打のバリー・ボンズ、2年目から引退する迄の19年間、打率3割を切ったことがなかったトニー・グウィン(滞米中に買ったグローブには彼の名前が刻まれていた)、アメリカ外出身選手として2番目に多い609本の本塁打記録を持つサミー・ソーサ、史上最多18回のゴールドグラブ賞に輝く通算355勝のグレッグ・マダックス、(左上から)ホワイト・ソックスの永久欠番(35)のフランク・トーマス、歴代最多の2632試合連続出場のカル・リプケンJr、イチロー憧れのケン・グリフィーJr、ドーピング疑惑のHR打者マーク・マグワイア、私が駐在した地元ボストン・レッドソックスの大砲モ・ボーン、2m8cmの長身で歴代2位の通算4875奪三振を記録したランディー・ジョンソン・・・等々、なんと豪華な顔ぶれだろう。まさに一夜の夢の球宴である。日本でも二戦ではなく一戦に集中すればもっと有難がられるだろうに・・・
ア・リーグの指揮官を務めるケビン・キャッシュ監督は、「ルール上、大谷には、2人の選手として出てもらう」と語った。本来、大谷が投手として打席に入る場合、DHを解除しなければならないが、そうなると、「投手が打席に入るたびに代打を出したり、ダブルスイッチ(投手交代時に野手も同時に交代させ、投手の打順を入れ替える策)を頻繁にしたりしなければならない」 「自分が混乱しそうなので、リーグにルール変更をお願いした」ということだ(日経新聞・丹羽政善氏コラムより)。
それにしても、「二刀流」大谷を見せるためにあっさりルールを変えさせるほどの大谷フィーバーは、私たち日本人の想像を軽く超えている。
野球ジャーナリストのBob Nightengale氏は、USA TODAYに寄せたコラム: 'Simply thankful' Shohei Ohtani calls MLB All-Star Game the most memorable experience of his careerで、大谷はMVPに推されなかったし、打者としてヒットを打たなかったし、投手として三振を取れなかったが、そんなことはどうでもよい、今宵は大谷のものだった、と書いた(He wasn’t voted the MVP, that honor went to Vladimir Guerrero Jr. He didn’t produce a hit, or even get the ball out of the infield in two plate appearances. He pitched a 1-2-3 inning, but didn’t strike anyone out. It made no difference. The night, with the American League winning the All-Star Game, 5-2, for the eighth consecutive year Tuesday night at Coors Field, still belonged to Shohei Ohtani of the Los Angeles Angels.) 日本人として誇らしいのを通り越して、訝しいほどの異常事態である(笑)。
実際、前日のホームランダービーでは一回戦で二度の延長の末に惜敗したものの、500フィート(152メートル)以上の本塁打を参加8選手中で最多の6本も放ち、オールスター戦では全19投手の中で最速の100.2マイル(161キロ)をマークするなど、その実力の片鱗を見せつけている。先頭打者として、初回の1打席目は二ゴロに終わったが、初球から(本塁打を)狙って行ったようだし、投手として、全部(三振を)取りにいくつもりで行ったようで、その躍動は眩しいばかりだ。
Wall Street Journal紙は、「マウンドではノーラン・ライアンの速球、打席ではケン・グリフィー・ジュニアのパワーを兼ね備えた投打の『二刀流』で旋風を巻き起こす大谷」と書き(因みにスポーツ・イラストレイティッド誌は「ウィリー・メイズのように打ち、ロジャー・クレメンスのように投げている」と書いた)、「100マイルの速球と本塁打の組み合わせは前代未聞」であって、「DH制によって、投手として登板しない日に野手として出場せずに打席に立てること」は過去の選手(とりわけベーブ・ルースの時代)にはない利点としながら、「これまでの常識では、5日に1度のペースで登板し、その間に打席に立つということは、心身への負担が大きすぎてうまくいかないとされてきた」 「仮にルースが二刀流で活躍できるほどの投手だったとしても、肉体的にそれが可能だったのか」と問いかけ、「大谷は日本のベーブ・ルースではない。最初の『ショウヘイ・オオタニ』であり、唯一無二の存在だ」と絶賛した。
日本でも「エースで4番~」などと歌われるが、昨季のナ・リーグMVPを獲得したフレディ・フリーマン氏は、「米国にももちろん、高校、大学までなら、二刀流選手はいる。ここにいるオールスターの連中なら、みんなそうだったんじゃないかな。俺だってそうだった。でも、いろんな理由でそれをあきらめる。俺はケガをしたけれど、先が見えない、ということが一番大きい。でもこうやって、大谷がその先にゴールがあることを示してくれた。これで将来、才能のある若い選手が、どっちかに絞らなければいけないと、自分で限界を決めなくてもすむんじゃないだろうか。もう、どちらかに――という考えは、時代遅れかもしれない」と語った(日経新聞・丹羽政善氏コラムより)。丹羽氏は、かつてイチローがデビューし、活躍を始めると、体が小さくても大リーグで活躍できる――そんな希望を抱かせたことを彷彿とさせる、と書いた。
実力だけではなく、球場でさりげなくゴミを拾うとか、折れたバットを拾って審判に手渡すとか、このオールスター戦でも、三人目のバッターで、昨年まで地元ロッキーズで活躍したノーラン・アレナド選手(現=カージナルス)を打席に迎えた時、スタンドのファンから大声援とスタンディングオベーションが巻き起こると、大谷はマウンドを外してファンの拍手が終わるまで見守るなど、その振舞いまでもが高く評価される。日本人で活躍したメジャーリーガーの野茂やイチローと言えば修行僧のようなポーカーフェイスが特徴的だったが、大谷は感情表現が豊かで、老若男女のファンから愛されるキャラは、今や一種のアイドルのようだ。
大谷がオールスター戦で使用したスパイク、アームガード、レッグガードの3点セットは、早速、米野球殿堂博物館に寄贈された。これからも寄贈されるものが続出することだろう。ただでさえ苛酷な「二刀流」で、愛すべき野球小僧のように投げて打って走ることを楽しみながら躍動する彼を、これからもはらはらしながら見守ることだろう。くれぐれもケガにだけは留意して欲しいものだ。
なお、上に添付した写真は、26年前に野茂が先発した1995年のオールスター戦記念Tシャツ。その1年前にボストンに赴任し、近所のショッピング・モールで購入したもので、一度も袖を通さないまま、タンスの奥にしまってあったのを久しぶりに引っ張り出してみた。似顔絵の中で、一番奥の右から三番目に、名前のリストでは右側(ナショナル・リーグ)の下から4番目に、野茂がいる。それ以外にも懐かしい名プレイヤーが目白押しである。(右上から)ドジャースで野茂の女房役だったマイク・ピアッツァ、遊撃手として13年連続ゴールドグラブ賞に輝くオジー・スミス、通算最多762本塁打のバリー・ボンズ、2年目から引退する迄の19年間、打率3割を切ったことがなかったトニー・グウィン(滞米中に買ったグローブには彼の名前が刻まれていた)、アメリカ外出身選手として2番目に多い609本の本塁打記録を持つサミー・ソーサ、史上最多18回のゴールドグラブ賞に輝く通算355勝のグレッグ・マダックス、(左上から)ホワイト・ソックスの永久欠番(35)のフランク・トーマス、歴代最多の2632試合連続出場のカル・リプケンJr、イチロー憧れのケン・グリフィーJr、ドーピング疑惑のHR打者マーク・マグワイア、私が駐在した地元ボストン・レッドソックスの大砲モ・ボーン、2m8cmの長身で歴代2位の通算4875奪三振を記録したランディー・ジョンソン・・・等々、なんと豪華な顔ぶれだろう。まさに一夜の夢の球宴である。日本でも二戦ではなく一戦に集中すればもっと有難がられるだろうに・・・
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