鳩山さんらしさが表れたエピソードがまた聞こえて来ました。5月15日に沖縄再訪の日程を組もうとして、沖縄県民から猛反発を食らったそうです。私ですらも、歴史的事実として記録されたと言うよりも経験として記憶しているこの日を、よりによって選んだ感性の低さ、あるいは異次元的なありようは、もはや天晴れと言うしかありませんね。肉離れでなかなか外出できない憂さ晴らしに、飛び込んできた鳩山さんの沖縄訪問のニュースをきっかけに、日頃の不満をつい累々と屍を積み重ねるように述べて来ましたが、5月末に設定されてかまびすしい政治の季節より一足先に、時事問題にこだわり続けた私の独り言は終わりにしたいと思います。
最後に、今日の読売新聞に掲載された記事をもとに、普天間基地移設問題を考えてみたいと思います。その記事とは、「1969年に米軍偵察機「EC121」が日本海で北朝鮮の戦闘機に撃墜された事件の後、ニクソン米政権が朝鮮半島有事に幅広く対応するための対処方針を策定するとともに、撃墜事件への報復措置として北朝鮮の発電所や軍用空港を空爆する計画をまとめていたことが明らかになった」というものです。米国務省が4日に公表した69~72年の米韓外交に関する機密文書に関連文書が含まれていたもので、折りしも、韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没が北朝鮮海軍の魚雷攻撃によるものではないかという疑惑で朝鮮半島に緊張が高まっている時期であり、タイミングが良過ぎますが、ただの偶然でしょう。それにしても時代が違うとは言え、当時の国際政治の緊張感が伝わって来ますし、今、明らかにされた事実とは言え、こうした対処能力こそが抑止力の基礎になるものだと、そして日本にはとても出来ない芸当だと、感心したのでした。
その記事によると、当時のニクソン大統領は、二つのグループに対処方針を検討させています。一つは、キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官が議長を務めるワシントン特別行動グループ内の朝鮮作業部会で、想定される緊急事態を(1)米国に対する北朝鮮の深刻な敵対行為(2)同小規模な敵対行為(3)韓国に対する北朝鮮の深刻な敵対行為など、6通りに分類し、それぞれに対して、米政府が取るべき対応として、「上陸急襲の実行」「選択的な空爆」「海上封鎖」を検討したものです。もう一つは、国家安全保障会議(NSC)などに撃墜への報復措置を議論させたもので、(1)「空軍施設への空爆」(2)軍用空港や発電所一ヶ所への「限定的な空爆」の二つのシナリオを集中的に検討し、米中央情報局(CIA)が5発電所を爆撃対象として特定したと言います。空爆では空母のほか、グアムと日本へ返還する前の沖縄の戦闘機が参加するとされました。別の文書によると、国防長官が「東南アジアから兵、弾薬、装備を回さなければならない」と、ベトナム戦争への影響を心配する書簡をニクソン大統領に送付したことも明らかになり、また、NSCの議論で、大統領が「もしソ連が援助したら、別の種類の戦争になる」と慎重意見を述べていたことも明らかになったということでした。
アメリカによる重要な意思決定、とりわけ軍事行動を含む意思決定が、どういった関係者を巻き込んでどういったプロセスを経るのか、原文の資料を読んでみたくなるような、興味深い記事でした。今の日本が同じような境遇に置かれても、そもそも軍事行動は検討オプションに成り得ないのですが、検討すらも出来ないようでは、国家としてどこか欠陥があるとしか思えません。そもそも北朝鮮のどこに軍用空港や発電所があるのか等の情報の集積も行われていないのではないかと疑問です(もちろん情報はあると思いたいですが)。
こうして見ると、在日米軍基地はアメリカの国益に資するだけではないかという批判もあり得ます。
かつてアメリカは、アジアにおける対ソ封じ込め戦略の一環として、当時の国務長官により所謂アチソン声明を出しました。1950年のことです。アジアにおけるアメリカの防衛ラインを、アリューシャン列島、日本列島、琉球、フィリピンを結ぶ線に設定するというもので、これによりアメリカは朝鮮半島を防衛ラインから外したと勘違いした金日成(当時首相)が朝鮮戦争を引き起こしたことでも悪評高い声明です。広大な太平洋を挟んでアジアにコミットするアメリカにとって、対ソだろうが対中だろうが、あるいはアフガニスタンのテロ対策だろうが、アチソン声明で謳われている防衛ラインは、現代においてもそれほど意義を失っているとは思えません。沖縄の地政学的な重要性はこうした文脈で理解されるべきでしょう。一方、東南アジア諸国の中に、とりわけ中国の拡張主義に対する米軍の存在意義を認める根強い意見があることから分かる通り、アジア太平洋地域において、アメリカの存在がバランス・オブ・パワーのバランサーになってることは否定しようのない事実です。江戸時代の鎖国政策に戻って内需振興だけでやって行くと言うなら別ですが、少なくともこれまで貿易立国として関係諸国、とりわけ中東産油国やアジア諸国の政治的安定を前提に経済的活路を求めて来た日本にとって、米軍の存在は重要だったと言うほかありません。
勿論、現状を固定的に捉えるべきではなく、冷戦終結からテロとの戦いへ、またグローバリゼーション進展の中で国家間の経済的な結びつきが強まるといった、外部環境が変化していることへの対応はまだこれからで、現代はまさに過渡期にあります。日本の安全保障や国際平和協力はどうあるべきか、その時の自衛隊や日米安保はどうあるべきか、その大前提として日本の国益とは何かという議論を先ずは尽くすことだろうと思います。それ抜きに、県外や国外と言ったところで空しいだけです。
その時に重要なことは、何を現状認識として出発点とするかということです。嘘か真か俄かに分かりませんが、ゆめゆめ「抑止力」に気が付かなかったなどと、一国の総理大臣が白状しては行けません。そして戦略の難しさは、戦略論の教科書でもお馴染み、ゼロから策定するのではなく、今ある戦略を転換する時の難しさにあります。民主党政権の危うさは、現状を正しく認識していないように見えるところと、戦略転換に配慮が見られないところから生じています。闇雲に自民党の政策と違うことを目指すのではなく、しっかり現状を踏まえた上で、一気に変えるのではなく、徐々に転換していくマイルストンを明示して欲しいと思います。
最後に、今日の読売新聞に掲載された記事をもとに、普天間基地移設問題を考えてみたいと思います。その記事とは、「1969年に米軍偵察機「EC121」が日本海で北朝鮮の戦闘機に撃墜された事件の後、ニクソン米政権が朝鮮半島有事に幅広く対応するための対処方針を策定するとともに、撃墜事件への報復措置として北朝鮮の発電所や軍用空港を空爆する計画をまとめていたことが明らかになった」というものです。米国務省が4日に公表した69~72年の米韓外交に関する機密文書に関連文書が含まれていたもので、折りしも、韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没が北朝鮮海軍の魚雷攻撃によるものではないかという疑惑で朝鮮半島に緊張が高まっている時期であり、タイミングが良過ぎますが、ただの偶然でしょう。それにしても時代が違うとは言え、当時の国際政治の緊張感が伝わって来ますし、今、明らかにされた事実とは言え、こうした対処能力こそが抑止力の基礎になるものだと、そして日本にはとても出来ない芸当だと、感心したのでした。
その記事によると、当時のニクソン大統領は、二つのグループに対処方針を検討させています。一つは、キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官が議長を務めるワシントン特別行動グループ内の朝鮮作業部会で、想定される緊急事態を(1)米国に対する北朝鮮の深刻な敵対行為(2)同小規模な敵対行為(3)韓国に対する北朝鮮の深刻な敵対行為など、6通りに分類し、それぞれに対して、米政府が取るべき対応として、「上陸急襲の実行」「選択的な空爆」「海上封鎖」を検討したものです。もう一つは、国家安全保障会議(NSC)などに撃墜への報復措置を議論させたもので、(1)「空軍施設への空爆」(2)軍用空港や発電所一ヶ所への「限定的な空爆」の二つのシナリオを集中的に検討し、米中央情報局(CIA)が5発電所を爆撃対象として特定したと言います。空爆では空母のほか、グアムと日本へ返還する前の沖縄の戦闘機が参加するとされました。別の文書によると、国防長官が「東南アジアから兵、弾薬、装備を回さなければならない」と、ベトナム戦争への影響を心配する書簡をニクソン大統領に送付したことも明らかになり、また、NSCの議論で、大統領が「もしソ連が援助したら、別の種類の戦争になる」と慎重意見を述べていたことも明らかになったということでした。
アメリカによる重要な意思決定、とりわけ軍事行動を含む意思決定が、どういった関係者を巻き込んでどういったプロセスを経るのか、原文の資料を読んでみたくなるような、興味深い記事でした。今の日本が同じような境遇に置かれても、そもそも軍事行動は検討オプションに成り得ないのですが、検討すらも出来ないようでは、国家としてどこか欠陥があるとしか思えません。そもそも北朝鮮のどこに軍用空港や発電所があるのか等の情報の集積も行われていないのではないかと疑問です(もちろん情報はあると思いたいですが)。
こうして見ると、在日米軍基地はアメリカの国益に資するだけではないかという批判もあり得ます。
かつてアメリカは、アジアにおける対ソ封じ込め戦略の一環として、当時の国務長官により所謂アチソン声明を出しました。1950年のことです。アジアにおけるアメリカの防衛ラインを、アリューシャン列島、日本列島、琉球、フィリピンを結ぶ線に設定するというもので、これによりアメリカは朝鮮半島を防衛ラインから外したと勘違いした金日成(当時首相)が朝鮮戦争を引き起こしたことでも悪評高い声明です。広大な太平洋を挟んでアジアにコミットするアメリカにとって、対ソだろうが対中だろうが、あるいはアフガニスタンのテロ対策だろうが、アチソン声明で謳われている防衛ラインは、現代においてもそれほど意義を失っているとは思えません。沖縄の地政学的な重要性はこうした文脈で理解されるべきでしょう。一方、東南アジア諸国の中に、とりわけ中国の拡張主義に対する米軍の存在意義を認める根強い意見があることから分かる通り、アジア太平洋地域において、アメリカの存在がバランス・オブ・パワーのバランサーになってることは否定しようのない事実です。江戸時代の鎖国政策に戻って内需振興だけでやって行くと言うなら別ですが、少なくともこれまで貿易立国として関係諸国、とりわけ中東産油国やアジア諸国の政治的安定を前提に経済的活路を求めて来た日本にとって、米軍の存在は重要だったと言うほかありません。
勿論、現状を固定的に捉えるべきではなく、冷戦終結からテロとの戦いへ、またグローバリゼーション進展の中で国家間の経済的な結びつきが強まるといった、外部環境が変化していることへの対応はまだこれからで、現代はまさに過渡期にあります。日本の安全保障や国際平和協力はどうあるべきか、その時の自衛隊や日米安保はどうあるべきか、その大前提として日本の国益とは何かという議論を先ずは尽くすことだろうと思います。それ抜きに、県外や国外と言ったところで空しいだけです。
その時に重要なことは、何を現状認識として出発点とするかということです。嘘か真か俄かに分かりませんが、ゆめゆめ「抑止力」に気が付かなかったなどと、一国の総理大臣が白状しては行けません。そして戦略の難しさは、戦略論の教科書でもお馴染み、ゼロから策定するのではなく、今ある戦略を転換する時の難しさにあります。民主党政権の危うさは、現状を正しく認識していないように見えるところと、戦略転換に配慮が見られないところから生じています。闇雲に自民党の政策と違うことを目指すのではなく、しっかり現状を踏まえた上で、一気に変えるのではなく、徐々に転換していくマイルストンを明示して欲しいと思います。
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