風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北朝鮮の経済事情

2017-11-26 22:19:11 | 時事放談
 中国税関総署の統計によると、10月の北朝鮮との貿易総額は前年同月比36%減ったようだ。国連安保理が採択した北朝鮮の石炭や繊維製品などを全面禁輸対象とする制裁決議が影響したとされるが、裏でロシアとの貿易は増えているかも知れない。平壌のガソリン価格が上昇しているとの報道もあり、備蓄に走っているとの観測もあったが、それもどうか分からない。この二ヶ月ほど、北朝鮮の挑発が行われていないのは、いずれにしても乏しい国家予算の中で、実験を行う次のステージに至っていないために控えているだけかも知れない。
 謎のベールに包まれたままの北朝鮮の経済については、かつて1990年代に干ばつで苦しんだようなことはもはやなく、完全な社会主義から部分的な改革開放に舵を切って(例えば闇市を許容するなど)、順調に経済成長が進んでいると解説する専門家がいた。しかし、どうもそれは眉唾のようだ。
 南北軍事境界線がある板門店で、北の兵士が越境しようとして銃撃を受け重症を負った際の生々しい映像が公開された。追跡した兵士がこのエリアで自動小銃を使ったこと、銃弾が韓国側に入っていたこと、兵士自身が軍事境界線を越境したこと等、休戦協定違反があったようだが、それは措いておく。亡命した兵士は一命をとりとめ回復に向かっているらしいが、検査の結果、小腸が160センチほどで韓国人のそれよりも2割ほど短く、食べ物が異なり内臓の発育状態が良くないとされるほか、初日に目にした寄生虫だけでも50匹、小腸の中に数千、数万匹いるかもしれないといい、北朝鮮では野菜などの肥料として人糞を用いるためとされているが、なかなか驚かされる。
 もっとも日本でも、私が子供の頃はギョウチュウ検査なるものがあり、「衛生環境の改善に伴い、九州の一部地域を除いて、2015年度限りで廃止」(Wikipedia)されたということは、つい最近まであったことになる。ただし「文部科学省によると、小学生の寄生虫卵保有は、祖父母世代(1958年度)が29.2%、父母世代(1983年度)が3.2%、子世代(2013年度)は0.2%」だそうである。
 もっと驚くべきは、兵士の腸内に少量のトウモロコシの粒しかなかったということだ。北朝鮮では一般市民より兵士に多くの食料が配給され、さらに従来、この南北軍事境界線エリアに配置される兵士はエリート層で、一般の兵士よりも栄養状態はいいとされていた。衛生状態が悪いことは想像のうちだが、最も恵まれているはずの兵士ですらこの有り様だということは、これまで流布された経済情報は宣伝の要素が強いようだ。
 兵士が回復すれば、国境付近の警備の杜撰さも明らかになるかも知れない。

 追記。本稿は北朝鮮を軽く見るのが趣旨ではない。核保有は五大国(米・英・仏・露・中)が条約上も正当化され(しばしば不公平と批判されるが現状凍結という現実解として認めざるを得ない)、それ以外にインド、パキスタン、北朝鮮は正当化されないながらも保有を宣言し、イスラエルに至っては宣言すらしないが事実上の保有国と見做されている。北朝鮮が核をもつこと(小型弾頭化すること)は脅威である上、北朝鮮の窮状が極まれば、更に拡散する懸念がある。北朝鮮のように信用に足りない国には(ではインド、パキスタン、イスラエルが信用できるかというと、まあ、少なくとも大っぴらに核を以て他国を脅すことはないとは言える)、何が何でも核を持たせてはならないと思う。
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