風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

原辰徳監督の勇退

2023-10-08 15:58:58 | スポーツ・芸能好き

 読売巨人軍・原監督が退任された。今季は3年契約の2年目で、最終年を待たずに身を引くことになった。

 振り返れば、私が東京ドームに最後に足を運んだのは2001年9月30日(横浜戦)のことで、その二日前の電撃発表の結果、期せずして長嶋監督(当時)の引退セレモニーが行われたのだった。一つの時代の終わりを画する出来事だったと言ってもよい。その翌年から、既定路線ではあったが、原さんが監督として指揮を執られた。

 私が子供の頃、大阪に住んでいながら巨人ファンになったのは、テレビ中継で巨人戦を見慣れていたからであり(阪神戦はサンテレビで映りが悪かった)、スーパースターのONがいたからでもあった。その一角の王さんが引退された翌年に原さんが鳴り物入りで巨人に入団し、当初、二塁を守っていたが、三塁の中畑清さんが故障して、かつて長嶋さんが守るホット・コーナーと言われた三塁が原さんの定位置になった。当時はまだ「球界の盟主」「常勝・巨人」と言われ(今は見る影もなく、あるとすれば埃にまみれたプライドだけだが 苦笑)、その中で、長嶋さんが語ったように、「スターというのはみんなの期待に応える存在。だが、スーパースターはその期待を超える働きをしなければならない」という宿命を背負ってのスタートだった。確かに、一人の選手としてはまずまずの成績を残したが、スーパーと呼ぶには物足りなかった。そして監督としても長嶋さんの後を継ぎ、長嶋さんの通算15年(1982試合、1034勝、リーグ優勝5回、日本一2回)を超える、通算17年(2407試合、1291勝、リーグ優勝9回、日本一3回)の戦績を残し、長嶋さんと同じ65歳での勇退となった。背番号83は、原さん自身の現役時代の8と長嶋さんの3を掛け合わせたものだと言われるが、選手としても、監督としても、常に大先輩であるONの影を引き摺りながらの野球人生だったように思う。巨人ファンとして、心からその労をねぎらいたい。

 実際にインタビューで、長嶋さんのように、何を言っているのかよく分からないところもあったし(笑)、高校、大学、そしてプロ入り後もスター街道を歩んできたのに、心に秘めたガッツと温かさがあった。次のエピソードは原さんらしさを示す好例であろう(10月4日付 東スポWEB)。

(引用はじめ)

 大学4年のときだった。東海大グラウンドに東大を招き練習試合を行った。ダブルヘッダーの1試合目の1軍戦で大差で圧勝した。2試合目との間に構内の大広間で昼食をとる東大ナインにあいさつにいくと、参考書を手に昼食をとっていた。「こんなときまで勉強するのかと。すごいなと。同じ学生としてこの光景を見てこてんぱんにやられた気持ちだった。自分が恥ずかしくなった」と当初2軍選手が出場する予定だった2試合目も志願して出場した。

(引用はじめ)

 監督としての実力には毀誉褒貶、相半ばする。一期目の一年目は松井秀喜、高橋由伸、阿部慎之助、上原浩治、桑田真澄、工藤公康など錚々たるメンバーが揃い、長嶋さんの遺産のお陰だと言われた。二期目はリーグ三連覇を二度達成したが、小笠原道大、谷佳知、アレックス・ラミレス、セス・グライシンガー、ディッキー・ゴンザレス、村田修一、杉内俊哉、大竹寛・・・など各球団の大物をFAで次々に獲得する大型補強のお陰でもあった(もっとも、それを使いこなしてこその勝利ではあったが)。2019年からの三期目の監督就任にあたっては、山口オーナーに「好きにやらせてほしい」と条件を付け、事実上、編成面も掌握する“全権監督”となった。ところが蓋を開けたら、復帰1~2年目にリーグ連覇を果たしたものの、日本シリーズでソフトバンクに2年連続で4連敗を喫する屈辱を味わうことになった。人気のセ、実力のパと言われて久しいが、想像以上にセ・パの実力差が開いていることを痛感させられたものだ。選手の育成面で明らかに見劣りしていることが影響したのだろうか、21年以降は補強を抑えた我慢の采配が続く。21-22年には連続負け越し、22-23年は同一監督のもとで連続Bクラスとなる、巨人史上初めての屈辱である。投打ともにポジションが固定せず、継投ミスも多く、我慢が足りないとも批判された。

 今年最後の三試合は三連勝で締めて、3年連続でシーズン負け越しとなるのを阻止したが、18年ぶりに優勝した首位・阪神には6勝18敗1分、2位・広島には8勝17敗と、圧倒的な力の差を見せつけられた。チーム打率と本塁打数こそリーグトップだったが、4年連続して3割打者が不在で、本塁打を畳み掛けて勝利をもぎ取ることはあっても、安定した勝利の方程式は見出し辛かった。それでも、今季最終戦では、山崎伊が9回を僅か2安打に抑え、プロ初完封、自身初の2桁勝利となる今季10勝目(5敗)を挙げた。我慢したような、しなかったようなここ数年で、若い芽が芽吹きつつある。

 世代交代は世の流れである。既定路線でバトンを引き継ぐ阿部慎之助は、就任時に次のように語った。

「ジャイアンツは強くなければならない。優勝を自分でも意識して口にしていきたい。そして若手に勝つ喜び、優勝する喜び…すべてを感じてほしい」

「ファンの皆さまには残念な思いをもうさせない。巨人軍には最高のファンがついている。最高のファンの皆さんとともに、喜びを(現役時代の登場曲にかけて)セプテンバーに味わえればうれしい」

「今年は“アレ”で盛り上がったが、来季は“アレ”ではなく“アベで!”いきたいと思います」

 なんとなく昭和の系譜を引きつつも、捕手目線で投手力を建て直し、新たな時代を築いて欲しい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする