新年早々物騒なことに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「新年の辞」で「自分の机には常に核兵器発射のボタンがある」と言ってのけたのが話題になった。これを受けてトランプ大統領は期待通り(?)にツイッターに「自分の核兵器ボタンの方が遥かにでかくて強力だ。それにこいつはちゃんと作動する!(…I too have a Nuclear Button, but it is a much bigger & more powerful one than his, and my Button works!)」と書き込んだという。一体、何を自慢しているんだか・・・新年早々、笑ってしまったが、ガキの喧嘩のようなやりとりは今年も健在のようだ。一つ言えることは、ああ言えばこう言うはともかくとして、「自分の机には常に核兵器発射のボタンがある」と脅すような人物に核のボタンを渡すべきでは断じてない、ということだろう。
なお、このほか、金正恩委員長は、平昌五輪について「民族のありようを誇示するよい機会となるだろうし、われわれは、大会が成功裏に開催されることを心から望む」とし、「こうした見地から、われわれは、代表団の派遣を含めて必要な措置を取る用意があり、このために北南当局が緊急に会うこともできるだろう」とも述べて、文在寅韓国大統領を喜ばせた。そして実際に板門店の直通電話が2年振りに再開されたという。これまでの太陽政策はことごとく裏切られてきたので、簡単には喜べないはずだが、問題は、この歩み寄りは自信の表れなのか、国連安保理による度重なる経済制裁の効果が出て焦っているのか、そのいずれかというところだ。大陸間弾道弾の再突入技術はまだ確立されていないと見られているので、時間稼ぎに出たのかも知れない(すなわち制裁はそれなりに効いているのかも知れない)。
しかし・・・先月末、韓国を出港した香港船籍のタンカーが北朝鮮船籍のタンカーに石油精製品を公海上で引き渡していたことが発覚した。ロシアは過去数ヶ月の間に少なくとも三度、同様のことをやっていたという。国連安全保障理事会は9月、海上で北朝鮮の船に積み荷を移すことを禁止する制裁決議を採択していたが、堂々と違反がまかり通っていたわけだ。
この年末年始の休みに国連安保理・北朝鮮制裁委員会専門家パネルの元委員である古川勝久氏の「北朝鮮 核の資金源」(新潮社)を読んだ。450頁を超える大著だが、これでもかという制裁決議違反、言わばイタチゴッコで埋め尽くされている。北朝鮮制裁に、中国やロシアが公然と反対はしないものの非協力的なのは想像できるが、東南アジアや中東、アフリカには、制裁決議を知らない国や敢えて目をつぶる国が多いことには呆れてしまう。何より北朝鮮は国際的に孤立しているわけではなく(国交がない日本には想像し辛いことだが)、現に国連加盟国であって、普通に情報共有がなされ、欧州や中国、ロシアの大学や研究機関に北朝鮮国籍の学生や研究者が普通に所属して先端技術や科学を学んでいるのが実態のようなのである。最貧国らしく、かつてのソ連の旧式武器を後生大事にしているため保守・修理が出来るのは北朝鮮ぐらいであり、アフリカや中東にはそんな需要があるというのだから、驚くべき闇の世界だ。こうした貧しい国の軍隊や警察組織に訓練を施すといった需要もあるらしい。蛇の道は蛇・・・の世界だ。中国の後ろ盾に加え、こうしたニッチなマーケットで小銭を稼げば十分にやっていけるほど、北朝鮮経済は大きくないのだろう。そこが大国イランに対する経済制裁が効いたとされること(そして2年半前にイランとEU3+3との間でJCPOA:包括的共同作業計画の合意に至ったこと)との大きな違いではないだろうか。北朝鮮は、なかなかしぶとい。
新年早々、暗澹たる気持ちになるが、気を取り直して・・・核のボタンを巡るトランプ大統領のツイッターに関して、BBCニュース(英文)には様々な反応も取り上げられており、ほっこりする。その一つは、ボタンに向かう赤ん坊の手の写真とともに、「ボタンが大きく見えるとすればそれは比較の問題だ(The button probably just looks bigger by comparison.)」というもの。なるほど。もう一つ、「大統領の机にあるボタンについて我々が知っているのは、執事にダイエット・コークを注文するものであって、核ミサイルを発射するものではない(The button we know about on the President's Desk summons a valet with a Diet Coke, but doesn’t launch a nuclear misile.)」というもの。めでたし、めでたし。
私たちもしぶとく行きたいものである。
なお、このほか、金正恩委員長は、平昌五輪について「民族のありようを誇示するよい機会となるだろうし、われわれは、大会が成功裏に開催されることを心から望む」とし、「こうした見地から、われわれは、代表団の派遣を含めて必要な措置を取る用意があり、このために北南当局が緊急に会うこともできるだろう」とも述べて、文在寅韓国大統領を喜ばせた。そして実際に板門店の直通電話が2年振りに再開されたという。これまでの太陽政策はことごとく裏切られてきたので、簡単には喜べないはずだが、問題は、この歩み寄りは自信の表れなのか、国連安保理による度重なる経済制裁の効果が出て焦っているのか、そのいずれかというところだ。大陸間弾道弾の再突入技術はまだ確立されていないと見られているので、時間稼ぎに出たのかも知れない(すなわち制裁はそれなりに効いているのかも知れない)。
しかし・・・先月末、韓国を出港した香港船籍のタンカーが北朝鮮船籍のタンカーに石油精製品を公海上で引き渡していたことが発覚した。ロシアは過去数ヶ月の間に少なくとも三度、同様のことをやっていたという。国連安全保障理事会は9月、海上で北朝鮮の船に積み荷を移すことを禁止する制裁決議を採択していたが、堂々と違反がまかり通っていたわけだ。
この年末年始の休みに国連安保理・北朝鮮制裁委員会専門家パネルの元委員である古川勝久氏の「北朝鮮 核の資金源」(新潮社)を読んだ。450頁を超える大著だが、これでもかという制裁決議違反、言わばイタチゴッコで埋め尽くされている。北朝鮮制裁に、中国やロシアが公然と反対はしないものの非協力的なのは想像できるが、東南アジアや中東、アフリカには、制裁決議を知らない国や敢えて目をつぶる国が多いことには呆れてしまう。何より北朝鮮は国際的に孤立しているわけではなく(国交がない日本には想像し辛いことだが)、現に国連加盟国であって、普通に情報共有がなされ、欧州や中国、ロシアの大学や研究機関に北朝鮮国籍の学生や研究者が普通に所属して先端技術や科学を学んでいるのが実態のようなのである。最貧国らしく、かつてのソ連の旧式武器を後生大事にしているため保守・修理が出来るのは北朝鮮ぐらいであり、アフリカや中東にはそんな需要があるというのだから、驚くべき闇の世界だ。こうした貧しい国の軍隊や警察組織に訓練を施すといった需要もあるらしい。蛇の道は蛇・・・の世界だ。中国の後ろ盾に加え、こうしたニッチなマーケットで小銭を稼げば十分にやっていけるほど、北朝鮮経済は大きくないのだろう。そこが大国イランに対する経済制裁が効いたとされること(そして2年半前にイランとEU3+3との間でJCPOA:包括的共同作業計画の合意に至ったこと)との大きな違いではないだろうか。北朝鮮は、なかなかしぶとい。
新年早々、暗澹たる気持ちになるが、気を取り直して・・・核のボタンを巡るトランプ大統領のツイッターに関して、BBCニュース(英文)には様々な反応も取り上げられており、ほっこりする。その一つは、ボタンに向かう赤ん坊の手の写真とともに、「ボタンが大きく見えるとすればそれは比較の問題だ(The button probably just looks bigger by comparison.)」というもの。なるほど。もう一つ、「大統領の机にあるボタンについて我々が知っているのは、執事にダイエット・コークを注文するものであって、核ミサイルを発射するものではない(The button we know about on the President's Desk summons a valet with a Diet Coke, but doesn’t launch a nuclear misile.)」というもの。めでたし、めでたし。
私たちもしぶとく行きたいものである。