風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

帰国子女の悩み・2(続)

2010-02-16 00:20:12 | 日々の生活
 前回の続きで、帰国子女の悩みを総括しますと、一つは、海外の学校に馴染んでしまった子供を日本の学校に復帰させる時の難しさに由来します。日本の受験制度は、実にハードルが高い。国語が難しいのは仕方ないにしても、理科や社会は記憶することが多い上に、概念は英語で理解していても日本語の表現を知らないために覚え直すのが大変ですし、日本の社会にいれば自然に理解出来ることでも、海外にいたばかりに根本的に頓珍漢なことも少なくありません。場合によっては数学や英語ですらも、問題文の日本語を理解できないなんてこともあって、ずっこけさせられます。また、昔は珍しかった帰国子女も、最近は人数が増え、ただでさえ帰国子女間の競争が激しくなっている上、景気が悪い昨今はなおのこと帰国する企業派遣の家族が多く、競争は熾烈です。海外に滞在している間もさることながら、帰国してからも、しっかり対策の勉強をしなければ、希望する学校への合格は覚束ないように思います。それでも女の子の場合、そもそも帰国子女を受け入れる女子中学・高校が多い上に、海外の学校でもしっかり勉強して良い成績を修めていることが多いため、共学校での合格者の比率も7~8割と圧倒的に女の子が多いのに比べ、男の子の場合、女の子の場合と逆で分が悪い。帰国子女においても、女の子は「強い」のです。
 帰国子女の悩みの二つめは、海外で折角身につけた英語力を、帰国後も維持・向上させたいと思うのが人情ですが、日本に滞在する限りは難しいということです。私は、入社以来、海外事業に携わって来た仕事柄、周囲で多くの帰国子女を見て来ましたが、彼ら・彼女らの英語は、発音に関しては抜群に上手く、非の打ち所がありませんが、敢えて言うなら、どこか子供っぽい英語を話します。英文のビジネス文書を書かせてみるとテキメンで、表現がどこか幼い。恐らく、海外に滞在していた頃から、成長に合わせて自然に増えていくべき語彙や豊かになるべき表現力が、日本に滞在するばかりに大人にまで成長しないで止まってしまったのではないかと推察されます。そういう意味で、同時通訳のような仕事をするには、日本をベースにしていてはダメで、海外に長く滞在しながら、日本語も勉強したような人でないと務まらないのではないかと思います。それくらい、日本は英語を学ぶ環境ではありません。そのため、ネイティブの英語の先生が多かったり、英語については能力別クラス編成にしている学校の人気が高まるのは当然で、しかし金のかかる話でもあり、そうした充実した環境を整えられる学校はそうそう多くないため、そこをめぐる競争は必然的に熾烈になります。
 以上、見てきた通り、帰国子女は英語を身につける機会があって羨ましい反面、それを伸ばすには海外の学校に通い続けるという痛みを受け入れるか、はたまた日本人として最後は日本の大学を目指すために相当の努力を強いられるか、どちらにしても苦労が絶えないのが、日本の社会の実情ではないかと思います。外国人学生を受け入れるには、更に難度が高くなりますね。日本の社会の国際化は夢のまた夢というところでしょうか。
コメント
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