保健福祉の現場から

感じるままに

混合診療の全面解禁

2012年09月29日 | Weblog
全国保険医団体連合会から、「米韓FTA発効…韓国の医療はどうなる」(http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/120918kannkoku.html)に続き、「韓国の医療情勢とFTAの脅威」(http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/120925kankoku.html)が出ているので見ておきたい。これによると、「韓国では混合診療が一般的だ。全医療行為における公的医療保険のカバー率は約60%にとどまる。総医療費のうち、約40%が患者の自己負担で賄われている。そのため、多くの国民は複数の民間医療保険に併せて加入する。しかし、近年の貧困の深刻化によって、十分な医療を受けられない人、保険料を支払えない人が増えてきた。そのため、風邪などの軽い疾病なら受診できても、手術が必要な重い疾病の場合、高額な医療費負担のためにほとんど受診できない実態がある。」とされる。今年7月の日本再生戦略(http://www.npu.go.jp/saisei/index.html)の工程表(http://www.npu.go.jp/saisei/images/pdf/RightNaviKoutei.pdf)p99では、関税の削減・撤廃や投資規制(サービス分野等)の自由化・緩和は2012年度に実施とあり、すでにTPP参加は織り込み済みなのかもしれない。昨年10月に外務省が出した2011年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書;日本の貿易障壁言及部分(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp03_02.pdf)では、「厳格な規制によって,外国事業者を含む営利企業が包括的サービスを行う営利病院を提供する可能性等,医療サービス市場への外国アクセスが制限されている。」と明記されており、気になるところである。日本医師会から「医療政策会議報告書 医療を営利産業化していいのか」(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120208_1.pdf)、「社会保障制度改革推進法案等に対する日本医師会の見解」(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120627_1.pdf)が出ているので、みておきたい。日本医師会報告書(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120208_1.pdf)によると、TPPに関して、第1段階「日本の医療機器・医薬品価格規制の撤廃・緩和要求」、第2段階「医療特区(総合特区)での株式会社の病院経営の解禁と混合診療の原則解禁」、第3段階「全国レベルでの株式会社の病院経営解禁と混合診療の原則解禁」の3段階が予想されている。全国保険医団体連合会がパンフレット「TPPが医療を壊す」(http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/120713tpp.pdf)を出しているが、果たして、TPPと医療についてどれほど議論されてきたであろうか。TPP参加を柱の一つにする政党(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120831/stt12083123220017-n1.htm)もある中で、TPPのサービス分野への影響について、もっと国民的な議論が必要ではないかと感じる。日本医師会「患者窓口負担についてのアンケート調査」結果報告(http://www.med.or.jp/shirokuma/no1589.html)、「厚労省「社会保障に関する国民意識調査」の問題点」(http://www.med.or.jp/shirokuma/no1588.html)で、注目すべきは、「日医総研の「日本の医療に関する意識調査」によれば、「所得の高い低いによって、受けられる医療の中身(治療薬や治療法)が異なることはやむを得ない」という考え方に賛成の国民は1割強にとどまっており、増加傾向もみられない」点である。これは先般の政府「社会保障に関する国民意識調査」結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002i9cr.html)と正反対の結果である。「所得の高い低いによって、受けられる医療の中身(治療薬や治療法)が異なること」に代表されるのが混合診療の全面解禁である。混合診療については日本医師会資料(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110126_11.pdf)p10~13にわかりやすく解説されているのでみておきたい。混合診療の全面解禁」とは、どんな場合でも「保険診療の一部負担+保険外の全額自費」になることであるが、社会一般に理解されているようには感じない。2005年の郵政解散(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%B5%E6%94%BF%E8%A7%A3%E6%95%A3)の頃、保健福祉の現場では、同年10月からの食費・居住費の保険給付対象外への変更や障害者自立支援法(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E8%87%AA%E7%AB%8B%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%B3%95)が大きな話題になっていたが、ほとんどのマスコミが、首相と刺客を囃し立て、生活に密着した項目をスルーした。今回もそんなやり方がされるのであろうか。そういえば、昨年9月1日、世界的権威の医学誌Lancetが日本の保健医療に関する特集号を発行(http://www.thelancet.com/japan)し、「海外からは「日本が保険給付の公平性を保ちながら医療費を抑制していることは驚異的」とみられている」(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2011/015833.php)。
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