友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

キャッチボール

2012年02月13日 18時33分59秒 | Weblog

 愛西市の寺から、井戸水が出ないと連絡があって、出かけていった。手押しポンプの具合は悪くないが、ブォーブォーと音はするけれど水は出てこない。空気を吸い上げているのだ。手押しポンプをばらして調べてみても、つなぎ目から空気を吸い込んでいないかと点検してみても、そんな異状は見つからなかった。こういう時は不思議なもので、私はなんとなく水位が下がっているのではないか、そんなカンが働いた。しかし、直接工事をした先輩は、やはり自分の工事にどこか不具合があったのではと思うようで、つなぎの部分を切断してやり直そうと言われる。「分かりました」と言いながらも、「念のために、水位を調べてもいいですか」と私は先輩に聞いた。

 

 井戸に棒を入れて底に達するまで伸ばしてみる。引き上げて手押しポンプの吸水管と比べてみると、水位は吸水口ギリギリの辺りである。工事をしたのは昨年の6月で、田んぼに水が張られていた時期だった。私が井戸を覗いた記憶では、地上から2メートル半ほどのところに水面が見えた。ここは水の豊富なところだと思った。井戸は6メートルくらいの深さがあったけれど、水位が高かったので、4メートルくらいのところに吸水口を設けた。それが冬になって、特に今年は雨が少ないので、水位が下がってしまったのだ。吸水管をつないで吸水口を少し下げただけで、これまでどおり水を汲み上げることが出来た。

 

 「お前さんの言ったとおりだったな」と先輩が言ってくれたので、ホッとした。歳を取ると、相手の言うことを素直には受け入れなくなる。机の上のチラシ1枚でも無くなれば、「どこに仕舞った?」と言い、「私に黙って捨てたでしょう」ということになる。観たいテレビ番組が違えば、平気でチャンネルを変えてしまう。人が何を望んでいるのか、察する努力が疎かになるし、そのうちにそんなことも考えないようになってしまう。「こんなことも、豊かになったせいではないか」と先輩は言う。「日本の中堅企業が大学出の外国人を雇用すると新聞に出ていた。彼らの方が積極的に働くし、はっきりしているので、外国との営業には向いているそうだ」と先輩は言う。

 

 「日本人はどうも相手のことを思ってはっきり言わないから、相手は何を考えているのか分からない。言葉というより気持ちが伝えられない」。そんな話から、先輩はアメリカで11年暮らした経験談へと移っていった。アメリカは移民の国だから英語も発音やアクセントがまちまちである。地域によってもまた違いがある。上流階級は出来る限りきれいな英語を話そうとするけれど、ブルーカラーはそもそもその必要がないので、まともな英語が話せない連中はいっぱいいる。スパニッシュはスパニッシュ同士で、チャイナはチャイナ同士で、集まって暮らしていることが多いから、それですんでしまうのだと教えてくれた。

 

 「11年もアメリカに居たんだから、奥さんは結構話せるのでしょう」と聞くと、「女の方がダメだね。男は仕事で話さなくてならないが、女は日本人同士集まっているから、英語を使わなくてすんでしまう。人間は必要に迫られないとダメだ」。たまたま、昼食のために入ったラーメン店の壁に、伸びる企業の紹介記事が貼ってあった。その見出しは「意見を言う前にまず聞くこと」とあった。上手にキャッチボールをするためには、まずきちんと受け止めなくてはならならない。しかし、受け止めるだけで投げ返さないとキャッチボールにはならない。明日はバレンタインである。楽しみにしてもいいものかとちょっと不安である。

コメント
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