お盆の墓参りのころは、全国各地で花火大会が盛んだ。14日には、山形の花火大会が家にのベランダ越しに小さく見えた。大江の花火、そして16日は信州諏訪湖の花火大会。折からの台風7号の影響は、と思いつつテレビを見たら、7時からライブで中継していた。遠い混雑したところへ、見物に行ける身でもないので、テレビ中継はありがたい。臨場の迫力はないものの、一等席のいいアングルの中継で、次々と上がるスターマインの乱舞に見入ってしまった。夏、火の玉は、地獄の釜を出た死人の花火と語られてきた。
若い男たちが狩りに山へ入り、火の玉を見た話がある。松谷三代子『あの世からのことづて』の「天狗の花火」という掌編。その夜、山には多くの猟師が入っていた。百人ほど猟師が焚く火が、火の玉にくっついて、あっ
ちへ、こっちへと走る。
「上へいったら、ほーって星が出た。そいでざーっと降りてきてカヤにぶつかっついて、ちりちりと赤い火の粉がちゃんとみえたっちゅう。「おかしいぞ、いよいよ今夜化かされたか」ちゅうっていってたら、おーや、上げるともあげるとも、花火また上げた。
ちらちら、ちりちり上っていって、どーんと星が出る。こりゃ狐じゃねえ、お天狗さまだんべえ。ここらじゃ天狗が花火をあげるちゅうことよくいうもの。」
お墓参りという風習も少なくなっている。今年のお参りは炎天下であった。墓石も熱く焼けていた。埃をふき取り、冷たい水を柄杓で墓全体にかける。なかに先祖が暑い、暑いと言っているような気がする。日ごろは仏壇に線香を焚き、熱いお茶をあげる。この世に住んでいる者の数が減り、あの世のでは、その数を増やしている。花火をあげて、そこに居場所を予約するのが、生きる者の知恵か。