清々しい朝の光に、美しいリラの花。とある本のなかに、こんな言葉を見つけた。「老齢は山登りに似ている。登れば登るほど息切れするが、視野はますます広がる。」(イングマール・ベルイマン)言いえて妙だ。失われて行く体力を補って余りある、広い視野。若い日にには見えなかった、自然の美しさが、老いたるものも目に深く入り込んで来る。
だんだんと体力を失ってきた妻の喜びは、春の味覚を得て、近隣の人へのわずかなお裾分け。「幸福は分かちあうことでふくらんいく」(ラシーヌ)武者小路実篤にこんな詩がある。
生きよ、生きよ、何処までも生きよ。
死んでも生きよ。
永遠から永遠に向かって輝いてゐる一道の光の内に生きよ。
生命の流れのなかに生きぬけ
それを命じているのだ。
朝日のなかを歩きながら、こんな詩の言葉が静かに心を満たしていく。今朝も、十分な睡眠のおかげで、元気が増していく。